未来に続くエピローグE「破壊」
先に来ていたクルツ達から一足遅れて、宗介は戦場に着いた。
情報通りの山奥で、付近の住民を戦闘に巻き込む恐れはない。
宗介の乗るAS<アーバレスト>が上空から派手な音をたてて地上に降り立った頃、すでに戦闘は終わりを告げようとしていた。
もはや三機のASしか残っていなかったのだ。傷だらけのマオとクルツのM9、そして―――無傷の黒いAS。
「やっと来やがったか、馬鹿野郎」
「馬鹿に馬鹿と言われる筋合いはないな。マオ、戦況は?」
クルツの軽口に答えて、宗介はマオに状況の説明を促した。
「戦況?…見ての通りよ。彼女は完全に『あの力』を使いこなしているわ…」
マオは簡潔に返事をし、いきなりバンッ!と操縦席の壁を叩く。
「悔しい!最新鋭のM9の名が泣くわ!どんなに普通のASに幅を利かせてたって、『あの力』を使うASと戦うと何も出来やしない!!」
自分の無力さに腹を立てて、マオは唇を強く噛み締める。責任感の強いマオは、何も出来ない自分が悔しくて仕方がなかった。
「しょうがねえよ、姐さん。どっちにしろ今回は俺らの出番じゃねえし」
クルツはいつもの口調で言ってから、宗介の方を向いて、
「頼むぜ、ソウスケ。お前じゃねえと駄目なんだとよ。敵さんもそう言ってるしな」
意味ありげな事を言い、辺りに転がった味方ASの残骸を指差す。
「?」
宗介はクルツが指差す先を眺め、そして気付く。
どのASも手や足を破壊されているが、爆発までにはいたっていなかった。
「操縦者は全員無事。まあ、軽傷ぐらいはあるかもしれねえけど」
クルツの説明に宗介は安堵した。少なくともかなめは人を殺してはいないということに。
「だが…何故だ?」
「それは直接聞けよ」
宗介の呟きに答えて、クルツは後方に退いて行く。後は宗介に任せるということだろう。
宗介は黒いASの前に立ち、中の操縦者に話しかけた。
「千鳥…なのか?」
「そうよ…ソースケ。遅かったわね」
「何故?こんな事を…何がしたいんだ?」
「ふふっ、そうねえ。とりあえずはあんたを殺すわ。その後でテッサを殺して全てを壊す…そんなところかしら?順番を守るためにここに来た人達は生かしておいてあげたの。わかる?」
そう言うかなめの言葉にはいつもの暖かさはなく、冷たさのみを含んでいる。
「あたしはね、ソースケ…あんたにあたしだけを見てほしかったの。あたしだけに優しくしてほしかった。あたしだけに…あたしだけに…、なのにテッサの話なんか聞きたくなかった!あたしの知らないソースケをあの娘は知ってる!あんたをあたしだけのものにしたかった!!」
「千鳥…」
宗介の胸にかなめの言葉が突き刺さる。洗脳されているとはいえ、かなめの本心も含まれているのではないか?そう思えた。
「でも…ね」
不意にかなめの口調が変わった。激しさから一転し、静かに続ける。
「もう…いいの。だってあんたは、すぐに…いなくなるから」
かなめの告げた一言が、宗介の体中を駆け巡った。唇の端を吊り上げて歪んだ笑みを見せる…そんな彼女の顔が浮かんでくる。
(なんと…なんという事だ…)
宗介は愕然とした。悲しくて苦しくて、何もかも全てを投げ捨ててこの場から逃げ出してしまいたい…そんな気分になってしまうほど、いつもの明るい彼女は―――そこにはいなかった。
<続く>