未来に続くエピローグG「二人」
とっさにかなめをかばい、左腕を失った<アーバレスト>は慌てて後退した。
「マオ!クルツ!千鳥を頼むっ!!」
宗介はそう言って、かなめのASをマオ達に預けて自分は再び駆け出し、新たに現れた銀色のASと対峙した。
以前に見たことがあるASと酷似している。嫌な予感が宗介を襲う。
その銀色のASは、外部スピーカーを使い、からかうような口調で宗介に話しかけた。
「くはははっ!カシム、久しいなあ〜?どうだ、余興は楽しめたか?くくくっ」
「ガウルン、やはり貴様か!」
「そうだよ、俺だよ。もう少し楽しめるかなあ〜とも思ったんだけどよ?まあ、いいわな。役目は十分果たしてくれたし」
ガウルンの言う通り、<アーバレスト>は片腕を失い、その他の部位も損傷が激しい。
宗介自身もダメージが大きく、集中力に影響を及ぼしそうなほどになっていた。
「それはそうと、カシム。お前は何も出来なかったよなあ?結局、彼女一人で俺の仕掛けた洗脳を破りやがった!…カナメちゃんは強いよ、ホント。それに比べてお前はただ、いいようにやられてただけだもんなあ!?くははははっ!!」
「何をっ!」
ガウルンの嘲りを含んだ言葉は、宗介にとって図星だった。
焦りを全面に出し、ガウルンのASにムキになってかかっていく。
ガウルンは<アーバレスト>を軽くあしらいながら、なおも続ける。
「弱くなったよ、貴様は。以前の貴様なら今ごろ片腕を失っている事もなかったろうに…彼女をかばったりするからだぜえ〜。守るモンがあると強くなるとかよく言うがよ?弱くなるの間違いじゃねえのか、なあ!?」
ガウルンのASは、得意の単分子カッターを使って<アーバレスト>を追い詰めて行く。
「お前は一人じゃ何も出来ねえ、ただの小僧だ!死ねえい!」
防戦一方になりながら宗介は内心、動揺していた。
確かに前回もかなめに助けられてようやく勝てた相手なのだ。
(俺は…一人では何も…出来ない…。勝てないかもしれない…)
少しづつ宗介の心に不安が湧き上がる。恐怖をも感じるようになっていた。その時、
「何やってんのよっ、ソースケ!」
「千鳥?」
突然、回線を通してかなめの声が聞こえてきた。
どうやら彼女はすでにASから降りて、クルツに通信機を借りたようだ。
「ソースケ、いい?あたしの言うことをよく聞いて!……ソースケ?」
虚ろな瞳で宗介は呟く。戦士の、男のプライドが彼の中で渦巻く。
「千鳥…俺はまた、君に助けられるのか?俺は…一人では何も…何も出来ないのか?」
弱気な宗介の言葉に、かなめは怒りを込めて怒鳴る。
「バカあああぁっ!!」
「ち…千鳥?」
彼女は大声をあげ、早口で続ける。今まで言いたくてもなかなか言えなかったことを。
「あたしはあんたのそういうところが大嫌いなのよっ!どうして一人で全部背負うの?
あたしだって、あんたがいなかったら修学旅行の時に死んでたかもしれない!少しは手伝いぐらいさせてよっ、『一人』で出来ないなら『二人』でやればいいじゃない!あたしにも分けてよ、あんたは『一人』じゃないんだから!それに……」
かなめは言葉を詰まらせる。溢れる宗介への想いが、込み上げてくる感情が、涙に変わり彼女の頬を伝う。涙声になりながらかなめは続ける。
「それに、ソースケがいなくなったら…やだよ」
「千鳥…」
宗介は激しく自己嫌悪した。安っぽいプライドでまた彼女を傷つけている自分。かなめはいつもそばにいてくれていたのに…。
「千鳥…すまなかった。君を悲しませるつもりではなかったのだ、許してくれ。…俺は、どうすればいい?」
「ソースケ…」
かなめは涙を拭って笑顔を見せ、落着きをとりもどした普段通りの声で指示を出す。
「いい?やったあたしが言うのもなんだけど<アーバレスト>にはもうあまり戦う力は残ってないの。だから集中して、一撃にかけるしかないわ。ソースケは目をつぶって集中して。合図は、あたしが出すわ…あたしを信じてくれる?」
「愚問だな、俺は常に君を信用している。しかし…君は俺にとって勝利の女神だな、全く」
「ふふっ、それじゃいつだってあんたに微笑んであげるわよ!」
「よろしく頼む。…合図を!」
「オッケー、任せといて!」
かなめの力強い返事が、宗介に勇気を与えてくれる。
この緊迫した状況で、彼の心はむしろ晴れわたっていた。
もう負ける気は毛先もなかった。
自分は『一人』ではない。こんなに『二人』でいることを、身近に感じられるから……。