便利脳

 記憶は約10年遡り、僕が中学生の時の話です。
僕の友人に、辻君というヤツがいました。
彼もまたなかなか味のある人物なんですが、今回の主役は彼ではないです。
家が「レディース辻」という会社なので、「レディース」と呼ばれていたりとか、 遠足のときにヘビと格闘して病院送りにされたりとかありましたけど、この話には関係ないです。

 ある日、辻君を含めた友人数名と学校をうろついていると、 一つ上の岩崎先輩が後ろから近づいてきました。
この岩崎先輩たる人物はかなりBE-BOP入っていて、 いろんな意味でちょっとした有名人でした。僕らは面識なかったですけど。
 イヤ〜な雰囲気を全員が感じ取っていたそのとき突然、そんなBE-BOPな彼が吼えだしたのです。
「汁!!!」
 何事かと思いましたが、気にしない(したくない)で歩いていると、また吼えました。
「おい! しる! シル〜!!!」
その咆哮が僕等宛てだということを気付くのにしばらく時間がかかりましたよ。 気付いた瞬間死にたくなりましたけど。
 イヤそうに「なんでした?」と聞くと、岩崎先輩は辻君の着ていた体操服のゼッケンを指差し、こう言いました。
「おまえの名前、”汁”ちゃうんか?」
 そうです。どうやら彼は、”辻””汁”という字を同じだと思っていたようです。目がマジでした。

 ”十”しか合ってませんよ。恐ろしくファジーな脳ですね。うらやましいです。