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雨宮 美久 剣戟が響く。 闇の中、入り乱れる敵と味方。数秒の間に、そのうちの幾つかが赤い飛沫を上げ、倒れる。 その真紅の中にそれはいた。表情のない銀の仮面。その頬に描かれたひとしずくの涙は、彼に葬られるべき死者たちへのせめてもの手向けなのか。 戦慄が走る。恐怖に心臓を掴まれる感覚。一瞬で散っていく味方の命が、その手を一層凍らせる。 その時、 なにかが―――彼を、銀の仮面の騎士を襲った。 蒼い涙の雫から蒼の道化師と呼ばれ、戦場を凍りつかせたその男を。一撃が、彼の顔を弾く。 仮面が、落ちてゆく……。 いやにゆっくりと。まるで嘘のように。 ―――その下にあったのは、戦場の鬼神と呼ぶべき顔ではない。そこには、慣れ親しんだ顔があった。
そこにあったのは、実の兄の、哀しみに満ちた……顔。 |