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円形に集まった人影がかがり火の側に立つ2つの人影を囲むように立っていた。 「ついに、ついに夢がかなうんだ!!」 「これで砂の下での窮屈な生活ともおさらばだ!!」 「俺達の楽園を手に入れる時が来たぞ!!」 影たちは口々に歓声をあげ、中には感涙に咽ぶものもあった。その中でただ一つの家族だけは涙をためた瞳でその情景を眺めていた。華やかな民族衣装に身を包んだ少女の周りで、ただ、ただ涙を流していた。が、装束から唯一覗かせている少女の鳶色の瞳はどこか虚ろだった。 「リューネ、母さん達を許してね…。」 着飾った少女 ----リューネは母の言葉になにも言えないでいた。自分の運命はすでに終わりを迎えようとしている。少なくとも彼女はそう教えられて来た。(楽園を作るために、技師様に命を捧げられるんだから…。) 「あんたが生贄なんて…でも、あんたのおかげでみんなが幸せになるんだよ。」 母の言葉はなんとも滑稽だ。私は死んでしまった後のことなんてどうでもいいのに、どうして正当化する必要があろうか。だって私はそこにはいられないんでしょう? そう考えている自分も滑稽だった。これから死ぬというのに、なんと冷めているのだろう…と。これも先ほど飲まされた薬糖のせいだろうか。自分が現実離れした存在に思えてくる。 「いいのよ。母さん。みんなのためなんですもの。」 抑揚のない声でそう答えておいた。なんだか自分の声じゃないみたいだ。昨日までは本当にそう思っていた。でも、今ではどうでも良くなっていた。 だが、母はそれである程度落ちついたらしい。私の胸の中で何度も何度も「ごめんなさい…。」と繰り返していた。 少し心が痛んだ。 ぼんやりと辺りを見渡す。一つの人影のところで視線が止まる。 (あれが技師様…名前は…ゴードン様…だっけ。) 穏やかで上品な顔立ちをした男だ。しかし、無精髭を気にする様子もなく、油にまみれた装束に身を包んだ男を、リューネは皆が言うような聖者であるとは思えなかった。 自分にはもう、どうでもいい事なのだが…。 母の声はまだ続いていたが、もう気にならなくなっていた。 |