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数日後2人は砂漠の真っ只中で、グードと呼ばれる乗り物を駆っていた。 ここでグードについて触れておこう。グードとは砂漠を渡る小舟である。大きな細長い卵と、それより少し小さな卵を横に繋げた形をしている。そしてその両方の卵の中央には窪みが付いており、搭乗者はその窪みの中に乗りこむわけである。操縦席は大きな方の卵についており、操縦は座席前方についている穴の中に手を差し入れ、その内部での指の動きによって行われる。 ギルドと呼ばれる技師の町だけで作られている特殊な乗り物であり、砂の上を浮遊し、滑るように走るその姿はある意味美しささえ感じさせる。技師と呼ばれる者達の卓越した魔鉱秘儀の産物である。「体は大丈夫か?」 髭の男 ----ゴードンは傍らに座るリューネに声をかけた。十分な装備があるとはいえ、炎天下の中数時間移動しているのだ。なにも話さない少女が心配だった。少女はしばらく防砂帽と防砂套の間から虚ろな瞳を遥か砂漠の向こうに漂わせていたが、ついに口を開いた。 「何時…殺すの…。」 搾り出す様に放たれた言葉に、ゴードンはしばし沈黙したが、おどけた調子で言った。 「殺さないよ。」 隣でリューネが身じろぎするのが分かった。 「でも、死ぬよりも辛いかもしれない…。」 前を見るゴードンの瞳には哀れみの情が映っていた…。 変わらずに砂漠には風が吹きぬけていく…。 その時、リューネは風に混じってドーンという音を聞いたような気がしたが、あまり気にならなかった。 唐突に光りが裂けた。 一瞬の暗闇の後、ぎらつく太陽も砂混じりの風も姿を消した。唐突に現れた巨大な都市にリューネは圧倒された。 鳶色の目が見開かれる。 ほのかに光りを放つドーム状の巨大な壁のなかに都市がすっぽりと収まっていたのだ。整備され尽くした幅10メレル(20メートル)に及ぶ石畳の大通り。中央にそそり立つ巨大な搭。そしてなによりも所々にみうけられる植物の数々。どれを取ってもリューネにとってははじめての物ばかりであった。 「もう、防砂帽も防砂套も必要ない。脱いだほうがいい。」 グードを繰るゴードンは言うが早いか自分の防砂套と防砂帽を脱ぎ捨てた。 リューネも無言でそれにならう。豊かな金色の髪が風になびき、穏やかな光を反射する。生贄に選ばれるくらいだ。リューネの容姿は美形と言ってさし使えない。かるく朱がさした頬を、生まれてこのかた感じたこともないようなすがすがしい風がなでる。 「涼しいだろう?」 隣でゴードンがいたずらっぽく笑った。 「…。」 リューネは呆けた顔で頷いた。驚きのあまり声が出ない。 「ここが君の新しい家だ。」 二人を乗せたグードは美しい大通りを滑らかに滑って行った。 リューネはいつのまにかこのどこか影のあるおどけた同行者を少し信じてみる気になっていた。 |