『大好き番外篇』
(萱野様)
その日、是非にとせがまれて、聞仲は幼い黄飛虎を乗せて黒麒麟を朝歌の郊外へと走らせていた。
「こちらで良いのか?」
「うーんと、もうちょっと右かな?」
既にこの身を『聞仲』と呼びすてる少年は黒麒麟の上から身を乗り出して辺りを見渡していた。
請われて、武芸を時々みているが、その才は聞仲も目を見張るものがあり、健やかにまっすぐと伸びる資質はとても好ましいものだった。
この子は良い武将になるだろう。
ただ、もう少しおとなしくなってくれれば良いのだが・・・。
「あ、あそこだよ!」
指し示された方角へ聞仲は黒麒麟を駆った。
「これは見事だ・・・」
降り立ったその地は、丘一面に花々が咲き乱れまさに百花繚乱、その花々の上を薄靄がしっとりと包み隠している。
桃源郷もかくやと思わせる程の小蓬莱。
花霞にその身を委ねて、聞仲はしばらく時を忘れた。
「綺麗でしょ?」
自分が眼中に入っていないことに気付くと、黄飛虎は聞仲のマントの裾を引っ張り注意を引き付けようとした。
「ああ」
振り向いて聞仲は微笑んだ。
しかし。
「何時、このような場所を見付けたのだ?」
「えへへへ」
笑って言葉を濁す黄飛虎を見て、聞仲は軽く溜め息をついた。
おそらく、この子は一人、屋敷を抜け出し、朝歌を抜け出し、人里離れたこの地まで探検にでもやって来たのだろう。
この子は良家の子息という自分の身がまるでわかっておらぬ。
いくら、仙骨を持ち、更に並々ならぬ武芸の才を持っておるとは故、その身はまだわずか十にも満たぬ子供なのだ。
何が起こるかわからぬのに。
「飛虎・・・」
聞仲は片膝をついて小さな飛虎と目線を同じくした。
それは彼が子供の自分たちにお説教をするときの動作だということを飛虎は身に染みてよくわかっていた。
「おまえも元気なのは良いが、もう少し己の立場というものを考えねばならんな」
頭をうなだれておとなしく聞仲の小言を聞いていた飛虎だが、目線が脇に動いた。
「飛虎?聞いているのか?」
そのままとことこっと、走り出してしゃがみ込む。
「飛虎!」
自分の説教を無視して行動する飛虎に思わず聞仲の声が荒げる。
振り向いた飛虎の手に見事な大輪の純白の華があった。
「聞仲、きれいー!」
そう言いながら聞仲の白金の髪にその華をさす。
「俺、大きくなったら聞仲をお嫁さんにするんだー」
自分の言葉の意味をわかっているのかいないのか、小さな飛虎は悪怯れず、にかっと笑った。
まんざら悪い気がしないでもなかったが、飛虎の先行きを考えると少々不安がよぎる聞太師、三百と二十七歳(嘘)の春であった。
萱野様からいただきました![]()
この話は、哉牙への誕生日プレゼントなので、この聞仲様とちび飛虎は私のものです。(宣言)
ああ。幸せ。ちび飛虎っていいなぁ・・・。可愛いなぁ。
「聞仲をお嫁さんにするんだー」と云える無邪気さが愛らしいわ。
それに「まんざら悪い気がしない」聞仲様も、そんな飛虎がとっても可愛いのでしょうね。
髪にお花を飾ってる聞仲様も可愛い。(しかも、絶対似合う!←断言)
こんな可愛い二人をくださった萱野様には、感謝の言葉がいいつくせません。多謝多謝。