
「…う……ん…っく……」
ざらつく舌が纏わりつく。
鼓動は高鳴るばかりで、身体は急速に熱くなってくる。
流川は花道の口腔を好き勝手に凌辱しながら、空いた両腕も隈なく伸ばしていった。
素肌の感触が気持ち良い。
引き締まったこの男の身体がこんなにも悩ましいと、誰が知っているだろう。
「…あぁ…ル…カワ…ぁ……」
熱い口付けから開放されて上がる花道の甘い吐息……。
見た目ヤンキーの彼がこんな媚態を晒すなど、流川以外に知る者はいない。
いや、一人だけいるけれど、この熱い抱擁の最中に思い出す事もない。
汗でしっとりと濡れ始める肌を、流川は隅々まで愛撫した。
首筋から鎖骨のラインを唇が滑り、花道の鼓動を跳ね上げる。
「…ん…ぁ……」
甘ったるい声が微かに零れた。
まだ大した愛撫も施してないのに、花道の全身は薄紅色に染まっていた。
流川はいつもこの色を綺麗だと思っていた。
艶やかな血のように赤い髪と見事に調和していて悩ましい。
何ともそそる色だと思う。
この肌の色がこうして流川を誘うのだ。
ヴァンパイアでなくなった今でさえ、その赤を求めて喉が乾く。
情欲というケダモノが流川の中で暴れ始めるのだ。
目の前の男を征服したくて堪らなくなってしまう。
張り付いて自分を離さなくなるまで追い詰めて、花道と快楽の波の中で溺れていたい。
その欲望は募るばかりで、決して冷める事がない。
「んっ…ぁ…あぁ……」
流川の指の腹が、器用に花道の胸の果実を弄んだ。
途端に漏れる甘い嬌声に、流川はドクンと胸を震わせた。
花道のこの声を聞くだけで、下腹部は段々熱く重たくなってゆくのだ。
「…どあほう……」
「…ル…カワぁ……」
既に虚ろな瞳が流川を誘った。
誘われるままに流川は花道の胸に唇を寄せていった。
初めは優しく触れる程度に……そして無遠慮にしゃぶりついた。
「…いっ…あぁ!…ルカ……」
うわ言のように囁かれる声は、流川を快楽の呪縛に縛り付けた。
花道を手放せないと確信する瞬間だった。
舌先が触れる度に、ますます赤く硬く色づく突起を、流川は執拗に愛した。
花道のイイ処だと分かっているから尚更だった。
歯牙にコリッと当たる感触が堪らない。
「…あぁ……あっ…やぁ……ッ!」
敏感になった胸をコロコロと舌先で弄ばれて、花道の理性も飛んでゆく。
ただただ快感を求めて、自ずと胸元に彼の頭を引き寄せてしまう。
ピチャリと濡れた音が、静かな闇の中でやけに響いた。
ドクンドクンと高まるばかりの鼓動が互いの素肌を通して伝えている。
「……すげー。…ドキドキ言ってる……」
唇を寄せていた胸元に耳を近づけて流川が呟いた。
さらりとした黒髪が花道の胸元を擽った。
「…くすぐってー…よ、ルカ…ワ……」
途切れがちな声は欲情の証……。
流川は再び胸の突起を舌で転がすように愛撫した。
「…んっ……ッ!」
胸だけの愛撫に留まらず、流川は空いた手を花道の下腹部に伸ばしていった。
「…はっ!…ル、ルカッ…」
内股を撫でられて、ビクンと身体が大きく揺れた。
火照り出した身体には、幾分冷たいと感じる流川の指先がそっと這い上がる。
冷たさの刺激と触れられる刺激が、ますます花道を快楽に引きずり込んだ。
「…ぁ…はぁ…ぁ…あぁ……」
零れる吐息は素直に伝えている。
更なる刺激を求めていると───
濡れた瞳が流川の瞳に捕えられた。
花道は知られてしまったのだ。
自分が快感を求めている事を……。
流川は組み敷いた花道を見下ろして、意地悪く微笑んだ。
そしてそのまま、濡れた花道の唇に自分のそれを重ねた。
「…ん…ふぅ……んっ……」
深く貪られて頭が白濁してゆく。
花道は流川の首に無意識の内に、自分の両腕を回していた。
離れぬように……。
離さぬように……。
流川はそんな仕草に、すぐにでも挿入したくなるのを寸での所で引きとめて、
唇を静かに離した。
ゆっくりと瞼を開けると、そこには瞳を閉じたまま、開いた口腔から唾液を伝わらせている
何とも艶やかな花道の姿が映っていた。
「……堪ンねー……」
流川の喉がゴクンと音を立てる。
その音に花道は期待と羞恥で胸を躍らせた。
「…ルカぁ……」
見つめられるだけの事が、こんなにも身体を熱くする。
そしてこんなにも恥ずかしいだなんて……。
今となっては何度も肌を重ねている花道にとって、それは慣れた行為のはずなのに、
ちっともこの恥ずかしさが消える事がなかった。
それに身体の中を渦巻く灼熱を、いつまで経っても自分ではコントロール出来ないのだ。
いつもその炎は流川の手の内にあったのだ。
「…慌てンな……」
流川の低い声が花道の情欲を掻き立てる。
「う゛…」
中断した愛撫に情けない声を上げた事が、余計に羞恥心を煽った。
それを流川に指摘されて、ますます花道は頬を染めた。
「…もうちっと見ていてー。おめー、凄げー綺麗だ……」
舐めるような視線が花道の肌の上を這いずり回っている。
花道はそれが堪らなくなって、思わず声が張り上げた。
「バ、バカ言ってンじゃねー!」
恥ずかしくて適わない。
ドキドキ鳴る胸は突き抜けてしまうのではないかというくらいまで昂ぶってくる。
思わず羞恥心を振り払おうと叫んだ声が、甘い空気を一度に冷ましてしまう気がした。
感じ始めている身体を放っておかれる事が、どんなに辛いか知っている花道だったけれど、
こうして何もされずにじっと見つめられるのに弱い。
自分だけが快楽を求めているような気がして仕方がないからだ。
流川はもうしばらく花道の濡れた身体を視姦していたかったけれど、
行為自体を花道に拒絶される前に、再び愛撫の唇を落とした。
「…はっ…!…」
途端に上がる甘い声が心地良い。
流川は胸元からゆっくりと唇を下の方へ落としてゆく。
優しい愛撫に花道の血が逆流してゆく。
触れるだけの唇が、くすぐったさとこれから待ち構えている行為への期待を生み出す。
「…ん…、…ル…カワ……」
花道が流川の名を口にしたのは無意識の事だろう。
それ以上の行為を期待して、甘くねだる。
まるでそれを察したかのように、流川の舌先が腹部に流れた。
「…ぁ…あぁっ!……」
流川の舌先が臍の辺りをゆっくりと滑った。
もう少し、もう少しで───
花道はそんな期待に躰を震わせた。
けれどなかなか流川は花道の欲望には触れてこない。
焦らすように遠巻きの肌を弄るだけだ。
流川の無骨な手が、花道の内股を這う。
けれどやっぱり肝心な所には触れようとはしない。
「…ルカワぁ……」
薄く開いた瞳は涙を含んで潤んでいる。
甘く囁く声は次なる刺激を求めて吐き出される〈お願い〉だ。
こんな風に甘くおねだりするように仕向けたのも流川───
そしてここまで花道を色に染めたのも、仕込んだのも流川───
「…どーした?」
分かり切った事を流川は聞いた。
花道が何を求めているのか分かっているのに、意地悪に問い詰める。
哀願の言葉を花道に言わせたいが為、流川はわざと聞くのだ。
流川の柔らかくも意地悪な瞳が、腰の辺りから覗いている。
花道は虚ろな瞳で彼を見つめた。
「…ルカぁ……」
直接触れられた訳でもないのに、勃ち上がりかけている花道自身に
流川の熱い吐息がかかった。
ただ吐息が触れただけなのに、それさえも今の花道には昴ぶらせる刺激の一つだ。
けれど決してそれだけでは満足なんて出来るはずがない。
触れて欲しくて、羞恥より欲望を口にしてしまうなんて、
全く流川の思う壷だけれど、放っておかれるよりは全然良い。
「…何だ?」
「…ルカ…ワぁ…」
「だから何だ?」
内心ほくそ笑みながら、流川は抑揚ない声で花道を促した。
「……ってくれよ……ッ」
流川は熱い吐息を近づけながら再度問う。
「…何?」
「…触ってくれよ、ルカワ……」
流川の指はさっきからずっと内股を這いずり回っている。
「…触ってるだろーが……」
「…はっ! あぁ……ッ!」
流川の指に太ももを撫で上げられて、ゾクゾクと震えながら花道は鳴いた。
「そう…じゃねぇ。…そこ…じゃねぇ……」
掠れる花道の声はすっかり艶に濡れている。
「…どこだ?」
意地悪な流川のセリフに、花道は更に全身を桜色に染めた。
「…分かってンだろ、畜生ッ! 焦らしてンじゃねぇッ!」
恥ずかしくて罵声を飛ばさずにはいられない。
「…どこだ? 言ってみろよ……」
羞恥で赤く染まった花道を心の中で『凄げー可愛い』と呟きながら、
流川は意地悪に呟いた。
「なっ……」
流川の意図を知って、花道は言葉を詰まらせる。
『信じられねー!』
花道が快楽を求め始めて羞恥を感じている事など、流川にはお見通しなのだ。
「言えよ……」
流川は熱くなってきた花道自身にふっと息を吹きかけた。
「…あっ!」
ピクンと躰を震わす花道が愛しい。
流川は思わず口元を綻ばせた。
「…どこに触ってほしー?」
花道はもうこれ以上放っておかれるのが辛くて、欲情のままに口にした。
「…ここ……」
花道は流川の手を取ると、誇張し始めている己自身に触れさせた。
「…どあほう……」
こんな風に積極的に自らの欲望を訴える事が、花道の場合は少ない。
だから余計にこの花道の行動が流川には嬉しかった。
自分だけが求めるのではなくて、花道にも自分を求めて欲しい。
花道の為にあっさりとヴァンパンアであった己を捨て去った自分のように───
何よりも誰よりも、狂おしい程に花道を求めてやまない自分のように───
花道にもそういう欲を自分に感じて欲しい。