非常階段

これは「Overheat Special」という本に掲載したお話です。

一応H本だったので、その手のシーンがはっきり言って多いです。

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(1)

 ゆっくりと上昇してゆくエレベーターがもどかしい。
1分でも1秒でも早く辿り着きたいのに……。
 まるでそんな心情を察して、わざと焦らしているかのように
殊更ゆっくりと上がってゆくエレベーターに、花道は唇を噛んだ。
 ドクンドクンと痛い程に高鳴っている胸の鼓動は、既に歓喜に打ち震えている
証拠だ。
吐き出す吐息も心なしか…熱い。
 他にエレベーターに乗り合せている客はいないけれど、花道は努めて冷静を装おうと
していた。
苦しくて無意識に胸に押し当てている指先が震えている。
「……はぁ……」
 堪らず一度零れ落ちた吐息は、後から後から沸いてくる。

 ───もう我慢の限界だった。

 花道はエレベーターの数字の点滅を睨み付けるように見据え、目的の10階の到着を
今か今かと待ち侘びた。
 しばらくして歯切れの良い音と共に開かれた扉は、花道にやっと道を開いた。
もどかしい想いと裏腹に、花道はゆっくりとその足を踏み出し、エレベーターの
狭い箱の中から出た。
出来るだけ逸るこの想いを静めようと───
 けれど所詮、それは無駄な足掻きだと分かっている。
約束の部屋は1015号室。

 ベージュ色の敷き詰められた廊下の絨毯を、花道は足早に歩いた。
気が触れそうなくらいに高鳴る鼓動と熱くなり始めた躰は、その部屋で待っている
はずの人物にしか御する事が出来ないのだ。
自分ではどうしようもない。
 花道は目的の部屋に着くと、落ち着く為に大きく息を吸い込んでから
インターホンを押した。
ドクドクと躰中が騒いでいる。
 すぐさま開かれた扉の向こう側にその顔を見つけて、花道は安堵し、
同時に歓喜した。
「桜木ッ!」
 名を呼ばれて、今まで押さえ込んでいた箍があっさり外れてゆくのを自覚した。
「センドー」
 逢いたかった人にやっと逢えて、花道は広げられたその腕の中に飛び込んだ。
パタンと背後で静かに閉まる扉に、もう2人以外の世界は遮断された。
「──んッ…ん……ッ」
 名を紡いだ唇はどちらからともなく合わされ、深く深く互いを貪り始める。
言葉を紡ぐよりも、直接こうして触れ、語り合いたかった。
 湧き上がる感情はそのまま情欲に擦り替えられ、深く唇を合わせたまま、
互いに自分の服を引き千切らんばかりの勢いで脱ぎ捨ててゆく。
 口腔の中で弄り合う熱い舌先───
躰の奥までジーンと痺れ、熱に浮かされてゆくようだ。
 絡み合う舌先に、シャツのボタンを外す花道の手が一瞬止まる。
「…ふっ……んっ……」
 巧みな仙道のキスに酔って、躰は弛緩してゆく。
もう自分の力では立っているのも苦痛に感じてしまう。
 待ち侘びた歓喜に心臓が踊り、心が飛翔している。
 情けなく力の抜けた花道の指先は、仙道の腕に伸ばされた。
花道よりも早くシャツを脱ぎ捨てた仙道は、上半身の肌を晒している。
力の抜けた花道の代わりに、仙道は中途半端になっていた花道のシャツの
ボタンに手を掛け、乱暴に外した。
 花道の肌に纏わりついているシャツを肩から落とすと、仙道は花道を掻き抱いた。
「…はぁっ……セン…ドぉ……」
 潤んだ瞳が仙道の理性をかなぐり捨ててゆく。
ドクンと熱く震えたのは心臓ばかりではない。
「…桜木……」
 囁かれた仙道の声に花道の肌が際立った。
 熱い吐息が散らばるホテルの一室───
逢えなかった分だけ燃え上がる。
 たとえそれが限られた時間の中だけの事だと知っていても、もう止める事なんて出来ない。
 ───後戻りも出来ない。

 触れた素肌の感触に、ゾクリと何かが蠢いた。
「…はっ……あぁ……」
 ろくな愛撫もされていないのに、すっかり花道の躰は昇まっていた。
あのエレベーターの中でさえ、本当は仙道を想って自ら不埒な指先を伸ばし掛けていたのだ。
 こんな行為を当初は嫌がっていたはずなのに、今ではこんなに求めている。
「…センドぉ……」
 目元を朱色に染め、花道は惜しげもなく躰を晒した。
拙い唇は欲望のままに甘く男を誘う。
 ここで焦らされたら気が触れるかもしれない。
花道はどこかでそう思いながら、火照った躰を仙道に押し付けた。
「…早く……」
 花道は仙道のスラックスに手を掛けると、徐にベルトやファスナーを外し、
熱い滾りに指先を伸ばした。
「桜木……」
 仙道の熱い吐息のような声が、花道の耳元を震わせる。
ベッドまでも待てず、こうして部屋の扉で触れ合ってしまう程、
2人のボルテージは上がっている。
「ごめん、桜木。俺も我慢出来そうにない」
 そう告げると、仙道は強引に花道のジーンズを引き下ろした。
外気に触れる肌が打ち震えている。
「…あぁッ、…んっ!……」
 仙道の指先は、熱くなった花道の先端をさ迷い、先走りの蜜を溢れさせた。
決して強くはない愛撫に、花道の灼熱はますます硬度を増してゆく。
「…はっ!……っく…ぁ……」
 一番敏感な括れに爪を立てられ、電流のような快感が花道を襲った。
仙道はそんな花道の媚態を視界に収めながら、花道のもので濡れた指先で
彼の秘所を弄び始めた。
「ひゃっ!…ぁ…あぁ………っ!」

 密着する肌と肌───
心臓の鼓動も、互いの昴まった分身の脈動も、重なり合って一つになってゆく。

 仙道の指が花道の局所を行き来する。
解す為に伸ばされた指先は、早くもヒクつき始めた蕾に食われるように
飲み込まれてゆく。
ギュッと締め付けられ、こんな姿勢で愛撫するのも段々辛くなってくる。
「…あぁ…はぁ……ん……セン…ドぉ……」
 愛撫を施されている花道とて同じ事──
むず痒いような…それでいて眩暈を起こしそうな熱さが、仙道の触れている所から
躰中に広がってゆく。
 次なる強い刺激を求めて疼き始めてしまう。
「…センドー…。もう…いーから…、…早く……」
 潤んだ瞳が仙道の可虐心を誘った。
まだ充分に準備が出来ていない事は、互いが分かっていた。

 それでも───
 欲しくて堪らないのだ。

「…まだ辛いよ?」
 優しい静かな仙道の声。
 本当は花道の中に入りたくて堪らないくせに、僅かに残っていた『理性』が
そんな白々しい言葉を吐かせている。
 その瞳はこれ以上にない程、情欲に濡れているというのに……。
「いーから! …もう…我慢出来ねー…。……ぁ…センドー……」
 縋りついて訴える花道に、仙道の『理性』は完全に消え失せた。