(3)

 

 流川が風呂から上がった所で、手の込んだ花道の手料理を2人テーブルを囲んで食す。
 流川は『幸せ』の二文字を心で噛み締め、うっとりと愛妻を見つめた。
「ぬ? 味付け、気に入ンねーのか?」
 不安げな顔を向けるそんな仕草も堪らないと、メロメロになっている夫の心情など
知りもしないだろう。
 花道は健気な事に、醤油味が濃かったか…なんて、心配しているのだ。
「…そーじゃねー」
 ふるふると首を振って、流川は再び忙しく箸を動かし始めた。
「?」
 花道は不思議そうに暫く流川を見ていたけれど、彼もまた空腹を訴える
腹に負けて、すぐに食事を再開した。

 食事も終われば夫婦の語らい──

 流川は、食事の片づけをしている花道の後姿をじっと見つめていた。
「…どあほう……」
 小さな囁きはキッチンにいる花道までは届かず、付けっぱなしのTVの音に
掻き消された。
 鼻歌交じりで食器類を洗い上げてゆく花道の後姿は、どこか機嫌の良さも感じられる。
 夫が家事に積極的で仲睦まじい夫婦なら、妻の横に後ろにピッタリと
張り付いて、片付けの手伝いもしただろう。
 仲睦まじいは別にして、流川には家事能力が一切なかった。
皿1枚もまともに拭けず、食器棚に食器を片付ける事すら出来ないのだ。
 学生時代からそういう面を見る機会のあった花道が、『後片付けを手伝え』と
言わない理由はそこにある。
 過去に何度か手伝わせた事もあったけれど、その度に皿の枚数が減ってゆくばかりで
一向に進歩も見られず、早々に諦めた。
 元々家事には自信もった事もあり、今ではすっかり流川家において、
家事一切は花道の専売特許となっている。