ある月夜に……

 

 肌に触れる室温に、冷え込んでゆくのが分かる。
静かな静かな夜更け……。
「ん……」
 微かに聞こえた吐息に視線を向けてみれば、
先程までこのシーツの上で悩ましい媚態を見せていた
花道が身じろぎをした所だった。
 その姿を見とめて思わず口元が綻ぶ。
汗に張りついていた前髪も少し乾き始めている。
 流川は手を伸ばしてその髪をゆっくりと梳き上げた。
「…んっ……」
 擽ったそうに身を捩る花道を瞳で充分楽しみながら、
流川は目覚めそうにない彼の躰をシーツごと抱き寄せた。
「…どあほう……」
 自分とそれ程変わらぬ体型の…まして自分と同じ同性である彼に、
どうしてここまで心と躰が疼くのだろう。
 抱いて抱きしめて、散々甘い声を上げさせても
湧き上がる欲望は止まらない。
 許しを請うまで追い詰めて、やっとの事で頂きを上り詰めてゆく
花道の妖艶な媚態に骨の髄まで悩殺される。
 全て……。
花道の全てを独占したい。
 あの太陽のような笑みも、リングに向かって跳躍するあの瞬間も、
自分の背に縋り付いて愉悦の涙を零すあの顔も全て……。
全てを自分のものにしたい。
 重なる吐息に…鼓動に、向けられる扇情的に潤んだ瞳に
確かに自分のものになったと実感出来るのに、
一度すれば自分の腕をすり抜けて駆け出してゆく。
いつもそんな気分にさせられるは何故だろう。

 どこまで行けるかは分からない。
このままずっと一緒にいられるのか、それは分からない。

 けれど……

 手放せるはずはないと確信している。
お互いがもう手放せない。
何が、と言えば全てと答える程に互いがもう既に互いの一部なのだ。
こんなに誰かに心惹かれたのも初めてだった。
そしてもう花道以上に心惹かれる人物にも出逢う事はないだろう。

 それ程までに花道が愛しい。

 月の光が深閑と差し込んで花道の寝顔を照らす。
穏やかな寝顔はこんなにも無防備で──
誰にも見せたくない。
誰にも触れさせたくない。

 世界でたった一人……。

 この花道を独占出来るのは──
独占しているのはこの自分だけなんだと胸が熱くなる夜更け…。

 月夜の静けさの中、独占欲とこの上ない至福に胸を焦がす。
流川は暫く訪れそうにない睡魔をいい事に、また今夜もじっと
穏やかな花道の寝顔を見つめていた。

 至極優しい漆黒の眼差しで……。


                      END

 

流花の日に生誕されたりーち様に捧ぐ

HAPPY BIRTHDAY♪

…ってロクなもんじゃなくてごめんなさーい(>_<)"