あつまれ!ぐるぐる温泉


「いやー疲れた。こう忙しいと、休みを取って温泉にでも行きたくなるよなぁ。・・・・よし!今度の休みにみんなで温泉にでも行くか!」
「ははは、いいですね。でもチーフ、温泉の浸かりすぎには注意してくださいよ」
「ん?なんだ湯あたりか?大丈夫だよ、いくらなんでもそこまで浸かったりはしないさ。それにたかが湯あたりじゃないか」
「いえ。それが湯あたりといえども馬鹿にできないんです。最近の調査によると、ある奇妙な現象の原因に温泉、特に湯あたりが関係しているとの報告があるんです」
「奇妙な現象?おいおい、脅かさないでくれよ。一体、なんだっていうんだい?」
「そうくるだろうと思って、既にリサーチはまとめてあります。こちらを見て下さい」


FILE116「ぐるぐる温泉の秘密を探れ」

ぐるぐる温泉。
山梨県の山あいにひっそりと涌き出たこの温泉は、川中島の合戦の折に負傷した武田軍の兵士が湯治に使ったという伝説を持つ、由緒ある湯治場である。
1996年、青眼大学人類行動生理化学教授八木沢宏教授がこの地を訪れ、この温泉の近辺に住む住人を対象にある調査を行った。
その結果、八木沢教授はそこである驚くべき現象を発見したのである。
一体、八木沢教授は何を見たのだろうか。

実はぐるぐる温泉の現象を八木沢教授が観測する3年前、アメリカ各地で、それとよく似た現象が確認されていた事が最近の調査で明らかにされている。
当時のアメリカ医学会が、年間予算の47%をかけ根絶にあたった奇妙な現象。
はたして、アメリカで何が起きていたというのだろうか。

ー1993年、アメリカ。カンザス州南西部の小さな漁港サンタローザ。スミス・ジェファーソン氏は毎日の日課となっている、庭の椿の手入れをしていた。
その時である。彼の妻、アリスンさんがいるバスルームで大きな水音がしたのである。
心臓に持病のあるアリスンさんに何か起こったのではないかと、スミス氏が急いで駆けつけると、彼はそこでアリスンさんが失神状態でバスタブに沈んでいたのを発見したのである。
元レスキュー隊員だったスミス氏の迅速な応急処置と、氏の連絡で急行した救急謡員の手により、アリスンさんは無事一命を取り留めた。
ジェファーソン夫妻は、今までにも何度か発作は起きていたがこのようなケースは初めてだったので、念のため担当医に診察してもらうことにした。
しかし「心臓発作による神経性ショックによる失神」以上の結論は得られなかったのである。
だが。
アリスンさんの身に起きた現象は、これだけではなかったのである。

症例1:睡眠障害
アリスンさんは、倒れる以前、どんなに遅くてもPM12時には就寝していた。しかし倒れてからの彼女はなかなか寝付けなくなり、深夜3時、4時まで起きているようになってしまったのである。

症例2:独特の口調
国語教師で特に言葉使いに厳しかったアリスンさんは突然、「おめでとう」を「おめ」、「よろしく」を「よろ」等、独特の略し方をするようになってしまったのである。また、日常会話の中でも、1回の発言が12文字で収まるように話し始めたのである。

症例3:奇妙な感情表現
楽しい時には(笑)や(^^)、悲しい時には(ToT)といった、特殊な表現をするようになってしまった。

以上のような症状がアリスンさんの身に発生したのである。当初、これらは心臓発作の後遺症だと思われていた。
しかし、心臓に持病がなくてもこれらの症状に悩まされる人々が急増したことから、これらの現象には何か別の原因があるのではないかと考えられるようになったのである。
ワシントン防疫管理医学センター(DCDDS)はこの症状をYAS(Yu-Atari-Shock)症と認定し、他の疾患との合併症ではない単独の病理現象であると宣言、特別対策チームを編成した。
しかし成果は挙げられず、患者は増える一方だった。

驚くべきことに1993年だけでも、アリスン・ジェファーソンさんを皮切りにオクラホマ州、テキサス州、ニューメキシコ州、アリゾナ州、ユタ州、と各地で年齢性別を問わず、同じ症状を訴える患者が実に3000人以上確認されたのである。
事態を重く見たアメリカ医学会は19994年、当時の年間予算の半分にあたる15万ドルを投資し、研究チームを組織。YAS症の解明・根絶に取り掛かったが、翌年、結果を出せないままチームは解散に至っている。
そして未だにYAS症患者は増え続け、現在でもアメリカ国民に胸囲を与えているのである。

そして、ぐるぐる温泉を調査した八木沢教授が周辺の住人から確認した症状もまた、このおそるべきYAS症だというのである。
アメリカだけでなく、ついに日本でも確認されたYAS症。
一体、その原因はなんなのだろうか。

日本におけるYAS症研究の第一人者、東洋医科鹿大学脳神経生理学教授、栗川教授はこう語る。
「原因を1つに特定するのは難しいですが、この症状には脳内物質のアツグルンセンが大きく関係していると考えられます」

アツグルンセン。栗川教授の研究によれば、1960年代に発見されたこの脳内物質は交感神経と副交感神経の調整を司る働きを持っており、我々の脳内にも微量ではあるが常時分泌されている、無害な物質なのだという。
その物質が、何故、YAS症の原因となるのだろうか。
栗川教授によると、YAS症の患者を対象とした検査の結果、検査に参加した全員の脳内から常人の実に1260倍以上のアツグルンセンが検出されたというのである。
「アツグルンセンの過剰な増加により、脳内の神経伝達組織の活動が阻害され、結果としてYAS症に見られるような現象が起きたと、考えて良いと思います」
アツグルンセンの異常とも言える増加。一体何故、このような大量分泌が起きたのだろうか。
「最も可能性が高いのは、温熱障害による体温調節機能のズレだと考えられます」

温熱障害。周知の通り我々人類は恒温動物であり、外気温との温度差を感じとって体温を一定範囲に常時維持しようとする機能を持っている。
周囲が暑くなれば汗をかいて気化熱による冷却効果で体温を下げたり、寒くなれば武者震い、鳥肌といった生理機能で体内に熱を発生、または熱の放出を抑えたりする機能は、すべて我々が恒温動物だからこそのいわば本能的行動なのである。
温熱障害とは、その体温調節機構がうまく機能されずに体温が上昇を 続けていく状態をいうのである。
栗川教授によれば驚くべきことに「湯あたり」も軽度の温熱障害だと いうのである。
そして、この温熱障害による体温の上昇こそがアツグルンセンの異常分泌の原因なのである。
それでは何故、このような大量分泌が起きてしまうのだろうか。

通常、アツグルンセンはノッホソという無害な状態で脳内に存在している。
しかし脳内温度がある一定値を越えると、ノッホソは酸素とアツグルンセンに化学分解を始めるのである。ノッホソが分解を始める脳内温度は37度
これは我々がぬるめの風呂に30分以上浸かっていたり、長時間の集中を要するもの、例えば将棋や麻雀、トランプ。特にトランプでは「ナポレオン」や「7ならべ」、「大富豪」などをしていると、たやすく到達してしまう温度なのである。
ノッホソから分離したアツグルンセンは、先程の分解で生じた酸素を 取り込み、自ら熱を発して他のノッホソの分解を促進するのである。 また同時にアツグルンセンは交感神経に作用して発汗を促すのである。そして、脳内温度が37度を下回るとアツグルンセンは脳内の酸素と結合し、再びノッホソへと変化するのである。
しかし、ここで問題が生じるのである。温熱障害である。
温熱障害は体温調節が機能しない状態であり、この状態の間は体温の低下は起こらない。しかし脳内では、アツグルンセンが脳内温度を下げる為に大量に分泌され続けてしまうのである。
大量に発生し、増え続けるアツグルンセンはやがて脳内の酸素を過剰に消費するようになり、結果として軽い酸欠状態を引き起こすのである。
この段階こそが所謂「湯あたり」「のぼせ」といった状態なのである。
そしてこの状態から回復したとしても、脳内に大量に発生したアツグルンセンが、全てノッホソへ戻ることができずそのままの状態で蓄積されてしまうのである。
つまり増えすぎたアツグルンセンはそのまま脳内の酸素を吸収し続け、脳では常時低酸素状態が続いてしまうのである。これこそがYAS症の正体だと、栗川教授は推測しているのである。
「ただ、アツグルンセンの発生を抑えるのは簡単なことで、長湯や長時間のTVゲームなどをしなければ、まったく問題ありません」

驚くべきことにアツグルンセンの大量分泌は、我々現代人の行動自体が引き金となっていたのである。
ーストレス社会と呼ばれる現代。ストレス解消のはずが逆に我々の体を蝕むこともありうるのであるー





「うーむ、なるほど。YAS症にアツグルンセンか。これは気をつけないといかんなぁ」
「ええ。しかしチーフ。リポートにもあった通り、要は我々が注意していれば問題ないわけです。ただ・・・・」
「我を忘れて熱中してはいけない、ということか」
「そうです」
ーー2人、傍らを見る。そこには局員が1人、延々と「あつまれ!ぐるぐる温泉」にあけくれている。
「・・・ひょっとして彼も・・・・」
「YAS症なのかもしれませんね・・・・・」


予告
次回「特命リサーチ2000X」は「オゴポゴ湖の巨大水棲生物を追え!」です。お楽しみに。


・・・って、あっ!こりゃ全然ツボ話になってねぇ!
ま、たまにはいいか、こういうのも(^^;

とにかくレッツプレイ!「ぐるぐる温泉」!


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