ミッドナイト・チャリ旅(前編)
無意味なことにかけるバイタリティーは、素敵ですわね!「そんな意味のないことやめろ!」という忠告をふりきってでもやろうとしちゃうその爆発力。ああなんてすばらしい。そんな爆発力が、ソニック直子とタマックの間に生まれた夜がありました。時は深夜11時。タマック邸にて酒をかわしていたソニックが、とつぜん提案いたしました。S(ソニック)「自転車で、三ノ宮まで行こか!」
三ノ宮はJRで4つも先の駅であります。しかもそこは、坂の街神戸。常人ならば自転車で行こうなどというのは狂喜の沙汰であります。しかしここで、あたくしはツキューン!と胸のうずきを感じたのです。T(タマック)「いこか!」話は速攻まとまりました。目標は、三ノ宮駅北、生田神社にお参りをすることに決定。なぜこの深夜に、なぜ人力で、なぜお参り!そんなことはどうでもいいのです。いえ、どうでもよいことだからこそたまらなくそそるのです!「うしゃしゃしゃしゃしゃ!」二人は笑いながらチャリに飛び乗り、怒濤の旅は始まりました。
ここからはドキュメントモードでお送りします。ちなみに以下の出来事はTamacの記憶に基づいて記述されているので、言動等多少実際と異なる点があろうかと思いますが、起こったことは基本的に事実です。
まず最初の関門は、二つの『心臓破りの坂』!川越えのため山状になっている道路を、立ちこぎで越える!もともと酔っぱらいのため力も入りにくくなっておりタマックは第一の坂で遅れをとった。S「大丈夫かあー!」先を行くソニックが振り返りながら叫ぶ(注:深夜である)T「おおー!」腕の力と足の力と体重を総動員して坂をのぼる。かなりの重労働。しかし頂上に登り詰めればあとは下るのみである。「いえーい!」「ひょーう!」両足離しで奇声をあげながら風をきる。つめたくてキモチがよくて、うーん絶好調!第一の坂を越えきると、前方に、ジョギング中のウィンドブレーカーの兄ちゃんが走っている。うぬっこれはフォームを知っている、ランナーの走りだ。うおー!闘争心がメラメラッと燃え上がった。しゃかしゃかしゃかしゃか!こぎまくってひらりと抜き去る。かわす瞬間のにやっとした笑みはこぼさずにはいられない。しかしこの兄ちゃん、さすがはランナー、かなりの速度。こちらが信号待ちで停車している間に追い付いてくる。兄ちゃんは淡々とした表情だったがおそらくライバル心をもっているに違いない。会話はかわさないが闘争オーラが2対1の間に流れていた。ソニックも相手の気配に気付いていた。S「負けられへんな」信号が青に変わると共に猛然とスタートをきり、第二の坂を目前にぐんぐんランナーを引き離し距離を稼ぐ!そして坂に入った!
T「うっ、これはキツい!」第二の坂はより勾配が大きくぐぐんと速度が下がる。全身をこわばらせ全パワーをペダルにこめる。ひとこぎ、ひとこぎが重い。それでもタマックはこいだ。そして、やっと頂点に差し掛かろうというその時!
バツン!!
音とともに、途端にペダルがスカスカスカーと空回りしはじめたのだ。なんだっ!?緊急停車して自転車の状態を見ると、ガーン。なんと、チェーンが切れている!T「ソニック!ソニック!」事情をいうと彼女は「おひょひょ、あふぁふぁふぁ!チェーン切れてるで!あふぁふぁふぁふぁふぁ!」と笑いころげた。この絵に描いたような非常事態っぷりがツボにはまったらしい。
何とか繋げないものか。指先を黒い油でぎとぎとにして、あっちを持って、こっちをまわしてと修復にとりくむが、いじりまわして分かったのはチェーンの一部が金属疲労でブチ切れてしまい、手では繋げないということだった。ががーん。
通りがかる車の助手席から、女の人が不審な目で見ていく。はっと気がつくとランナーもたったったっと抜いていった。S「ああ!」T「抜かれる!」小声で叫んでも抜き返すためのチャリはポンコツ。ふたりは動かぬチャリを頼り無く見下ろした。
出発後わずか10分あまり。しょっぱなから二人をおそったアクシデント!チャリが壊れちゃったんじゃ無理じゃないのか!?果たして三ノ宮まで行けるのか!?三ノ宮まであと3駅!