ミッドナイト・チャリ旅(後編)

 チェーン切れたままで行くことを決意してから約1時間。ついに二人は三ノ宮までたどりついた。ブラボー!駅近くにチャリを止めて、さっそく生田神社へ。お参りをして怒濤の締め…のつもりが、なんと神社、深夜にて閉鎖されてる!柵にかじりつく二人。T「柵のぼって中に入れんか?」だが中には見回りの人影がチラホラ。こいつは、しょっぴかれるのがオチだ。

 断念。なんてこったい。二人はせつない気持ちのまま深夜の三ノ宮をぶらついた。S「帰るか?」T「いやっ、この夜のノリをここで終わらせたくない!」それに帰るとなると、今まで走行を助けてくれた多くの下り坂が今度は恐るべき障害となって立ちはだかっている。朝を待ち、自転車屋にチェーンを修理してもらってから出発、といきたいもんだ。そこで時間つぶしポイントとして選ばれたのはまぐろ亭。深夜800円ポッキリの食べ放題レストランである。長居できそう、いざとなれば寝れそうな雰囲気が決定の要因となった。

 入り口レジで並んでいると、後方の客が「この帽子、カワイイなー」と話し掛けてきた。振り返ってみると、ドドン!真っ赤なスーツを着込んだ化粧濃いおばちゃん!ソニックの極彩色のニット帽がお気に召したらしい。ニット帽の出所や、チャリで三ノ宮まで来たいきさつなどを話しているうちに親しくなった。おばちゃんは、仕事あがりのスナックのママだった。気さくなおばちゃんで、「3階はバーみたいなとこでな、別料金の飲み物頼まなあかんような雰囲気やけど、気にせんと食べとったらええんやで!」「すしコーナーではこっそりシャリを捨てて上のネタだけ食べとったらええんやで!」などなど庶民感覚に根ざした裏技を伝授してくれる。そして腹も満ちたころ、ママから提案が。「これから銭湯いくんやけど、一緒に行くか?」もともと行くあてなんてありゃしない二人、その話、乗った!

 徒歩約10分。銭湯は、小さいながらもジャグジー、電気風呂、硫黄温泉を備えておりなかなかに快適。客は、近所のおばちゃんが数名いる程度で、ソニック&タマックはめいめい、各施設を堪能する。シャンプー・リンスや洗顔料は、「何でも使いや」とママがばんばん貸し出してくれた。ママの浴用グッズは他にもたわし、軽石、泥パック、米ぬか袋、あかすり手袋とすばらしい充実っぷり。しかし、そのたわしはたぶんフライパン洗うやつ。どれだけ泡立てても痛いったら。しかしママは「これで角質がよう取れんねん!」とがしがし使い込む。さすが。たわしに限らずママのビューティーケアっぷりはすごかった。米ぬか袋をぐりぐり顔にぬりこみ、パタパタパタパタと何十回とヘチマ水をはたき、緑色のパックをしながら体のあかをするという入れこみよう。50過ぎてそこまで自分のカラダのメンテに気合い入れてるというバイタリティに感動すらおぼえた。

 4時を過ぎると、突如ギャル客か姿を見せ始めた。お水の仕事あがりにひと風呂浴びて、始発で帰ろうというのだろう。知られざる、夜の三ノ宮の生態にふれてタマックはちょっとわくわくした。

 5時くらいまで銭湯で汗を流していると、さすがにソニック&タマックにも睡魔がさしてきていた。するとママから「うちの店でちょっと寝ていくか?」とありがたい提案。貧乏コンビソニック&タマック、生まれて初めて『スナック』という場所へ行く!ママの店は三ノ宮の某ビル3階。鏡を多用した洒落た雰囲気で、各種ボトルキープがずらりと並んでいる。T「これ、一本いくらですか?」ママ「それは、六千円」ST「ろくせんえん!」S「そっちのは?」ママ「それは二万やな」ST「にまん!!!」ふだん800円のライチ酒で酒盛りしてる二人は、ステージの違いにおののきまくった。まさに桁違いの生活。しかし驚いた後は、仲良く店のソファで雑魚寝である。金持ってるんだろうけど庶民感覚を忘れないママ、素敵すぎる。こんな50歳になりたい!

 翌朝。ママにねんごろにお礼を言い、最寄りの自転車屋を教えてもらって、帰路につく二人。チェーンの修理代は3500円。タマック邸から三ノ宮まで、じつにJRで10往復できる額であった!だけど、このチャリ旅は、電車の100往復にも代えられないね!