ふと目に入ったものは少し古びたはんだごてであった。
エミ:「うわぁ、はんだごてだ。柄のところが紫色なんて変わってる。なんだかまだ使えそ
う。うちに持って帰って磨いてみよう」
エミは小脇にはんだごてを抱えるとパタパタと走り出した。
エミ:「このはんだごて、変な顔のシールが張ってある。何かな?」
しかし、エミは特に気にせずに家に向かって走った。
そのとき、シールの顔がにやりと笑った。
エミ:「エーっと、ぬれぶきんできれいに磨いて・・・」
エミがはんだごての刀身を磨くと、突然はんだごてから黙々と煙が立ち込めた!
エミ:「う、うわー!」
もうあたりは真っ白で何にも見えない。
エミ:「ゲホゲゴ・・・く、苦しいよ・・・」
ようやくあたりの煙が晴れてくると、エミの目の前に、不気味な羽を生やした人間(?)
が宙に浮いていた。
エミ:「???」
羽の生えた人:「我は古来よりずきんの国を影から見守ってきたずきん族の魔の化身、でびる頭巾である。」
エミ:「は、はあ、どうも」
でびる:「我はずきんの国からこの国へ参ったが、うっかり封印されてしまったのだ。」
エミ:「???」
デビル:「良くぞ我を解き放ってくれた。お礼に、願いを3つかなえて進ぜよう。」
エミ:「あ、あのう、質問していいですか?」
デビル:「なにか?」
エミ:「デビル頭巾さんは、ずきんの国からいらっしゃったんですか?」
デビル:「ウム。」
エミ:「聞いたことないなぁ。南の島あたりの小さな国かしら?」
デビル:「(ぎく!)そ、そうである。」
エミ:「何をしに来たんですか?
デビル:「それは(もちろんこの世に破壊と混沌をもたらすため・・・)じゃなくて、人間
界の視察のためにわが国から派遣された使節の一員なのだ。」
エミ:「なんではんだごてのなかにいたんですか?」
デビル:「(それは夜に散歩してたらいつのまにか封印されていたんだよ)それはわが国の重要機密である。」
デビル頭巾は思った。
こやつ、鋭い・・・。
いや、誰だってはんだごての中からなんか出てきたら怪しむって。
デビル:「それより、我を解き放ってくれたお礼に3つ、願いをかなえてやろう」
エミ:「お礼ですか?うーん、別にこれと言って今用事とかないし・・・」
ふっふっふっふ・・・・3つ目がかなった瞬間、この娘の魂はもらったモケ!
この世に破壊と混沌をもたらすための地道な第一歩モケ!
あんまり関係ないような気がするなぁ。
だったらもっと破壊活動っぽい事すればいいのに。
エミ:「あ、そうだ!」
デビル:「(き、きたぁー--!!!)何用か?」
エミ:「3丁目のホームセンターで、はんだ1巻き買ってきて。」
3丁目のホームセンターでレジに並ぶデビル頭巾。
デビル:「はぁ、何でこんなお使いもどきしなきゃいけないモケ?」
そんな当人の気持ちとは裏腹に、世間の目は厳しかった。
子供:「ママ、あの人変なかっこう。」
母親:「しっ!見ちゃいけません。」
街の人:「白昼堂々コスプレ・・・」
デビル:「ひどい目にあったモケ。しかし、この世に破壊と混沌をもたらすためモケ!」
エミの家の窓をがらりと開けてはいるデビル頭巾であった。
エミは壊れたラジカセの部品を取り替えているところであった。
でびる:「ただいまモケ。」
エミ:「あ、お帰りなさい。そこにお菓子とお茶あるからゆっくりしてて。」
小さなテーブルにはお茶と海苔せんべいが置いてあった。
デビル:「あ、遠慮なくいただくモケ。」
数十分後・・・
デビル:「あ、あの・・・次のお願いまだでしょうか?」
エミ:「うーん、後少し・・・」
エミは熱中している。
レイジ:「行ってくるぜ。」
レイジの母:「あんた、エミちゃんのとこにいくのかい?」
レイジ:「ああ、そうだけど」
レイジの母:「じゃあイチゴ1箱、持っていきなさい。エミちゃんの好物でしょう。」
レイジ:「おう、せんきゅ。んじゃ行ってくる。」
エミ:「はー、やっと終わった。」
デビル:「(待ちくたびれた)さ、次のお願いは!」
エミ:「うーん、そうねぇ。実はそろそろ素敵な彼氏が欲しいなー。なんてね。」
デビル:「お任せモケ!デビル頭巾一族に伝わる黒魔術が、理想の恋人を引き寄せるモケ!」
エミ:「ホント!」
デビル:「それじゃいくモケ・・・デビル一族に伝わる恋人キャッチャーよ!東芝エミの恋人を掴み取れ!」
すると、UFOキャッチャーのようなマジックハンドを持った怪しげな物体が現れた。
デビル:「いくモケ!」
エミ:「どきどき、どんな人かな。とよえつかな?ソリマチタカシもいいなぁ。」
でびる:「(面食いモケ)」
チャリリーン。と、レイジはエミの家まで自転車を飛ばしていた。
今日はエミのパソコンの調子を見にいく約束をしていた。
パソコンが苦手のエミは、ちょっとしたことでもすぐ壊れたんじゃないかと
中身をばらばらにしてしまう。
レイジ:「さーて、イチゴでも食いながら見てやっかな。」
レイジ:「うわーーーーっ!!」
エミ:「?窓の外から叫び声が・・・」
デビル:「早速捕まえたモケ。恋人キャッチャーは百発百中モケ!」
エミ:「?レイジ君???」
レイジ:「なんなんだよ、このUFOキャッチャー!おいコラ、はなせっつうの!」
なんと、先ほど出したデビルずきんのUFOキャッチャーがレイジを捕まえて戻ってきた!
デビル:「知り合いモケ?」
エミ:「うん。でも礼二君はただのお友達なんだけど。」
レイジ:「がーん!」
デビル:「いや、恋人キャッチャーに間違いはないはずモケ。」
エミ:「なーんだ。せっかく楽しみにしてたのに。」
レイジ:「おうエミ、イチゴ持ってきたんだけど、食うか?」
エミ:「あ、食べる食べる。ありがとレイジ君。」
満面のエミの微笑にレイジは一瞬ボーっとしてしまった。
デビル:「モケ・・・相手の方は本気モケ。お似合いだし、まあいいか。」
エミ:「デビル頭巾さんも一緒に食べます?」
デビル:「おお、なにやらおいしそうな果物もケ!」
エミ:「ところで、何でレイジ君捕まえてくるかなー。しっかりしてよね。」
デビル:「いやぁ、申し訳ないモケ。」
まあいいか。次の願いで魂ゲットできるし。
ここはひとつ、相手の機嫌を損なわずに・・・。
ついでに今きた野郎の魂もゲットしちゃおっかなー♪
エミは先ほどせんべいとお茶を置いたテーブルの上に、イチゴを乗せた。
デビル:「なかなかおいしいモケ。ここはいい国モケ。」
エミ:「レイジ君のうちは自宅でイチゴ育ててるのよ。摘み立てだからおいしいでしょ。」
デビル:「あ、お茶のお変わりなんかいただきたいんですけど。」
エミ:「ええ、どうぞ。」
レイジ:「・・・」
エミは部屋の電気ポットから急須へ湯を注ぎ、3人分の湯のみにお茶を入れだした。
エミ:「レイジ君、ボーっとたってないで、そこに座ったら?」
レイジ:「え、エミ、おまえ、おかしいと思ってないのか?自分の行動」
エミ:「ぜんぜん」
デビル:「(ん、ひょっとして、野郎の方は鋭い方か・・・?)」
レイジ:「って言うか、何で湯のみ3つなんだよ!」
エミ:「だって、私とレイジ君と、それからここにもう一人デビル頭巾さんがいるじゃない?」
レイジ:「(や、やべえ、エミの方は完全にいっちまってる・・・。)」
先ほどクレーンでエミの部屋に侵入したレイジは、
エミの部屋の奇妙な光景にわが目を疑った。
なんと、エミの向かいには紫色の頭巾だけが中に浮いているのだ。
しかもエミはその頭巾相手に楽しそうに話している。
湯のみがひとつ、宙に浮いている。
レイジ:「(やべえよ。俺って霊感強い方だからさ。って言うか、何とかしてエミの目を覚まさないと・・・。)」
ふと、レイジの目にエミが今日拾ってきたはんだごてが目に入る。
そのはんだごては、コンセントに接続されていて怪しく紫色に輝いている。
レイジ:「あれだ!」
レイジはエミが入れたばかりのお茶を、はんだごてに向かってぶちまけた!
エミ:「!レイジ君!」
デビル:「あーーーー!!!しまったモケ!」
エミの目の前にいたデビル頭巾から白い煙が湧きあがり、どんどん姿を変えていく。
エミ:「れ、レイジ君、何これ?」
レイジ:「決まってんだろ、お化け!悪霊!そんじゃなかったら・・・」
デビル:「くくっ、失敗モケ!」
煙がだんだん一つにまとまってゆき、頭巾を中心に新しい形を作っていく。
その形は、基本的に先ほどエミが見ていたものと大して変わらなかったが、
肌が異様に青白く、蝙蝠のような翼と尻尾が生えていた。
レイジ:「なんだてめぇは!エミに手出してみろ、ただじゃすまねえぞ!」
デビル:「我はずきんの国よりの悪魔の使者、デビル頭巾。この世に混沌と破壊をもたらすために来たのさ。」
レイジ:「良くわかんねーけど、かってなことさせねえぞ!」
エミ:「レイジ君、なんかあの人変。」
レイジ:「どーしておまえは気がつかないんだよ。」
デビル:「我々がこの世に肉体を持つには触媒が必要だったが、家電製品は水に弱いせいで失敗したわ。」
エミ:「家電製品をそんな悪いことに使うなんて!」
デビル:「おまえらは運がよかったな。触媒がない以上はここに長くは居れん。国に戻って出直そうとしよう。」
すると、デビル頭巾からまぶしい光が放たれ、レイジとエミは思わず目をつむった。
光が収まるころにはデビル頭巾も、そしてあのはんだごても、きれいに消えうせていた。
エミ:「レイジ君、あれなんだったんだろう」
レイジ:「さあな。それよりエミ!」
レイジはがしっとエミをつかんだ。
レイジ:「おまえはもう、ボーっとして!何かあったらどうするつもりだったんだ!」
エミ:「レイジ君が助けてくれるんでしょ。」
レイジ:「え(ドキ)」
エミ:「・・・もう一回、「エミに手を出したらただじゃすまねえぞ」って、言って欲しいな。」
レイジ:「(心拍数上昇)」」
エミ:「えへへ。ただの友達なんかじゃないよ。レイジ君は。」
レイジ:「エミ・・・・」
そのまま二人は見つめあっていた。
エミ:「あ、そうだ!レイジ君にパソコン見てもらうんだったっけ。」
エミはレイジの腕をするりと抜けて机の上のパソコンへダッシュしていく。
レイジ:「(がーん。何かせっかくいい感じだったのに。)」
エミ:「どうしたのレイジ君。」
レイジ:「い、いや、何でもねえ。」
すっかり素のままのエミに翻弄されているレイジであった。
レイジ:「俺って本とはただの友達なんじゃないだろうか・・・(― ―;)」
もう何が書きたかったんだか。