不死
不死

 「博士どうしたんですか?」
 私は一人苦悩している博士を見つけ、そっと声を掛けた。
 研究も順調に進み、何も困ることはないはずなのに。
 どうしてそんな悩んでいるんだろう?
 「あぁ、君か。実は、このプロジェクトの資金を国家から貰えなくなった……その上研究の停止を要請されたよ」
 「ええっ!?」
 私は目を丸くして驚き、大きな声を出した。
 そんな馬鹿な!
 博士のプロジェクトは国家の強い要請で始まったはず。
 それがどうして国家からのストップがかかるのだろう?
 「不死の研究が完成間近だというのに」
 「国家のバックアップが無ければ、どう資金を繰り出すかが問題なのだ」
 「民間の企業はどうでしょうか?」
 「私の研究は今や、国家を敵に回してしまった。そんなリスクを背負ってでもバックアップしてくれる企業はいるだろうか……」
 博士は柔らかな口調で、呟くように言っていたが、拳は小さく震えている。
 やりきれない怒りが心の中で渦巻いているに違いない。
 「私の研究は、ここでストップだよ」
 「そんな……」
 博士の肩ががっくりと項垂れた。
 私の力も徐々に抜けていく気がする……。
 不死は人間が追い求めてならないものではないのか?
 あんなに推奨してた博士の研究が何故今頃になって、中止なのだろう。
 「やはり私は納得できません!」
 私はついつい大きな声を出してしまう。
 博士はそんな私を見て、重い口を動かして中止になった原因を話し出した。
 「不死は確かに魅力的なモノだよ。しかし、人が不死になったらどうなると思う?」
 「人権問題やらなんやらですか?中止命令の原因は」
 「そうじゃない」
 「では!?」
 博士は本当に残念そうに、口を開いた。
 その答えは意外なモノで博士も私も考えなかった理由。
 「相続税だよ」
 「は?」
 「不死になったら、相続税が取れない事が政府が気付いてね。これ以上税の収入を減らしたくないんだと。まったく……国家の赤字にも困ったモノさ……」

戻る