| 博士と助手の研究なる日々
「この前の日本でのロケット打ち上げだが、まさか自爆スイッチが付いてるとは……」
「そりゃ、最悪のケースってのを考えての事じゃないんですか?博士」
「いやいや、そうじゃなくて。やっぱり自爆スイッチを押す時は『ぽちっとな』と言ったんだろうかなぁ……と」
「本気で言ってますか?それ」
薬品と器材があたり一面に存在している。元の広さが分からないくらいに。
あまり日のあたることのない、じめじめとした不健康な場所。
広いのか狭いのかはっきり分からないが、研究所などこんなものだろう。
「博士、コーヒー入りました」
1つしかない出入り口が開き、コーヒーの香りが薬品独特の匂いと交差する。
助手は手慣れた手つきで書類の山を避けて、コーヒーを机に置いた。
「おおっ!ちょうど良い所に!今回のクライアントからの依頼は『頭を撫でるだけで死人も生き返っちゃうぞマシーン』というもので……」
「んな物騒なモン止めてください」
「何を言うか!あんなヒゲオヤジが頭撫でるだけで300万円だそ?こっちは科学の結晶物なんだ。科学バンザイ!1回300万円はワシのもんだ」
絶対、この人の科学の情熱は違う方向に注いでいると思う。
助手の表情はゲンナリとしたものだが、博士の表情は嬉々としている。
こんな研究を依頼するクライアントもクライアントだが。
「他に、依頼はないんですか?」
「ない!」
胸を張って答える博士。
その行動には自信が満ち満ちている。
何が彼をそこまでさせるのか、その自信はどこから来るのかさっぱりだ。
「実家に帰らせて頂きます」
そう言い放ち荷物をまとめる助手の手を、慌てて博士は止めた。
同じ研究をする同士。やはり必要な仲間なのであろう。
「待ってくれ!君がいなくなったら…いなくなったら」
「………博士………」
「君がいなくなったら、コーヒーは誰が入れてくれるんだ?」
「やはり、実家に戻ります」
「ま、待ってくれぇぇぇ」
少しずつ寒くなってきた日々のなんでもない出来事だったという。
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