自動操縦 

 オートドライブシステムの開発によって車などの運転は格段に変わった。 
 車間距離、速度、運転など自動化になり、自動操縦が可能になっている。 
 もう、車に乗り込み、目的地と到着予定時間を言うだけで、ちゃんとその通りに動いてくれるようになったのだ。 
 運転手というか乗り手は、何もせずとも目的地に着いてくれる。 
 「便利な世の中になったものだな」 
 一人車に乗りつつ、そう呟く。 
 宙を回る人工衛星の信号により車は動き、制御されている。 
 交通渋滞などもう皆無に近いし、事故も機械の故障がなければ皆無だ。 
 運転技術など学ぶ必要もない。 
 前の車がブレーキを何らかの理由で起動させれば、瞬時に人工衛星からブレーキの指示が出る。 
 もし、それが無くとも車に取り付けられた小型カメラが、前の車の行動を察知してブレーキを掛けてくれるようになっていた。 
 人工衛星からのデータにより、混雑するような事がないように、車を誘導してくれている。 
 このオートドライブシステムを搭載していない車など、メーカー側も生産ストップ。 
 免許だって、18歳になって、役所に届け出るだけでもらえる。 
 「でもなぁ……」 
 俺はそのシステムを今は手放しで喜べない。 
 こんな画期的なシステムが俺を苦しめることになろうとは。 
 今まで快適に使っていたシステムが今は憎い。 
 「くそっ!なんで俺がこんな悩まなくちゃいけないんだ!」 
 ドン!と車の座席を叩く。 
 しかし、安全性を究極まで高めている車は揺らぎもしない。 
 「血圧が上昇しています。落ち着いてください」 
 車のスピーカーから流れる柔らかな女性の声。 
 今や車が体調管理まで心配してくれる時代なのだ。 
 頭が痛い。 
 こんなに悩むとは思わなかったなぁ……。 
 そんな事を思っているうちに車は会社の駐車場に着いて、いつもの場所で止まる。 
 「到着しました」 
 カタンとドアが自動で開く。 
 俺は重い足をゆっくりと地面に付けた。 
 「よぉ?アイディアは出たか?」 
 声を掛けられる。 
 振り向くと、そこには同僚の姿。俺と同じように困惑の表情だ。 
 「ダメダメ。ぜんぜん。新しいゲームをレースゲームにするなんて無理なんだよ」 
 「だよな……運転なんてもう誰もしてないからなぁ…………」 

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