ここにいない君へ
 

ここにいない君へ

 ここにいない君へ。
 君が居なくなってから、時間が幾度と無く過ぎた。
 一人の生活にもそろそろ慣れてきた次期だと思う。
 こんな報告を聞いても、君はなんとも思わないかもしれない。この言葉は届かないかもしれない。でも、筆を執った。
 僕は君を置いて、ふらりと旅に出かけた。
 観光地でもなんでもない、港町。潮の匂いは強いけど、慣れ始めている。今日も日差しが強く太陽が眩しい。
 春先の今、まだ日焼けする日差しではないと思うけど、海に反射する光の束は僕の目を焼き尽かさんばかりに輝いている。青く澄んだ海の波は、何も変わらず、繰り返し繰り返し続いていく。
 君はもっと賑やかな所が好きだったから、ココは面白くないと言うかもしれない。
 それでも、僕はココに一人で居る。
 繰り返される波をただ見ている。青く澄んだ空や海をただ眺めている。無気力になっている訳じゃないけど、そうしている事が僕にとって重要に思えるんだ。
 ポケットに君の好きだったメロディを忍ばせて。歌詞の内容は明るい内容ではないけど、アップテンポなメロディが好きと言ってたあの曲だ。その曲が幾度と無く繰り返される。
 僕はその曲を聞き飽きることなく聴いている。いや、耳に入っていないのかもしれない。ただ、流れているだけかもしれない。
 君はそういう音楽の聴き方は嫌いだと言ったね。でも、性格や好みってのはそんな簡単には治らないらしい。君はそんな僕をまた苦笑して見てくれるかい?
 君が居なくなった傷心旅行って訳じゃない。ただ、変わらないモノを見たかった。何事もなく繰り返される自然を見たいと思ったんだ。だから海に来てみたけど。
 あの頃の僕は永遠があるってを信じていたんだけどなぁ。
 ここにはいない君へ。
 僕はようやく一人で居る事に慣れてきた。君にはもう会える事もないと思う。それともあの空の向こうから僕を見下ろしてくれてるのかい?
 この旅行が終わったら、僕はまた僕の道を歩き始めるだろう。君の分も僕は歩き続ける。
 いつかは笑って君の事を話せる日が来るだろうか?君は僕を見守ってくれるかい?
 この言葉は届かないかもしれないけど、君に送りたくて筆を執った。
 ここにはいない君へ。
 もう会えないけど、僕は君の事を胸に抱いて、僕の道を進んでいくよ。
 君は過去を振り返るのは嫌いと何度も僕に言っていたからね………。
 今日も快晴だ。空と海の境界線ってのはどこにあるのかなぁ?

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