黒々とした……
黒々とした……

  「ったく。こんなにしやがって」
 苦笑とも微笑みとも見分けが付かない笑みを顔に浮かべながら、彼は私を見ている。
 私は思わず、彼の視線にビクリと身をすくめた。
 なんだか私の弱みを握ったようなそんな意地悪い視線。
 「こんなぬるぬるにしちゃって」
 「や、やだぁ。触らないで」
 「どうして?」
 「どうしてって……汚いじゃない」
 「でも、こんなにしたのは君だろう?」
 意地悪そうな彼の目線。
 手はそれでも黒々とした筋をさすっている。
 確かに、こんなにしたのは私の責任だ。
 でも……
 「や、やめてよ」
 「これだけぬるぬるになるまでしておいて?」
 「…………」
 言い返せない。
 そう、ココをこんな汚したのは私のせい。
 これは私の責任なのだ。
 「うわぁ」
 彼はわざと強調するかのように言葉を発した。
 「こんなベトベトになったよ」
 彼はそこをさすっていた指を私に見せつける。
 その事実に思わず顔を背けたくなった。
 「触ってるだけじゃ解決しないな……よし!やるか!」
 「え?」
 「一緒にやってやるって言ってるんだよ。それとも何か?一人でする?」
 ぶるぶると首を振って否定した。
 こんな事を一人でするなんて空しい事はしたくない。
 彼の行為に甘えなくてどうするというのだろうか?
 彼のご機嫌を損ねないように、上目遣いに彼を見る。
 「ったく。タイルをこんなカビだらけにしやがって……真っ黒だぜ」
 「ごめんってば。洗剤とスポンジ持って来るよ」
 私は急いで洗剤とスポンジを探しに汚れた風呂場を飛び出した。

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