毎日 それは変わらないけど変わっていく日々
毎日 それは変わらないけど変わっていく日々

 願わくば明日の私は今日の私より素晴らしい人でありますように
 願わくば明日の私は今日の私より素晴らしい人でありますように
 願わくば明日の私は今日の私より素晴らしい人でありますように
 願わくば……願わくば……願わくば……願わくば……願わくば……願わくば……願わくば……
 その言葉を何度口にしただろう。麻薬のように私はその言葉を繰り返し繰り返し唱える。そして、明日への活力へと変えるのだ。
 そう、これは私だけのおまじない。

 朝はいつだって同じ時間に、でも突然に訪れる。目を開ければ、もう朝。それはいつ終わってもおかしくない不安定さと、いつも変わらないであろう安定性の微妙なバランスで出来ている。
 今日も変わらない朝を迎える事が出来た。これはどんなお金を払っても必ず得られるモノではない。この朝はお金で買えるものではないんだ。
 そう思うと、窓から入ってくる日差しが神々しく見えるから、私も現金。何も変わらない朝。それは朝が変わったというよりも、私の見方が変わったのだ。
「こら! もう朝よ。起きて学校行きなさいよ」
 ドアの向こうでお母さんの声が聞こえてくる。いつも通りの時間。いつも通りの言葉。そしていつも通りの声。
「はぁい、分かってる」
 私はいつも通りの返事をして、ベッドから抜け出し、いつも通りの制服に手を通す。
 鏡に自分の顔を映し出すと、髪の毛に寝癖が付いている。
「ムムム、これは直すの大変だぞ」
 鏡の前で唸って寝癖が直れば、寝癖直しのヘアートリートメントなんか売れる訳がない。資生堂もポーラも花王もDHCやマンダムやオルビス、MENARD等々が儲かるはずがない。
 お気に入りの寝癖直しを髪の毛に吹き掛けながら、ブラッシングをしていく。
 あぁ、髪が短いって便利だよね。私も短くしちゃおうかなぁ。
 毎日考えるだけで実行には移さない。だってせっかく長くして手入れもしっかりしてるんだから。切るなんて勿体ない。更に、切れば友達から絶対「失恋?」とか聞かれるに決まってる。特にトモミあたりが怪しい。まだ私は彼氏とラブラブだってぇの!
 げっ! 枝毛。最悪だぁ。
 見付けたく無いモノを見付けてしまった。はさみで枝毛を処理。
 最近シャンプーを変えたのがまずかったかな? 私にはやっぱりDuveよりmod'shairの方が合ってるかも。でもアレ近くに詰め替え用売ってないんだよね。容器がかさばるし値段もそれなりにする。あぁ、高いってのはそれだけの効果があるって事かなぁ。
 そんな事を考えながら、ブラッシング終了。枝毛を見付けた以外は良く出来ている。寝癖もすっかり直った。
 毎日こう素直だといいんだけどね。寝癖。
 鏡で最終チェックをしながら、髪の毛を見直す。
 うん。OKOK。
 自分の部屋を後にして、トイレと洗面所。
 洗顔を手にすると、残りわずかだった。そう言えば買い置き買ってない。今月厳しいのにー。ワンランク落とすと、肌に合わないらしく、つっぱる感じがするから、私はコレじゃないと駄目なのに。くそー。神様ってのはいるのかな?
「早く仕度しなさい。そんな鏡ばっかり見てたって変わらないわよ」
「そりゃ、お母さんの娘ですから」
「どういう意味かしらねぇ? 朝ご飯抜きで学校行く?」
「嘘。嘘ですー。お母さん今日キレー。ね! お父さん」
 ピンチになったらお父さんに話題を振る。これが一番の逃げ道。お父さんは新聞から目を離してお母さんを見てにっこり微笑む。
「うん。母さんは美人だからなぁ。今日も綺麗だよ」
「お、お父さんったら」
 まんざらでもない表情をして、お母さんは照れながらお父さんを肘でつつく。あんな台詞を吐くお父さんもお父さんだが、それに照れるお母さんもお母さんである。
 あぁ、幸せな家庭。私もそんな二人を見て呆れるがうらやましくもある。
 今の彼氏とあんな風にいつまでもいれるかな? なんかアイツ浮気しそうだなぁ。
 ちょっとブルー入りながら、テーブルに付くと、お母さんがトーストとハムエッグ、それに紅茶を目の前に差し出す。紅茶のいい匂いが朝食だぁって感じる一時。
 ダイエットをしてる訳じゃないから、いつも通りの朝食を取って、
「ごちそうさま!」
 とキッチンを後にする。お皿とコップは水に浸けておけばお母さんが洗ってくれる。お母様様だ。
 部屋に戻って、また鏡の前に座る。手元にはしっかり鞄を置いておく。中身は昨日のうちに入れ替えてある。
 あとはバレない程度のナチュラルメイクでカンペキ。
 あまりやりすぎると、ガッコで怒られるから、ばれるかばれないか程度の境界線を考えながら化粧をする。すっぴんで行ってもまぁなんとかなるけど、やっぱり綺麗でいたい。
 乙女心ってやつですか? まぁ、そんなんだから、化粧メーカーとかの売り上げに貢献してしまっているのだけど。化粧メーカーはある意味天使だが、財布からすれば敵だ。
 あ! そうだ。洗顔買わなきゃ。今月あといくらあったっけ?
 ううっ。ぎりぎり。
 今月は赤字になりそう。ううっ。欲しいカバンの為に貯金してるのに。
 世の中お金ですよ。お金。はぁ。
 財布の中を見てると寂しくなるので、鏡を見て笑う。
 笑顔、笑顔。
 その笑顔はきっと昨日の私よりも可愛く笑っていられるだろうから。
 いつも唱えているおまじないの通りにね。

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