追われるモノ
追われるモノ

 はぁはぁはぁはぁ。
 奴は迫ってきていた。
 逃げたくても逃げられない衝動。
 自由になりたいという衝動。
 このクリスマスにまで追われるとは、俺もしけたもんだ。
 現実から逃げる事は出来ない。そう、俺は逃げられないのだ。
 弱みを握られている?それもあるかもしれない。
 が、奴は確実に俺をじわじわと攻め立て、俺の逃げ道を無くしていく。
 出来る事はただ一つ。
 前へ前へと進む事。
 挫折も諦めも弱音も逃避も出来はしない。いや、出来る。だが、その後の自分がどうなるかを考えれば、俺の選択肢は『前に進む』しかないのである。
 頼む!もう止めてくれ!
 叫び逃げ出したい気持ちをぐっと堪え、俺は前を見据えた。
 果てしなく続くように思える白い光景。
 この光景はいつになったら変わるのだろうか?また変えられるのであろうか?
 白い中をたださ迷っているかのように見えるかもしれない。
 人は俺を見て笑うかもしれない。
 が、真剣なのだ。これ以上にないくらいに。
 今後の未来が関わっているかのように。
 誰も助けてはくれない。
 助けてくれるとしたら、片手に持っている本のみ。
 心もとないが、それしか味方はいない。
 あれだけ笑い合った友人も、あれだけ信頼していた人も助けてはくれない。
 自分の力で這い出るしかないのだ。
 奴は無情にもどんどん近付いてくる。
 この聖夜、クリスマスにも関わらずに。
 俺は爆発寸前の状態である。
 叫びたかった。もう限界である。
 「あぁぁぁぁぁぁ!絶対に明日までにこのレポート終わんねーって!あのくそ教授」
 俺は真っ白な原稿用紙の上に倒れ込んだ。
 手から参考資料の本とシャープペンシルが転がる。
 締め切りぎりぎりまで放って置いた俺も俺だが、さすがに1日でA4で5枚は辛い。
 自業自得。
 そんな言葉を思いながら、クリスマスは締め切りという魔の手から逃れる事が出来ずにいた。
 レポートの締め切りは段々と近付いてきている。逃げる事は出来ないのだ。
 これには単位という俺の未来がかかっているのだから……。

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