ニコニコテレビショッピング

ニコニコテレビショッピング

 それは、肌寒く感じる冬の出来事だったと思います。
 え?まぁ、私もどうも記憶がはっきりしないというかさせたくないというか……。
 思い出すのもちょっとアレなんですけど、皆さんにお話します。

 「こんばんわ!今日もお買い得商品が目白押しですよ」
 いつものコメントで始まるこのテレビショッピングの深夜時間。
 1番始めに紹介するのはデジタルカメラだった。限定30台の。
 毎度思うのだが、こんなの本当にお買い得なんだろ??
 「まずはデジタルカメラの紹介です。えっと担当の木下さぁん」
 本当なら、ココでちょっと優男っぽい男の人が登場する予定だったハズ。
 が、どこをどう間違えたのか現れたのは変な人。
 「この華麗な筋肉を見るのじゃぁぁぁぁ!!」
 ………
 ……………
 ………………………………。
 しばらくの沈黙。
 生番組だったわよね?これ。
 その現れた変な人は決めポーズを1カメの目の前でしている。
 「あ、あのぉ、どちら様でしょうか?」
 「今日のワシの三角筋は輝いておるぞぉぉぉ!!」
 人の話を聞いてはいない。
 TVディレクターも呆然としている。
 私はどうすればいいか、おろおろするばかり。
 「次はこのポーズ!!ダブル・ハイ・セプスっっ!!」
 ワセリンでテカテカと嫌に輝いている筋肉が暑苦しい。
 だから、この人何なの??
 「あ、あのぉーーー」
 「今日の商品はコチラじゃぁ!筋肉を美しく保つスバラシキビデオ。『兄貴と共に!!』を紹介じゃぁぁぁぁ!」
 そんなの誰も買わないわよ。
 一人冷静にツッコム自分が悲しい。
 だから、生番組なんだってば。
 「今なら、ワシの愛用プロテイン(バナナ味)を10袋セットにして…」
 「ちょっと、勝手な事をしないで下さいますか!」
 気持ち悪かったけど、彼の肩に手をかける。
 いやぁぁ。筋肉で固いぃぃぃ。
 「ぬぅ!お主!」
 「は、はいぃぃぃぃ」
 泣き出しそうになってしまった。
 だって、こんな筋肉ムキムキの人に睨まれているんですもの。
 失神しそうになるのを必死にこらえた。
 「お主もこの華麗なる筋肉の素晴らしさが分かるか!そうかっっ!!」
 だ、誰もそんな事……。
 「ディ、ディレクター」
 助けを求めようと、ディレクターを探すと、そこには、別の筋肉男にボディブローを食らって倒れ込むディレクターの姿が。
 だ、だめ……。
 絶望感。
 そして、ディレクターを気絶させた男がエールを送ってくる。
 「兄貴、最高じゃぁ!二等腕筋が素晴らしすぎじゃぁ!!」
 「そういうおまえも、鎖骨大等筋が素晴らしいぞぉぉぉ!!」
 その2人組みは、番組などそっちのけで、ポーズを取り合う。
 汗臭さが素晴らしい程、私の頭を混乱させた。
 「兄貴、素敵じゃぁ!」
 「まだまだ、ワシの実力はこんなものではないぞぉぉっっ!」
 私は、そんな二人のポーズを見ながら意識が遠くなっていくのを感じた。
 そして、その後の事は良く覚えていない。

 ただ、後日、視聴率と、問い合わせの電話が殺到したことだけは覚えている……。

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