私闘!
私闘!

 私は相手の目をじろりと睨んだ。
 相手はにこりとした笑顔を絶やさないでいる。逆にそれが私には恐ろしく感じた。まるで、私との戦いをなんとも思っていないようである。
 この相手とは、もうかれこれ3時間くらい戦い続けているだろうか?
 私も相手も疲れがピークに達している状態だ。もうどちらが負けを認めてもおかしくはない状態が続いている。
 さすがは、ここのボス。なかなかしぶとい。しかし、私は負ける訳にはいかない。
 この戦いに勝たなければ私に明日の……。
 そう思うと、たまらなくなって私はぎゅっと拳を握り締める。
 なんとか勝たなければ、と思うものの、私の手の内がなくなりつつあるのも事実である。もう3時間も戦っているのだ。もう打つ手はほとんど無い。
 そんな焦っている状況が分かるのか、相手は笑いを絶やさず私を見ていた。その笑いが偽物であるのは、重々承知だ。
 その笑顔を壊してみたいとさえも思う。その偽物を壊してみたいと。
 私は額から流れる一筋の汗を腕で拭った。かなり体力的にも精神的にもマズイ状態。
 相手も笑顔を絶やさないでいるが、時折疲れたような表情をちらりと見せる。
 疲労困憊なのはどっちも一緒……でもこのしぶとさはっ!
 相手も色々な物を背負って私と戦っているのだ。負ける訳にはいかないのは、私と同じのように思える。
 関係的に言えば私の方が上。しかし、そんなことはここではあまり関係無い。
 私の言葉を、苦笑いを浮かべながら躱している。その苦笑いを見る度に、私の手の内が少なくなっていくような感じがしていた。
 ここでウダウダしていても仕方ない。
 そう思うと、私は最後の攻撃を放った。
 「本当にもう少しまけられませんか?消費税くらい
 「これで精一杯ですよ。赤字ギリギリでこちらも商品を販売させて戴いておりますので…」
 店長の打つ電卓の数字は一向に変わってはくれなかった。
 液晶画面に映し出された変わらないその数字を見て、私は敗北を感じた。
 やっぱりこれ以上は安くならないか……。
 店長の営業スマイルもピークである。これくらいにしないと店長にも悪い。
 「分かりました。その商品、その値段で買いますよ」
 「有り難うございます」
 私は硬く閉じている財布の口をゆっくりと開く。
 店の外はもう、すっかり夕暮れの朱色に染まっていた。

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