ナカイの事実
ナカイの事実

 ここはサンタさんの総合支部。
 12月となると師走との言葉の通り目を回すほどの忙しさ。
 今はかき入れ時でとても忙しいのです。
 これは、そんな時に飲んだくれているトナカイさんのお話です。

 「あー畜生」
 トナカイはそう呟いてテキーラを飲み干した。
 身体の真から暖まるような強いアルコール。
 「お客さん、そんな飲み方身体に悪いですよ」
 「うるさい!この時期働けないトナカイの気持ちなんて分かるか?」
 確かに分からないであろう。普通。
 マスターは苦笑を浮かべるしかなかった。
 しかし、この時期暇なトナカイなど珍しい。
 今の時期はサンタとプレゼントを運び、忙しいはずである。
 「お客さん、良かったら話してくれませんか?」
 マスターは少しの興味本心からそう切り出した。
 相手は酔っ払い。
 ここぞとばかり愚痴を始めた。
 「俺は、去年まではイギリス国内を飛んでいたんだ。そりゃ充実した日々だったさ」
 ぐいっとテキーラを飲み干すトナカイ。
 すでに出来上がり状態である。
 「それが今年から上司命令でオーストラリア地区担当になったのさ」
 「はぁ。オーストラリアでも頑張ればいいじゃないですか」
 マスターのそんな気楽な返事に、トナカイはきっと睨んだ。
 ドン!と強くコップをテーブルに叩き付けて。
 幸いグラスは割れていなかった。
 「分かってないな!オーストラリアって言ったら12月は夏なんだ!サンタはサーフィンをしながら来ると信じられてんだよ!」
 そう、北半球と南半球では季節は逆になる。
 つまりオーストラリアの12月は真夏。
 サンタさんは海パン履いて、サーフィンをしながら登場と相場が決まっている。
 そこにトナカイの意味はない。
 「なんて言うの?窓際族?やんなっちゃってさ」
 「お客さん……」
 「へへへ。クリスマスに仕事がないトナカイなんてつまんないもんさ」
 その話を聞いて、マスターは黙ってトナカイの持つグラスにシャンパンを注いだ。
 はっとトナカイはマスターを見つめる。
 「とことん飲みましょうや。これは私のオゴリですよ」
 「マスター……」

 その後、このトナカイは朝方までマスターと飲み明かしたという事です。
 帰りがけには、鼻が真っ赤になっていたそうですよ。
 そこから、彼はまた配置転換で日本を担当する事になるのですが彼の酒好きは直らず、鼻はいつも真っ赤なんだそうです。
 トナカイさんの鼻が真っ赤なのはお酒と苦労の証なのかもしれませんね。

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