赤い糧

作 . なばる野のぐそ

 ナバールは守備力が上がらない。非常に上がりにくい。
アリティア軍率いる王子の僕としてはとても気になることだ。あんまり気になるので恋かと思ったほどだ(本当に恋かもしれない)。
 守備力が低いまま高レベルというのは困る。他の者に経験値が欲しいのに、敵がナバールに集中してしまうのでナバールが敵のアイドルになっているのかと思ったほどだ(本当にアイドルなのかもしれない)。
 僕はナバールの守備力を上げる為に最善を尽くすことを決意した。




 そして最善を尽くすこと数日間。
 恋の執念にも似た僕の「ナバールの守備力上げ」への熱意に、ついに運命の女神が折れる時がやってきた。
 ナバール、勇者レベル十五にして守備力十四。
「王子。やりましたな。」
 一つの戦いを終え、皆で一息をついている頃、ジェイガンが祝いの言葉をかけてきた。
「いや、正直言いましてナバール殿がここまで守備力を上げるとは思いませんでしたよ。勇者で十四まで上がるとは素晴らしい。王子もやっとこれで他の事に専念出来ますな。」
 僕はジェイガンの祝いの言葉は快く受け入れたが、最後の言葉に対しては否定した。
 ナバールはまだ成長する可能性がある。守備力もまだ上がるかもしれないのだ。
 たしかに、十四まで上がれば十分だと最初の頃は僕も考えていた。だが今は新たな野望が僕の中に芽生え始めている。
「そんな、王子。他の事を犠牲にしてまで、何故そこまでナバール殿の守備力を上げる事にこだわられるのですか!」
 ジェイガンにはすまないと思っている。だが僕はどうしてもやりたいことがあるのだ。




 そして、ジェイガンを泣かすこと数日間。
愛の呪いにも似た僕の「ナバール守備力上げ」への熱意に、ついに運命の女神がシャッポを脱ぐ時がやってきた。
 ナバール、勇者レベル二十にして守備力十七。
「王子。私はもう何も申しません。」
 ジェイガンが言った。
 放っておけば一度も守備力の上がらなかったナバール・・・・。僕が育て上げた。僕の手で育ちにくいところを見事に成長させた。まるで僕が親で、子供だったナバールを大人にしたようではないか。大人に・・・・。
 僕は満足と歓喜の中で、「どうしてもやりたいこと」をこれから実行する。
 僕は顔を紅潮させながら叫んだ。

「みんなっ!赤飯を炊いてくれ!!」




めでたし   
めでたし。



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