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2.村人LV1 「お引き取りくださいマルス王。私はもう傭兵ではありません。今はただの村人なんです。」 タリス島の小さな家の庭で、白いユリの花に水をやりながら、すっかり老け込んだオグマが言った。 「な、なんだってぇ!?王自ら供を頼みに来たのに行けないだとぉっ。」 僕は怒ってオグマが水をやっている鉢を叩き落した。 「あっ、なんてことするんですっ!『スウィート・ナバール』が、『スウィート・ナバール』が折れてしまう……。」 オグマ……お前……。 僕がわざわざタリスへ足を運んだのは、例の盗難のせいだった。 カインが持ってきた「こんなもの」には、裏にも文字が書いてあったのだ。それはマリクからのメッセージだった。
いつの間にカダイン王になったのかは知らないが、マリクはこう書いていた。 突然何なんだ。 マリクもひどいと思うが、アリティア国の連中はもっとひどかった。 マリクのメッセージを読んで、連中の言ったことなんてこんなんだっ。ちょっと読んでくれ。シナリオ風にしてみたぞ。
何かが……何かが違うと僕は思った。思えば僕がメディウスを討たなかった、そのときから何かが狂い始めたのだ。 とにかくカダインに行かねばならなくなった。シーダの助言で、各地の強者をスカウトしてから、それをお供にカダインに向かうつもりだった。シーダは言った。別に殺されに行くことはない。強者を連れて行って、おどすか戦うかしてくるのです、と。シーダありがとう。でも行くなと言ってくれる方がもっと嬉しかった。 と言うわけで、最初にタリス島の強者オグマを訪ねたわけだが……。この男一体何があったんだ。 「ああ……。スウィート・ナバール……葉が一枚折れてしまった。」 僕がオグマの情けない様子に呆気にとられていると、隣の家から一人の老人が出て来て僕にこう言った。 「お若いの。オグマさんはそっとしておいてもらえんか。オグマさんは三年前にちょっと辛い事があっての。それ以来、ワシより心が年寄りになってしまったんじゃ。」 僕は聞いた。 「三年前に何があったんですか?」 老人はニヤリと笑った。 「聞きたいか?お若いの。」 「勿論聞きたいです。」 「お若いの。お若いが年はいくつかな?」 「19歳です。それが何か?」 「良かったのう。この話は18禁じゃ。」 老人はそう言うと、棒についたアメを差し出した。 「聞くならば、ホレ、アメの一本でも買わんと気分出ないじゃろ。」 僕はよくわからないままにそのイチゴアメを買わされた。 「ちょっと待っていなされっ。」 老人はそう言うと、一度家に戻り、それからゴロゴロと言う音を立てて一つの物を引きずって来た。 「この話は絶対紙芝居でやると決めておるのじゃ。ほーれ拍手、拍手ぅ。アンタ、せっかくアメ買ったんなら食べなさいよ。」 老人はレトロな感じのする紙芝居の台を僕の前に置いた。 一枚目にはまだ絵は無く、「オグ×ナバ紙芝居」とだけ書かれている。 僕はアメを食べながら聞いた。 「『オグ×ナバ』って何ですか?」 「オグマとナバールの略じゃ。」 ナ、ナバールだとぅ!?なんでここにナバールが出てくるんだ。 僕が動揺しているうちに紙芝居は始まった。 「オグ×ナバ紙芝居の始まり始まりぃー。」
僕は驚きのあまり、舐めていたイチゴアメを飲み込んだ。幸いアメには棒が付いていたので、僕はもう一度それを取り出した。 僕がアメを引き出している間に、老人は紙芝居の紙を替えた。ここで初めて絵が出る。 「お?」 僕はちょっと喜んだ。 そこには繊細なタッチで描かれた美しいナバールがいた。ベットに横たわって寝ている。落ちたときにでもケガをしたのか、右腕と右足に包帯を巻いている。布団は申し訳程度にしかかかっていない。 僕は抗議した。 「ちゃんと布団かけてやってくれ。」 「でも美しいじゃろ。その演出。この絵、ワシが描いたんじゃ。誉めてくれ。」 うん。確かに美しいがな。 布団がかかっていないせいで、足がむき出しになっている。ズボンも穿かせてない。腰のあたりをビミョーに衣服が隠してるのがニクイ。
僕はアメを食べながら、じゅるじゅると泣いた。
「げえっ。」 僕は思わず王らしからぬ声を出した。(「今更何を……」なんて言うなよ。) 新しく出てきた絵には、オグマがいきなりベットの上のナバールに覆い被さるところが描かれていたのだ。 思わずアメを地面に落としてしまった。
「オグマさんが覆い被さって、既に興奮し始めているときにワシが話した。」 「こんなカワイソウな事になるのわかってるんなら、言わなきゃいいじゃないかっ。」 「ワシ、律儀なんじゃ。」
「本当なんじゃよ。『それ以外では受け取らん』と言われた途端にどーゆー訳か……。」 そういえばナバールって変に律儀なとこあったんだよなぁ……。でもあの誇り高い人が……なんてことだ。 「この紙芝居はここからがええんじゃよ。」 老人は絵を替えた。 「うわぁぁ……。」 新しい絵を見て僕はよろめいた。
「やおいはの。常体のほうがカッコイイんじゃっ。」 カッコイイって言ったって……おい。
僕は老人の語りをなるべく聞かないように努めた。しかし断片的にやっぱり聞こえて来る。
「お、お若いの……。いいところですのになぜ殴るのじゃ……。」 「お前がナバールの喘ぎ声を演じるなんて許せんからだ。それに大体何故お前がそんなに詳しく知っているんだっ!今のなんかウソに決まってる!」 「のぞきましたのじゃ。」 「え?じゃ、じゃあ本当のことなのか?今の全部……?全部ホント?声とかも……?」 「ホントーですじゃ。お隣のよしみでのぞいていたわけですじゃ。」 「……。」 「続きを聞きたいじゃろう。」 「…………うん。」 |