キルソードの♪と・き・め・き♪作。なばる野のぐそ俺はキルソード。 武器屋で売られている。 仲間達は次々と売られてゆく。特に今日はアリティア軍が来ているとかで、武器屋のオヤジは忙しそうだ。 アリティア軍は戦っている最中らしく、皆急いで買い物をしていく。 さっきも「王子」なんて呼ばれているガキ(多分アダ名だろう)が血相かえて高い銀の剣を四本も買い、馬よりも速く(変なブーツを履いていた)走って行った。外で仲間に剣を配っているような声が聞こえたから、きっとあのガキは使いっぱしりなんだろう。 「今日は銀の剣がよく売れるなァ・・・・。」 店のオヤジが勘定しながら言った。そういえば他のものがあまり売れてない。キルソードの俺としてはちょっと面白くないが、店のオヤジは高価な商品が立て続けに売れるのが嬉しくてたまらない様子だ。 「銀の剣がウチで一番いい剣だもんなァ。皆さん安物なんか使っちゃいけませんぜ。うへへへへ・・・・。」 うへへじゃねえよっ。俺だっていい剣なんだぞ。ちくしょう。高けりゃいいってもんじゃねえや。 人(剣だがなっ)の気も知らないで店のオヤジは銀の剣ばかり綺麗に並べ直していやがる。こっちの方がぐちゃぐちゃだぞ。ちっとは気にかけろっ。おいっ! もうこんなオヤジの店には居たくない。早く誰かが俺を買って行ってくれないだろうか。俺の真の価値をわかる客なら尚嬉しい。 「おっ、馬がウチの前で止まったぞ。ソシアル・ナイトのお客かな?」 店の入り口に現れたのは赤毛の若者だった。 「いらっしゃい。何にいたしやしょうか。」 赤毛のソシアル・ナイトは「フフッ」と笑うと店のオヤジに流し目を送った。なんだコイツ。ウチのオヤジなんかに気があんのか!?と思ったが、どうやらクセらしい。 「そうだね。僕に似合う剣、ある?」 赤毛のナイトは戦場に似つかわしくない甘い声で言った。 「はあっ!?似合う剣!?」 オヤジは目をパチクリさせた。そりゃそうだろう。こんな事言う客は珍しすぎる。何考えてんだコイツと思って流し目男の顔を俺はまじまじと見つめた。あ、結構可愛い顔してやがる。ちょっと兵士にしては頼りない感じがしなくはないが、顔が悪い奴より良い奴の方が買われるのに良いかも知れない。よし、流し目。お前でいいから俺を買ってしまえ。俺は早く店を出たい。 「似合う剣ねぇ・・・。銀の剣なんかどうだい?人気あるよ?」 あーあ。また一番高い物売りつけようとして・・・。 「銀の剣?うーん。キレイだけど・・・ね。それ、重いんだよね。」 珍しく銀の剣を嫌っている。やったぜ。 「重いったってアンタ・・・。それよりずっと重いデビルソード振り回してるペガサス・ナイトはアンタより若くて華奢な女の子だったよ。」 流し目は「えーっ?でもォ・・・。」なんて甘ったれた声を出しやがった。武器屋のオヤジに甘えてどうすんじゃっ。俺は流し目男に買われたいという気がすっかり無くなった。 「シーダ王女はデビルソードが好きなんだよね。」 あれ王女だったのか。すごい客だったよな。 「でも僕はぁ、やっぱり軽いのが・・・。」 軽いのがと言ってから間を置き、その後流し目をオヤジに送りながら「イイな。」と愛らしくその男は言った。いいかげんそのクセやめろ。 オヤジも変な客に早く帰ってほしいと思ったらしく、男が気に入りそうなものをと店内を見回した。 あ、やな予感。 あっ、よせ、やめろ! 「お客さん。キルソードなら軽くておまけに必殺もよく出ますぜ。」 オヤジは壁にかけてあった俺を外して流し目に手渡した。流し目は俺をいぶかしむように撫で回した。気持ち悪いよう。 「これ、間接攻撃できる?」 またもや流し目をしながら男は聞いてきた。 出来る訳ねぇだろ。俺はキルソードだ。 「直接攻撃って・・・、僕、恐いんだもの。」 ・・・・そんなんでよくここまで生き残れたなコイツ・・・。今日の客の中で部下の為に苦労するとグチりながら銀の剣買ってたターバン頭のソシアルナイトがいたけど、その部下ってこの流し目男の事だったりしてな。 オヤジは半ば呆れながら俺を元の位置に戻すと、今度は隣のサンダーソードを客にすすめた。 「じゃあコレは?敵の頭上から雷を落とすサンダーソード!」 「・・・感電しない?」 お前本当に兵士かっ!? 俺とオヤジが「いいかげんにしろ」と怒鳴りたい気持ちが頂点に達した時、鋭い怒鳴り声が外から飛び込んで来た。 「ロシェ!いいかげんにしろ!後がつかえてるんだ!」 流し目男は渋々サンダーソードを一本買うと、「感電しないかナー」などと言いながら店を出ていった。サンダーソードも気の毒に。達者でな。 流し目と入れ代わりに入ってきたのは髪の長い若い傭兵だった。 さっき怒鳴ってた奴だ。 流し目ほどじゃないがコイツもあんまり強そうには見えないなぁ。体は細いし顔は女みたいだし・・・。なんて事を考えながら客を鑑賞していると、いつの間にか間近に来ていたその客と目がバッチリ合ってしまった。 俺はその瞬間、ないはずの心臓が高まった。 なんという鋭い目だろう。そしてとても美しい。これは本当に人間だろうか。俺達の仲間ではないのか。彼の瞳は刃物のように輝いている。そして俺だけを今見つめている。 何故俺を?俺だけを? 彼も俺にときめきを感じているのだろうか。 感じている? 俺の心臓の高まりは熱湯の中でぐつぐつ煮えるシイタケのように狂おしくなった。 「いらっしゃい。何にいたしやしょうか。」 彼は誇り高き唇で迷わずに答えた。 「キルソード。」 恍惚。 ああ。 俺は彼のものになる。そう思っただけで体が熱くなった。 「へい、こちらですね。ん?なんだ?このキルソード変に熱いぞ?さっきの客が触ってたせいかなぁ・・・。」 う、うるせぇな。は、早く客に渡せよ。 「いつもの事だ。」 美しい傭兵は冷静に言った。 「俺に見つめられた剣はいつもーーーーー」 彼はそこでフッとうすく笑うと言葉を続けた。 「熱くなるのだ。」 ああ、剣殺し。 オヤジの手から彼の手へ俺が渡される瞬間、俺はひとつの熱い熱い「もうたまりません」といった想いに捕らわれていた。 俺の方へ差し出された白い指先に、俺は声にならない声でその熱い想いを強く訴えた。 『握ってくれよ。』 完っ。
|
© 1997 xx071999@tyche.dricas.com