マリクの太もも・3
ついに最終回!
作・なばる野のぐそ
[今までのあらすじ]
今までのあらすじ?そんなに過去にこだわ
って生きちゃあいけないよ。
僕は思い出を重要なポイントだけ押さえて
日記に書くことにしている。何が重要かだっ
て?そうだな。恨み言なんかは大切な事だね
僕は出来るだけ大げさに書くことにしてる
んだ。僕って執念深いだろ?
やあ、僕は太ももむき出しのマリクだ。
僕の新しい趣味、「魔法を食す」については知ってるよね?何?知らない!?ちゃんと「今までのあらすじ」を読んでよ。
それで僕が今一番食べてみたいのはガーネフの持っているマフーという魔法なんだ。でも僕って何でそんなものが食べたいのかな。気が知れないね。どっかおかしいんじゃないの?あ、ヘンタイだったんだっけ。あはは。僕マリク。ヘンタイ太もも見せ魔道士でぇす♪
「ちょっと待てっ!チェイニー!!」
そのとき、本当のマリクが現れて、せっかく変身して代わりに語りをやっているこの俺を攻撃しようとしたんだ。あれ?‥‥あっ。
しばらくお待ちください。
正真正銘のマリクであるこの僕は、今ガーネフのいるテーベの神殿に来ていた。
テーベの神殿。それは魔道士の晴れ舞台。
僕は王子からスターライトを手渡された。
王子は攻略本を朗読した。
「『このスターライトは魔法なので、レベルの高い魔道士か司祭に持たせて、ガーネフの相手をさせることだ。』‥‥マリク頼むよ。」
僕は心の中でニンマリと笑った。
相手をすればいいわけだ。相手をしさえすればいいわけだ。
僕は喜びに太ももをふるわせながら階段を踊りながら登り、やってくる敵を次々とエクスカリヴァした。そして遂にマフーもといガーネフと対面したのである。
「ふふ、小僧。このファルシオンが欲しいのか。だがお前にこのわしが倒せるかな?」
倒せるに決まっている。けれども僕が欲しいものはファルシオンではない。
「ガーネフ。これを見ろ。」
僕はスターライトをかかげた。ガーネフの顔色が変わる。
「僕はこの魔法でお前を倒すことが出来る。だが、お前が僕の言う事を聞いたら命だけは助けてやろう。」
側にいたリンダが「マリクさん、なんだか悪役みたい‥‥。」と呟いたが、この際そんなことは気にしていられない。
僕は左手でスターライトを持ち、空いた右手はガーネフの方へと差し出した。
「マフーをよこせ。」
テーベの神殿中にブーイングの嵐が響き渡った。ブーイングしたのは、事の成り行きを見守っていたアリティア軍の兵達で、敵は口をあんぐり開けたまま硬直していた。
「マリクーッ!話が違うぞーーっ!」
「その人食べるのよっ!マフーを食べてしまうつもりなのよっ!」
「ガーネフーッ!そいつにマフーを渡すなー!」
「そうよっ。そんな汚い脅しに乗ってはダメよッ!正々堂々と戦うべきだわッ!」
「ガーネフー!頑張れぇー!!」
「ガーネフ、ファイトぉ!!」
ブーイングは何故かガーネフ・コールに変化していく。
皆何故敵をそんなにまでして応援するんだ。ファルシオンなんかなくたってメディウスは倒せるのに(王子がもうバケモノ並に強いのだ。デビルソードでも大丈夫。)‥‥。
「赤コーナー。悪の司祭ガーネフ。」
声援が沸き起こる。
何故こんなことになったのか。神殿内にはリングまで設けられている。
「青コーナー。悪の魔道士マリク。」
なんで、なんで「悪の」なんだ。おまけに声援の代わりにブーイングされている。
あ。やめてほしい。そのパラパラパラってまばらな拍手。敵兵さんが同情して拍手している。よけいミジメになるからやめてください。
レフェリーはジョルジュが務めていた。
「これより、悪の大魔道対決を行います。」
なんだそれは。
「皆さん。どちらに賭けるかもうお決めになりましたか?」 トトカルチョするな。
「あ、マリク。そのスターライトは預からせてもらおう。」 僕は仰天した。
「な、な、な、なんでだ!?これがないとガーネフ倒せないじゃないかっ。」
ジョルジュは指をパチンと鳴らすと、ゴードンに哀愁漂うメロディーを「るるる」で歌わせた。BGMのつもりらしい。
「そのスターライトが何故ガーネフを倒せるのか知っているのか?マリク。」
知るか。
「さっき敵兵さんに聞いたのだが、スターライト‥‥それはガーネフの幼い日々に流した涙で出来ているのだ。」
涙?
「ガーネフは昔、不幸な子供だった。だがガーネフはその時流した涙を魔法に封じ込めることで強くなろうと決心し、数々の努力の結果、悪の大司祭になることが出来たのだ。」
後ろの方でペガサス三姉妹が泣き出した。ガーネフに同情しているらしい。
「悲しみを乗り越えたガーネフだが、そのスターライトを浴びると思い出してしまうのだ!昔の自分を!辛かった思い出を!そんなスターライトをガーネフに向けるなどという事は最低の行為ではないかっ!!」
ジョルジュは金髪を振り乱して力説すると、ほとんど強引に僕からスターライトをむしり取った。
ガーネフは「ではわしはマフーを預けよう」と言って自主的にジョルジュへ渡したので、アリティア軍が更にガーネフに同情し、僕の立場がますます悪くなった。
「二人が有効な魔法を預けたところで、平等に戦えるよう用意した武器をここで紹介しよう。」
アシスタントのゴードンが敵兵から二本の見慣れない剣を手渡され、リングの上に上がって行く。
「これはこの神殿が秘蔵していた特殊な剣だ。銀色の剣はマリクに。これならガーネフに攻撃を封じられることはないそうだ。しかも、ガーネフに対して大変な効果もあるらしい。」
へぇ、本当かな。
「黒い剣はガーネフへ。この剣については‥‥マリクは、まあ気をつけたまえ。」
それにしても魔道士が剣で戦うなんてひどい話だ。僕は力が1しかないんだぞ。ガーネフだって似たり寄ったりだろう。
リングの上では、前座だとか言ってレフェリー自ら何か始めるらしく、なにやらゴードンともめているようだ。
「さあゴードン。君なら出来る。自信を持ってやってごらん。」
「そ、そんな、あんな激しい歌、僕にはとても歌えません。一人では出来ないです。」
「では私が一緒に歌ってあげよう。それなら大丈夫だろう。」
「は、はい。」
何だか歌の前奏のようなものが流れ始めた。これってまさか‥‥。
♪弓をキリキリ
心臓めがけ
逃がさない
パッと
ね・ら・い・う・ち♪
山本リンダの『狙い撃ち』だった。ジョルジュは銀の弓、ゴードンはボウガン。それぞれのお気に入りを振り回しながらの熱唱だった。アーチャー系の考えてる事はよくわからない。
何でこんなことしているのかますますわからなくなる前座だったが、神殿内は適味方問わず盛り上がりまくっていた。なれあってていいんだろうか。
さていよいよだ。
僕はリングに上がった。
ゴング(どっから持って来たんだ!)が鳴る。
剣を用いての戦いなどした事のない僕は、渡された剣の重さに引っ張られながらヨタヨタと動き回った。やっとの思いで剣を振ってもガーネフには当たらない。ガーネフも僕と同じく力はないが、避けるだけの素早さはあるらしい。
観客席のナバールの不快そうな顔が、一瞬視界に入ってきた。僕らが相当まったるい戦いを繰り広げている証拠だ。ナバールにとっては最高にイライラする見せ物なんだろう。
それにしても重い剣だ。特殊な剣って言ってたけど、銀の剣にしてはなんか変な感じがするし‥‥。一体これは何だろう。
そんな事を考えつつ、ガーネフとしばらくまったるい戦いを僕が繰り広げていると、観客席からオグマの叫び声が上がった。 「わああっ!!誰かナバールを止めてくれっ!!」
え?
と思った時には僕の手に剣はなかった。イライラが限界にきてしまったナバールが、リングに飛び込んで来て背後から僕の剣を奪ったのだ。
ナバールの美しい顔には青スジが立っていた。キレてる‥‥。
特殊な剣を手にしたナバールを前に、ガーネフは「約束が違うではないか」と言おうとした。が、言い終わらぬうちにナバールはガーネフを斬る。
ずばばばばばば‥‥‥。
ガーネフは一撃で死にはしなかったが、かなりのダメージを受けたようだ。
でも不思議なことに、ガーネフはまるで痛みを感じていないような様子だった。それどころか恍惚としている。
「も、もうたまりません。」
うっとりしながらガーネフはつぶやいた。
ナバール(今オグマが後ろから押さえている)とガーネフの間を割って、レフェリーのジョルジュが僕に説明した。
「あの剣はシルバーキラー。つまり高齢者キラーというわけだ。アーマーキラーやナイトキラーと同じようなものだな。あと既婚女性に有効なマダムキラーという剣もどこかにあるという話だ。」
ジョルジュの話を観客席できいていたアベルが、隣のカインに話しかけている。
「ナイトキラーで斬られる時って気持ちいいんだよなァ。何だか、こう‥‥夢心地っての?幻みたいのが見えちゃうこともないか?」
じゃあガーネフが持っているあの黒い剣はまさか‥‥。
僕はその妖しく光る黒い剣を凝視した。
するとその剣は他の敵兵の手に移動している。
黒い剣を手にした敵の勇者は、怒って僕の方に向かって来た。
「卑怯だぞ!アリティア軍!サシで勝負させるからと言って剣まで出させておいて。そんな事をするなら俺もその魔道士をたたき斬ってやる!!」
ずばばばばば‥‥。
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