ナバールの手記
ー俺は殺戮する為なら死んでもいいー

作・なばる野のぐそ


  1.殺戮の匂い

 俺は盗賊団(サムシアン)の用心棒をしていた。
 その前はキグレ大サーカスの用心棒だった。
 その前は電撃ネットワークの用心棒だった。(この物語はフィクションであり、実在する人物や団体とは関係ない。あると思ったら斬る。)
 電撃ネットワークは用心棒である俺に舞台でママレモンを飲めと言った。だから俺は彼等に言ってやった。
「お前達が命をかけてまで俺にママレモンを飲めと言うのなら飲んでやってもいいぞ。」
 電撃ネットワークは、俺のかまえたキルソードにビビるだけで一向にかかってこなかった。俺はつまらないと思った。
 仕方がないので、俺はつまらない物を斬ることにした。
 ずばっ。
 レモンの香りがした。
 ママレモンを持っていた奴は腰を抜かした。奴の手はママレモンでドロドロになっていた。
 そして俺はレモンの香りと共に、電撃ネットワークを風のように去った。電撃ネットワークの用心棒を俺は一時間もしないうちに辞めたことになる。
 回想しているうちに敵が来たようだ。
 盗賊達は「アリティア軍が攻めて来た」と騒いでいる。
 俺は促されるままに城の外へ出た。
 何日ぶりかの殺戮だ。
 嬉しい。
「用心棒さんはシスターとジュリアンを追ってくだせぇ。あいつら逃げちまったんですわ。」
 シスターの見張り係だった男がそう言った。厳重に見張っているように見えたが……?
「え?シスターがどうやって逃げたか、理由ですかい?……弱ったなぁ。……実はジュリアンとエッチしているスキに逃げられたんですわ。いつもはつれない奴が誘って来るんでつい喜んじまって……。今思えばあれは奴の計画の一部だったんですなァ。いや、お恥ずかしい話で……。え?ジュリアン?……へへ。そりゃあもう、良かったですよ。」
 ジュリアンも苦労が絶えないな。
 そう思いつつ俺は二人が逃げて行った方向へ走って行った。
 走り出した最初のうちは逃げた二人の事を考えていたが、どんどん風をきって山の中をすり抜けていくうち、俺の頭の中は他の事でいっぱいになった。
 さつりく。
俺の頭の中は殺戮することでいっぱいだ。
 殺戮はいい。
 俺は殺戮が好きだ。
 俺は殺戮する為なら死んでもいい。
「待て!盗賊団(サムシアン)の用心棒ナバール!」
 目の前に一人の男が立ちはだかった。
 気分良く山の中をすり抜けていた俺は、突然楽しみに水をさされて不快になった。
 俺は恨みがましく相手をジッと見つめた。
 あ。
 この男。
 しいたけ。
 俺はその男を見てまずそう思った。その男の顔にはスキヤキに入れるシイタケのような十字の傷がある。
「シイタケが俺に何の用だ。」
 そのシイタケな男は少しショックを受けたような顔をして、次のような事を言った。
「……お前ほどの剣士がなぜ盗賊団の用心棒をしているんだ。ア、アリティア軍は今優秀な剣士を募集している。お、お前もアリティア軍で若い力を……た、試しッ、試してみな、見ないかっ?」
 なぜ盗賊団の用心棒をしているのかと言われても、その前はサーカスの用心棒でその前は電撃ネットワークの用心棒だった。疑問を感じたのは「ママレモンを飲め」と言われたときぐらいで、そのときはすぐに辞めたし……。用心棒ってやったらいけないんだろうか。
 それにしてもこの男は肌の色が変だ。妙に赤い。顔などは真っ赤だ。
 シイタケ男はさっきからずっと同じ様な事を俺に話し続けているが、顔はますます赤くなって汗までかき始めるし、言葉の方はどもりがひどくなっている。変な奴だ。
 シイタケの後ろには同じ顔をした三人の戦士が鋼の斧を持って控えている。三人の戦士は口々にシイタケを励ますような事を言っていた。
「隊長っ、頑張って。」
「隊長っ、隊長好みのキレイな顔した男っスね。うまくスカウトしたら毎日一緒っスよ。」
「そうっスよ。夜なんか同じテントっスよ。」
 三人の戦士の後ろをよく見てみると、逃げたシスターとジュリアンがいた。二人の話している声も聞こえてくる。
「ああ、くそう。ケツが……ケツが痛ぇ。」
「ああ、ジュリアン。私の為にあんな大きな物をお尻の穴に入れて喘いでしまうことにるなんて……。」
「レ、レナさん……。気持ちは有難いけど、そんなに具体的に労ってくれなくてもいいから……。」
 あのシスターはレナと言うのか。
 あのレナが牢に閉じ込められているとき、俺は一度だけ顔を見に行った事がある。
 その日はあんまり食欲がなく、その上退屈だった。俺は食べかけてやめたパンとチーズの切れ端を持って、レナのところへ行ってみることにした。
 昼間でも薄暗い牢の中で、レナは二本の杖をしっかり握ったまま居眠りをこいていた。
 反対側を向いていて顔がよく見えない。俺は鉄格子の隙間から手を中に入れ、かじりかけの固いパンでレナの後ろ頭をつついてみた。俺はつくづく暇だった。
 レナが気が付いたようなので、俺は「これ食うか?」と言おうとした。しかしレナは振り向いて俺の顔を見るなり、
「キャアアア!!ミシェイル王子っ!?わ、私は神に仕える身ですっ!あ、あなたの元へは参りませんっ。近寄らないで下さいっ!!」
 訳のわからない事を口走った。
 回想しているうちにシイタケの様子が少し変わってきたようだ。
 「ここまで言ってもわかってくれないとは……。」
 シイタケはうなだれていた。
 どうでもいいけど俺はそろそろ殺戮がしたい。このシイタケ斬ってまっていいだろうか。
 俺は思わずキルソードをかまえた。
「そ、そうかっ。わかったぞっ!お前は俺を警戒しているんだな?よしっ、これならどうだ。」
 ガシャン。
 シイタケは装備していた鋼の剣を捨てた。
 斬ってもいいらしい。
「これでわかっただろう。俺は決してお前を騙し討ちにしようとしているのでは……うわぁっ!!」
 俺の攻撃。
 シイタケは十二のダメージを受けた、ようだ。
 こいつはイケる。こいつはキレイに殺せる。そう思ったときだ。
 ヒューーーーン。
 ずばばばばば。
 誰かが俺を手槍で打った。
「シ、シーダ様っ!!止めて下さいっ!!今この剣士ナバールを説得しているところなのですよっ!!」
 頭上に向かってシイタケが叫んだ。
 俺も見上げてみた。ペガサスに乗った若い女が手槍をかまえて見下ろしている。
「さがりなさい。オグマ。剣士ナバールの説得は私がやります。」
 あっ。
 この女。
 殺戮の匂いがする。
その女の右手には手槍があり、左手には銀の槍が握られている。
 銀の槍の先からは生暖かそうな血が滴り落ちていた。
「剣士ナバール。」
 女は話しかけてきた。
 俺も何か答えているような気がする。口は動いている。しかし、心はその女の殺戮の匂いに釘付けだった。
「ーーーお前が命をかけてまで俺を欲しいと言うのならば……仕方がない。手を貸してやろう。」
 気が付くとそんな事を言って、俺はアリティア軍の兵士になってしまった。
 あのシーダという女の殺戮の匂い。あれが用心棒よりも素晴らしい殺戮の世界へ俺を誘っているように思えてならなかったのだ。

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