きっとサンタが
「寒ぃな、雪降ってんじゃねぇ?」
風呂掃除を終えてリビングに戻り、窓から外を見た。こんなに冷えるのにまだ雪じゃない。
「降ってますか?」
キッチンの片づけをしてたアレクもちょうど手が空いたのか、カーテンをめくってる俺の後ろからのぞきこんできた。部屋の明かりに照らされて、自分達の姿がガラスにくっきり映る。
「…おまえ、ちょっとそっち立て。」
「え?」
アレクの肩を押して俺の真横に立たし、頭をつかんでまっすぐ前を向かせた。二人の顔の位置が今までと違う!
「うおっまじかよ!おまえいつの間に背伸びた!?」
確か5cmくらい差があったはずなのに、並んでんじゃんか!
「あぁ…エルクさんに追いついてます?」
なんだそのそう言えばっつー口調は。知らなかったのは俺だけか?おそるおそる自分とアレクの頭に片手ずつ載っけて、髪を押さえて比べてみる。
「追いつくっつーか…おまえのが高ぇ…かも…。」
「そうですか?」
「くそ!」
嬉しげな声に瞬間的に手が出た。
「いたっ。」
ばしっとアレクの頭をはたいた。完全な八つ当たりだけど悪いと思わない、むしろこんくらいやっても文句ねぇだろ。腹立ち紛れに力任せにカーテンを閉める。
「一人だけ順調に育ちやがって。」
「エルクさん別に背低いってわけじゃないじゃないですか。」
「年下に抜かれる身になってみろ。」
「それならとっくにルッツが追い越…いたっ!」
「おまえにまで越されると思わなかったんだよ!」
またべしっと平手を脳天にくらわした。この気持ちはアレクにゃわかんねぇ。ポコだ、ポコしかわかり合えねぇ。アレクは腑に落ちない様子で、俺が叩いたとこを撫でてる。
「要するに…僕に抜かれたのが気に入らないんですか?」
「そんなこと言ってねぇじゃん。」
気に入らないとかそんな話じゃねぇよ、仲間は一人でも多い方がいいだろが。アレクはまだ納得いかねぇ顔してる。2発殴ったことだし、こっちから歩み寄ってやっか。
「おまえがってんじゃなくて、4つも上なのに抜かれる自分が情けねぇの。」
「…自分より大きい男なんてなんのかわいげもないからじゃなくて?」
アレクは伏し目がちに早口に言い切った。はぁ?そんなの心配してんのか?ってかそういう考えが浮かぶってこと自体かわいいんですけど。
「アホ、おまえなんか最初からかわいげあるか。14歳でレジェンドハンターなんてツワモノのくせに。」
かわいいやつだと思いつつ、さすがにそれを口には出来なくて。アレクはちょっとムッとした表情になったけど、口をつぐんで顔を逸らした。たぶんフォローを期待してたんだろうが、俺が正反対のこと言ったからむくれてやがる。
「どうせかわいくありませんよ。」
「かわいいって思われてぇんだ?」
「…もういいです。」
からかい過ぎた。アレクがキッチンに戻ろうとすんのを、腕を引っ張って抱き寄せる。
「拗ねんなよ、かわいいから。うーん…こうしてっとそんな違和感ねんだよなぁ。」
確認するように腕とか背中とか腰とかに手を這わしてると、アレクがギュッと抱きついてきた。
「じゃ、ずっとこうしてて下さい…。」
「…おう。」
なんかいい雰囲気になったじゃん。寒ぃしクリスマスだし、こんまま風呂に連れ込むか。
その前にキスしとこうと少し離れてアレクの首筋に手を伸ばすと、その手になつくようにむこうも自然に顔を傾けた。慣れてないってのもあったけど、前は上向かせるため顎にも指をかけてたっけ。もしアレクがまだまだ成長して大男になったら、俺キスすっ時背伸びとかすんのかな…絶対イヤだってわけじゃねぇけど、サンタがいるなら俺の靴下に身長を入れてくれ。
end
<言い訳です>
ジェネレーションの説明書で歴代主人公7人が並んでる絵があって、アレクがなんでか大男で。
エルクは生涯小粒がいいけどアレクはすくすく育っててもいいなと思いました。
私が普段人との身長差を測ることが出来ない質で、向かいあって話してると何とも思わないのに、
ガラスに並んで映ったのを見て「こんなに目線の違う人と話してるのか!」とよくびっくりします。