CAN YOU CELEBRATE?

 

 

 もしかすっと俺にとって今日は一年で一番都合いい日かもしんない。日頃遠慮がちなアレクを、これでもかってくらい甘やかそう。『誕生日なんだから』って言葉を盾にすりゃ、あいつだって諦めて俺のしたいようにさせんだろ。朝昼晩と丸一日べたべた世話をやいてやる。
 手始めに朝飯作りにとりかかろうとキッチンに立ったところで、寝室からアレクが顔を出した。
「おはようございます…。」
「おう起きたか、早いな。」
 くそ、もう起きてきた。飯が出来たら寝込みを襲いがてらそれはそれは優しく起こしてやるつもりだったのに。楽しみが一つつぶれちまった。
「あの、エルクさん…。」
「んー?」
「…お話があるんです。」
 手早く仕度しようと背を向けたままでいたが、アレクの改まった物言いが気になって振り返ると、アレクは表情をかたくした。
「なんだ?」
「あの、僕、今日で18歳になりました。」
「…うん、おめでとう。」
 あーくそ、うかつにも誕生日ってのを自己申告された、こっちから言ってやりたかったのに。しょっぱなからつまずきまくりだな。
「あっありがとうございます。あの、それで…それでですねっ…。」
 アレクは緊張してるっつーか力んでるっつー感じで何かを言い出そうとしてる。手は拳を握って、顔を伏せずにいるのが精一杯な様子だ。誕生日のおねだりって雰囲気でもねぇな。
「どうした?」
 いぶかしんで声をかけると、アレクは瞳を閉じて軽く息を吸い込んだ。気持ちが落ち着いたのか、ゆっくり俺と目を合わせる。
「エルクさん…僕と、家族に、なって下さい。」
「へっ?」
 一語一語を間違えないよう慎重に区切ったかのようだった。その分俺の頭にもまっすぐ届いたが、アレクが何を言いたいんだか理解出来なかった。俺の間抜けな反応と逆に、アレクは一気にシリアスモードへ突入してく。
「…あの…僕と、家族に…。」
 アレクは見る間に頬を強張らせ、震える唇でまた同じ言葉を口にする。うわーなんだ?失敗したか俺?
「アレク、ちょっと待て。俺よくわかんねぇんだけど、家族って?」
 柔らかく問いかけたつもりだが、アレクは歪めた顔のまま項垂れてしまった。うわーどうすりゃいいんだこりゃ。
「…あの…僕は、あなたが好きだから…あなたと、家族になれたらって…。」
「あー、うん、それはわかる、家族にな。だけどなんでまた急にそんなこと?」
「だって…今日、僕…やっと僕18歳になったから…。」
 俯いての告白はただただ辛そうだ。俺と家族にっつったって、もうすでにそんな関係でいんじゃんか。わかんねぇな、18になったからって…あっ!18って!
「18って!もしかしてプロポーズか!?」
 18歳って、男は結婚出来る年か!所帯持てる年齢だ!それでこいつは重々しくなってたわけか。アレクは下を向いたまま小さく頷いた。
「…本当は結婚してほしいですけどそれは無理だから…でも僕、エルクさんと家族になりたいんです…だから…。」
 アレクは途中で言葉を切り、おもむろに顔を上げて俺を見つめてきた。
「僕と、家族に、なって下さい…。」
 まっすぐな視線はどこか弱々しく、玉砕も覚悟の上、どんな結果も受け入れるという心構えがキュッと結んだ口元からうかがえる。てゆーかこいつ、俺が断るのも有り得ると思ってやがるな。そんなことあるかっての、とうにこっちはおまえと添い遂げるつもりで日々送ってるっつーの。
 心で悪態ついてみても、顔はどんどんニヤけてく。だってやっぱ嬉しいんだ。男女のような結婚を出来ない俺達にアレクがくれたのはたったの一言、しかも単純で色気もない。それでも考えに考えて、選び抜いた言葉のはずだ。さっき結局3回も繰り返し言ったくらいだもんな。練習だってしちゃってるかもしんない。起きてすぐ朝一番に言うとは、相当この日を心待ちにしてたんだろう。
 俺の反応にビクついてんのは腹立つが、アレクも俺と真剣に付き合ってるってのは疑いない。あとは俺の気持ちをわからせてやるだけだ。
「いいぜ。」
  見ててわかるくらいアレクの肩から力が抜けた。気のきいた返事もいいけど、オーソドックスなプロポーズに合わせて、お決まりの答えでお返事しよう。
「ふつつか者だけどよろしく頼むわ。」
「…はい…!」
 安堵感が表れた泣き笑いのようないい笑顔で、『ふつつか者』についても素直に肯定されちまった。まぁいっか、実際ふつつか者だしな。
 こんな俺を選んでくれてありがとう。

 

end

 

<言い訳です>

アレクは子供の頃から、結婚した二人は家族になる、自分も18歳になれば家族が出来ると思ってました。
エルクはすでに自分の家族だと感じてるのに、子供の頃からの憧れに加え、プロポーズっぽいことをすれば、
自分の思いがより伝わると無意識に考えたんですが、でもエルクの反応に我に返って、
形にこだわった自分が恥ずかしくて、でもあとにひけず、3回も言っちゃった…って感じです。

 

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