Every Heart ≪T≫
『子供を抱えて逃げ回るのが、精一杯なんだよ!』
その一言で僕は頭が真っ白になった。迷うことなく剣を向けていた相手なのに、一瞬にして闘気が失せた。
子供を抱えて…その言葉でいくつもの記憶が閃く。熱い火の波。崩れ落ちる壁。炎をまとった柱。その下敷きになろうとしている僕。僕を抱える腕。揺れる地面。抱えられている僕。座った荷台。火の粉をはらんだ風。差し出された剣。それに手を伸ばす僕。剣の重みで我に返る僕。落とさないように両手で抱えた剣。遠ざかる誰か、火の町へ引き返す誰か。
「アレク!」
金属の交わる音が間近に聞こえたと同時に、脳裏に映し出されていた炎が消えた。いつの間にか目の前はヴェルハルトの背で覆われて、その先には鈍く光る白い鎧のあの人が見え隠れしている。
『子供を抱えて逃げ回るのが、精一杯なんだよ!』
あそこにあなたもいたんですか?それはあなたのことですか?子供を抱えて逃げたのはあなたなんですか?抱えられたのは、僕?
「アレク!」
後ろから焦ったように声をかけられる。皆、いつも通り指示を出すことのない僕をいぶかしんでいるだろう。でも僕に何が出来る?あの人は僕を助けてくれたかもしれないんだ。今だって、あの人に襲い掛かるヴェルハルトとエルクさんを止めたくて仕方ないのに、ただ足が動かないだけなんだ。
「ルッツ、イクサイトメントだ!テオはガードフィールド!シェリルはキュア頼む!マーシア、俺の炎に合わせてギガプラズマ出せ!」
剣戟の向こうから、エルクさんが飛ばした指図。皆は不意をつかれながらも、的確なそれに従い動き出す。
僕は、僕はどうしたいんだ?止めさせたいんじゃないのか?ならどうして立ち尽くしてるんだ?仲間だけ戦わせておいていいのか?ならどうして飛び込んでいかないんだ?
「アレクっ!!」
全身に突き刺さるような鬼気迫る声と、一際高い金属音にハッとする。あの人の剣を払ったエルクさんの左手に、即座に炎が燃え上がる。
「おまえがやらなくても、俺は進むぞ!」
『子供を抱えて逃げ回るのが、精一杯なんだよ!』
そう、それほどの惨状。まして子供なら、呆然と身をすくませるしかない。さっき次々と浮かんだのは紛れもない事実。それまでの記憶を塗り潰してしまったほど強烈な炎。
二度と起こしてはならない。目にしてはならない、もう二度と。
「アレク!」
回復を一手に引き受けていたシェリルが気色ばんでる。その声に応じて僕はキュアを放った。
「アレク!」
気を緩めることなく、それでも皆は視界の端で僕を確かめる。僕はエルクさんの繰り出す炎を見遣った。そして手にギュッと力を込めた時、掴んでいる剣の感触が汗ばんだ掌によみがえる。
炎と、剣と、僕。でもあの時と同じじゃない。今、僕は進むためにここにいる。
「行くぞ!!」
進むんだ、皆と、エルクさんと。
剣を握りなおして、勢いよく駆け出した。
end
<言い訳です>
微妙に無理矢理エルアレ。そしてガルドのセリフうろ覚えです…。エルクの指示も、はたして的確かどうか…。
それに加えて描写が出来てないので、書いた私にしか意味がわからないだろうと思われます。
この場面、ゲーム中でちゃんとやってほしかったなぁ…アレクがすんなり戦ったのが本気でナゾです。