星に願いを

 

 

 サシャ村で迎えた最初の夏。
 集まった子供達に、ゴゼ老が長細く切った色紙を一人一人に渡してくれた。
 もらったもののどう使うのかわからなくて裏っ返したりしてた僕に、皆が教えてくれた。
「この紙に願い事を書くと、きっと叶えてくれる。」
 僕は手にした紙をじっと見た。シワにならないように、注意深くそっと持ちかえる。
 そしてドキドキしながら願いを綴る。ゆっくりと、間違えないよう、慎重に。

 

 『思い出せますように』

 

 夜、ベッドに入っても、そわそわしてすぐには寝られなかった。起きたらきっと記憶が戻ってる。

 

 次の朝、僕は何も変わってなかった。
 そんなにすぐ叶うのじゃないのかもしれない。焦らずに待つことにした。
 やがて夏が終わって、寒くなって、雪が解けて、また暑くなり、七夕はやってきた。
 僕の願いは叶わなかった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 立ち寄った町の広場で、七夕の飾り付けが行われていた。
 色とりどりの短冊、その多くが子供の字で書かれている。

 

 『背が伸びますように』
 『うまく泳げるようになりたい』
 『モンスターカードほしい』

 

 背が伸びますようには、僕もお願いしたことがある。
 本当は、記憶を取り戻したいと書きたかった。最初の七夕の時と同じ願い。
 でもまた叶わなかったら悲しいから、二番目の願いを記したんだ。

 

 吊り下げられてゆく短冊を眺めていた僕に、顔見知りの人が僕にも書くように勧めてくれる。
 紙を受け取り、何を願おうか思い巡らす。
 素直に一番の願いを書くのもいい。望み通りにならないからって沈み込んでしまう程、もう幼くない。
 ペンをとって短冊に向かう。一番の願いを自分に尋ねる。
 心に現れたのは、大切な人の、大好きな笑顔。
 いつの間にか変わっていた一番の願い。一番というより、唯一と言った方が合うくらいに。
 自分の答えに満足して、ドキドキしながら願いを綴る。最初の七夕の時と同じように。
 既にたくさんの願いが宿されている竹に、新たに短冊を結びつける。
 照れくさくて、少し恥ずかしくて、小さくなってしまった字。
 僕の願いは………

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 ふと、自分が温かいものにくるまって横たわってる感触に気づいた。ほんの少しずつ頭が冴えてくる。
 夢を見てた。数日前に訪れた町でのこと。
 あの日と同じ満ち足りた気分を壊さないように、ゆっくり息を吸い込む。
 目がだんだん周りを確認し出して、そして隣でまだ寝ている人を捉えた。
 大切な人、大好きな人。心からの願いは、彼の笑顔と共に思い及んだ。

 

 『側にいられますように』

 

 今までにも、こうした朝は何度も迎えた。
 それでも、僕の願いが、初めて叶った朝。

 

end

 

<言い訳です>

少女漫画な…いえ、少女漫画にもいまどき載ってないくらいな話になりました…。
話の中の日にちは、ちゃんと考えてないです。
町でのことが七夕前、夢を見てたのが七夕後くらい…だと思われます…。
泳げますように、というのは、私のかつての願いでした。叶いませんでした。

 

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