うらしまたろう
フォレスタモールから山を越えて到着した北スラートには、ギスレムとゆー陰気な街がある。しかも各協会をわざわざ離して設立してるほど、ヤバい町だ。
そんな中で一生懸命生きてる住人がいる。アレクの仕事で知り合ったチャイルドハウスの子供達だ。もう打ち解けてるけど、初めは大変だったんだ。警戒されるは攻撃されるは!ギスレムって町がそうさせたんだろうけど、だからって俺様達が狼藉者に見えるのかっつーの!
今じゃすっかりなついた子供達が遊んで遊んでとうっさいんで、テオと三人でチャイルドハウスを訪れた。クララは俺達が仕方なく来てくれたんじゃないかってすまなそうにしてたけど、俺もアレクも子守は村にいた時からやってて慣れてるし、テオだってたまにゃ遊んだ方がいいんだ。
俺は小さい子にせがまれて絵本を読んで、アレクは暴れたい盛りのガキ共とプロレスごっこ、一番人気はテオでモンスターカードを見せてやってた。テオは嬉しそうに解説してやってる。いつも俺達にも見せてくれるけど、俺はそのモンスターの持ってるアイテム情報がわかればいいし、アレクも一度は戦ったモンスターだから特徴は知ってるしでそんな熱入れて聞いてやってねぇからさ。あーしてせがまれて、テオも説明しがいがあるってもんだよな。
情感たっぷりに一冊目の読み聞かせを終えた時、ちょうどアレクもプロレス降参して休憩にしたようだ。子供達が次の絵本をあれこれ選んでる時にモンスターカード組の方で歓声があがり、絵本組もプロレス組もわーっとそっちへ群がったんで、残ったアレクをすかさずつかまえた。
「何読んでたんだ?」
「浦島太郎〜。」
ポピュラーな昔話だけど、結局何が言いたいのかわかんねぇよな浦島太郎。亀の誘いにゃ気をつけろってことか?
「浦島太郎ってさ、最後なんで箱開けちゃったんだろうな?」
「いや普通開ける!」
「ルッツは開けるだろうけどさ、一応開けるなって言われたんだから。」
そっか、言いつけ守らなかったら痛い目見るぞってこと?でもおかしいよなー。
「土産っつって渡されたもんを開けねぇやつはいない。」
「うーん…それなら開けちゃだめだって言われた時に、いりませんって断るとか。」
「あははははは!おまえやりそー!」
「だってもらってもしょうがないじゃないか。」
すげー!そもそもアレクなら竜宮城への招待から断りそうだ、仕事あるからって!
「そうだけどさ!でもすげーしつこく押しつけられちゃったらどうすんの!?」
「それなら仕方ないからもらうけど…そうだな、竜宮城のお土産なんて珍しいからおまえにやろうか?」
「そんで俺がフタ開けるって!?」
「あぁ、そうなっちゃうかやっぱり。」
「ひでー!」
口では文句を言っててもお宝と聞きゃ喜んで受け取るし、そしてきっとフタを開けずにいられないってことも自分でわかってるけどな。
「でもルッツ、渡してすぐ僕の目の前で開けそうだよな。」
さすが親友、俺様のこと把握してる!
「おまえも道づれだな!」
「えー、やだよ。」
「いーじゃん薄情者ー!」
「わかったよ、しょうがないなぁ。」
アレクが明るい笑顔で言った。こんなの言葉遊びの域を出ないけど、適当に話を合わすってのが苦手なアレクのことだから、俺がおかしなことに巻き込んでも本当に許してくれるつもりなんだと思う。嬉しい、大好きだ!
「俺達ジジイになっても一緒にいような!」
「うん、親友だからな。」
うん、親友。実は親友じゃ足りないくらい好き。だけど親友ってゆー今の俺達もすげーいい。だから親友を楽しむだけ楽しんで、飽きたら熱烈アタック開催の予定。アレク固いし鈍いから、開催が長期に渡るのは予測済。
「ジジイになる頃にゃ、親友より先に進展してたいよな〜。」
わざと口に出す。うといアレクが俺の本心に気づくわきゃねぇが、こうしてちょっとずつでも耳に入れとけば刷り込みっつーかサブリミナルっつーか、あとあと効果が期待出来るかもしれねぇじゃん?
「進展?親友より先って…無二の親友?」
アレクが大真面目な顔で返してきた。俺まだ無二の親友ってゆー課題をクリアしなきゃなんねぇらしい…親友の次が恋人だと決めつけてたから、ひとしお遠く感じるぜ。
「うあー…先なげー…。」
あぐらしてるアレクの足の上に、横から覆いかぶさるように倒れこんだ。
「なんだよ、疲れたか?」
「んーにゃ、まだまだこれからっすよ〜。」
「村出てからこんなに遊んだことなかったな。」
人の背に肘をついてそう言うアレクを見たくて、無理やり首を回す。想像通り手に顎を載せて、ニコニコと楽しそうだ。なんか俺もふにゃ〜っと幸せな気分になって、脱力しきって全身アレクに任せた。
「アレク、それもっとやって。」
「こう?」
俺のお願い通り背中を肘でぐーっと押してくれる。
「アヒャヒャヒャッ、くすぐってー!」
「おまえがやれって言ったんだろ?」
ジタバタする俺様を押さえつけるようにアレクが力を込めた。それがプロレスを始めたように見えたのか、プロレス組の子供が自分も入れろと駆け戻ってきた。
「よし、皆でルッツをくすぐっちゃえ!」
「へっ!?ちょっと待てー!」
アレクが俺様を床に転がし率先してこちょこちょとやってくるんで、子供達も面白がって手を伸ばしてくる。
「それが無二の親友にすることかー!?」
「玉手箱開けることに比べたらこのくらい。」
「開けてねぇし!」
「でもおまえ絶対開けるだろ?」
「そりゃあれば開けるけど!」
「ほらな。だったらおまえもこれくらい耐えてみせろ!」
「イヤーッ!意味わかんねぇし!」
さっきどさくさ紛れに言った無二の親友を、アレクはツッコんでこなかった。てことは親友から格上げされたってことだよな!なんだよなんだよ、簡単じゃんか。この分だと刷り込み続けてれば、恋人にだって案外早くゴールしちゃうかも!
いいように弄ばれて悲鳴とか上げちゃってるってのに、俺は悶え苦しみながらも幸福をかみしめてた。俺達無二の親友だ!
end
<言い訳です>
すみません、ルアレです。
すみません、うらしまたろうです。