ちょっとでか過ぎかもしんねぇ、この花束。
 プレゼントゆっくり選ぶ時間がなくて、せめて花くらいと思ったんだけど。あの花屋、サービスしてくれたのか?やたらでかいのが出来上がったな。もしかしてこの時期、花って安いのかも。予算を聞かれて適当に答えたら、けっこう驚かれてた気ぃする。花の相場なんて知らねぇし。まぁ、大きい分には越したこたないだろう。
 このメインにしてもらったの、カラーだっけ?こんなのも花なんだな。一目見て、なんだかあいつのイメージに重なった。白くて控えめでまっすぐで。白ってのは、単に色白ってだけじゃなくて純真さの方もな。
 一応ホワイトデーらしく、飴も用意してある。あいつ、喜んでくれるかな?あ、うち花瓶ねぇじゃん…ま、いっか。とりあえずバケツに挿して、明日にでも買いにいこう。今はとにかく早くあいつに会いたい。

 

 

My Sweet Darlin’

 

 

「お帰りなさい、エルクさん!」

 お、笑ってる笑ってる。よかった、元気そうだ。それにしても、すげぇ甘いにおいが漂ってるな…アレク、なんか作ってくれてんだ。なんのにおいだろ?こりゃ相当甘いもんだぞ。

「エルクさん、それは?」

 あっと、見つかってるよ。まぁ、これだけでかけりゃ後ろに隠しても意味ないわな。

「ん…おまえにさ…。」
「わぁっ…すごい!」

 すっげぇー!なんだよこいつ!なんだってこんなにかわいいんだよ!!さっきだって充分笑顔だったのに、それを上回る勢いじゃん!花が似合うこと似合うこと!そうそう、花ってあぁやって両手で抱えてやるもんだよな!!でか過ぎ?どこがだよ!もっと、こいつが腕回せねぇくらいあったってよかったくらいだぜチキショー!!

「ありがとうございます、エルクさん…!」

 うわぁ…そんでもって、はにかむかぁ!おまえってホントいい!

「僕も準備してたんですよ!」

 はぁ、なんかもう俺すべて手にした感じ?これが至福ってやつ?やっべー、顔赤くなってるくさい。仰げ仰げ!

「先にリビングへ行ってて下さい。僕これを生けて…。」
「あ、花瓶ねぇだろ。バケツにでも入れとけよ。」
「…でも…。」

 お、表情が曇った。きっと「せっかくエルクさんがくれたのに、バケツになんて…。」とか思ってんだろうなぁ。

「今日のところはそれでいいだろ。花瓶は明日、買いにいこうぜ一緒に。」
「…はい!」

 よし、笑顔回復!「一緒に」ってのがきいたな、やっぱ。おい、花、おまえも俺に買われて幸せだろう?少しでも長く咲いてろよ、アレクが喜ぶからな。
 さてさて、リビングへ〜。ホントなんのにおいだろな、これ。あ、そうだ、飴も持ってたんだっけ。ま、後でいっか。も一回あいつの嬉しがるとこ見れるかな?アレク、準備してるって言ってたけど、手作りだよなきっと。それと交換で渡すとするか……って、こ…これは…?

「こ、これ……。」

 一体何が始まるんだ?ホールのケーキと大皿に積まれたクッキーと山盛りの飴…誰か呼んでるとか?いや、そんなの聞いてねぇし…どう見たって二人じゃ食えねぇよ。

「バケツいっぱいになっちゃいましたよ。花瓶、一個じゃ足らないでしょうね。」
「…アレク、これ、どうしたんだ?」

 っていうか、どうすんだ、これ?

「今日は仕事を休みにして作ったんです。飴はさすがに買ったものですけど。」
「なんで、こんなにたくさん…。」
「三倍返しですよ。」

 三倍…三倍返し…違うぞアレク…それは値段のことで、量のことじゃないんだ…。

「エルクさん甘いものが好きだって前に言ってたから、飴以外のものもいいかなと思って。」

 バレンタインのお返しに飴がよく贈られるってのは俺が教えたんだが、三倍返しはどっかから聞いてきたんだな…。あぁ、そうさ、言葉どおり受け止めれば、大量の菓子を並べたくもなるってもんさ。なんかもう、アレクらしいことこの上なしな状況だぜ。

「…じゃ、これも加えちまおう。」

 こんだけのもんを前にすると、俺の飴一箱なんかかすむな。どうせ俺一人じゃ食いきれねぇし、二人分ってことで仲良く平らげればいいさ。

「エルクさん、飴まで買ってきてくれたんですか?」
「まぁな。おまえこそ、ずいぶんたくさん作ってくれたじゃん。」
「あ…やっぱり多いですか?バレンタイン、エルクさんがチョコをくれたのがホントに嬉しくて、それでつい…張り切って作りすぎちゃいました。」

 なるほど。嬉しさが、量になって表れたわけか。

「そっか。俺、甘いもん好きだから、調度いいよ。」

 食おう。今日はいけるとこまで食おう。腹がどうなったって食おう。

「よかった…それじゃ、まずはゴハンにしましょうか?もう出来てますよ。」

 あぁ、キッチンにメシまで用意してあんだ。すげぇ大変だったろうな、後でちゃんとねぎらってやろう…って、これは…?

「ア、アレク…今日、誰か来んのか?」
「え?いいえ、来ませんよ?」

 マジ?だって食卓いっぱいに料理のっかってるぜ?今度こそちょっとしたパーティーでも始まりそうな感じだぜ?
 ん?よく見たら俺の好物ばっかだ…そっか、アレク、嬉しさがこっちにも出てるんだな…。
 食おう。とにかく食おう。腹が壊れようと気にするな。

「明日、花瓶いくつ買いましょうか?僕、キッチンとリビング両方に飾りたいな。」

 あ…そうだ、買い物に行くんだったな…腹下すわけにいかねぇじゃんか…。
 おし、今日のとこはナマモノからいこう。いたまなそうなものは残して、明日延長戦だ。それから食いながら考えよう。ホワイトデーのお返しは食い物以外でもいいし、三倍返しは必須じゃないって、それとなく伝える方法を…。

 

 

end

 

<言い訳です>

ホワイトデーのことをすっかり忘れてて、とにかく更新したい一心で書き上げました…。
ありがちな…まぁアレクだから、いっか…って感じです。
エルクの花束もでかかったので、三倍返しはホワイトデーの基本なんだとアレクすでにインプット済みのため、
エルクが遠まわしに何を言っても、三倍以上返しは続いていきそうです。

 

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