わたしの軌跡

 

 

 ○月○日

 

 今日はとにかくアレクさん。
 エルクさんとシュウさんが命がけで戦って、シュウさんなんて九死に一生を得る目にあって、エルクさんはこの世の終わりってほどに絶叫して、私も捕らわれの身になって、MMMの大きな飛行船の墜落なんて事故まで起きたけど。
 誰がなんと言おうと今日の主役はアレクさんだ。

 

 ドンゲル岬で、エルクさんとシュウさんは死闘を繰り広げた。エルクさんは私のペンダントを、シュウさんはMMMの装置をかけて。
 どうしてシュウさんが敵に回ってしまったのかわからない。その上エルクさんまでが、防御だけでなく攻撃もする。二人は確かに真剣勝負をしていた。知り合って間もない私が見ても、固い信頼で結ばれてた二人なのに。
 見てられなくて、アレクさんに止めて下さいってお願いした。彼だって私と同じ気持ちでいるはずだ。私は本気でやり合う二人が恐いけど、エルクさん達と同じレジェンドハンターと呼ばれる彼なら止めに入ることが出来ると思った。
 アレクさんは緊張した面持ちで二人を見据えてた。そして縋る私を落ち着かせようとするように、少しだけ口元を緩ませた。

「大丈夫ですよ。いざとなったら僕リザレクション使えますから。」

 あの時は本当に彼がこう言った意味がわからなかった。リザレクションが必要になるかもしれないと思いながら、どうして放っておけるんだろう。でもそれから何度頼んでも、「大丈夫です」「信じましょう」としか答えてくれなかった。もう何もかもがわからなくて、私はただ呆然としていた。

 

 やがてシュウさんの動きに隙が生じ始め、それをエルクさんは逃さずに強力な一撃を見舞った。吹き飛ばされ地面に膝をついたシュウさんは、そのまま頭を押えて苦しみ出した。駆け寄るエルクさんを制してシュウさんが何か言ったけど、その声は聞き取れなかった。するとシュウさんは装置を残して、崖から飛び降りてしまった!
 エルクさんの悲痛な叫びが響いた。崖下を必死に覗き込む姿を、信じられない思いで見つめていた。

 

 行きましょう、とアレクさんが手を引いてくれてやっと動けた。彼はやっぱり「大丈夫」と繰り返してたけど、自分に言い聞かせるような声音と力の込められた手が、アレクさんも何かしらこらえてるんだと思われた。
 崖っぷちに座り込んだエルクさんに、アレクさんは静かに言った。

「その装置、持っていくには邪魔ですね。」

 私は彼が壊れたと、あまりのことにショックでどうにかなってしまったとゾッとした。だって場違いだもの。優しいこの人の口から、正気でなくてこんな言葉出るものか。
 エルクさんが無反応でいるので、アレクさんは私に視線を移した。彼は少し青ざめてはいたけど、気丈な瞳をしていた。まるで悲しんでる暇はないという、彼のこの強さはなんなんだ。つられて私も「ペンダントにエネルギーをうつしてみませんか?」なんてポロッと言ってしまった。すぐさまエルクさんの気持ちを考えない発言だったと後悔したけど。
 少しして、エルクさんは装置を手にして立ち、私にそれを差し出した。眉は辛そうに寄せられていても、立ち上がるこの強さ。
 アレクさんといいエルクさんといい、ここまでになるにはどれだけの経験を重ねたことだろう。私のせいだ。今回のことは、私が彼らの前に現れなければ起こらなかったのだから。
 ペンダントが輝くのを苦しい思いで見ていた時、突然私は誰かの腕に捕らえられた。とっさのことで叫び声しか上げられず、きつく掴まれた手はどんなに力を込めても振り払えなかった。私はそのまま拉致された。

 

 

 ダークノアという飛行船の中に連れていかれた。そして抵抗もむなしく椅子にしばりつけられてしまった。
 グロルガルデを復活させたのは私をさらった人達だ。この先どんな未来を迎えるか知らないからそんなことするんだ。あの世界を見てないから。
 とにかく説得しようとしたけど、話なんか聞いてくれなかった。この人の考えが変われば未来だってきっと変わるのに、目の前ですべての始まりを見せつけられるなんて絶対イヤだった。

 

 私の声なんて耳に入ってない様子だったのに、突然感情を抑えかねたように反論され、あの人は自分の身に起こったことを話し出した。
 MMM幹部アトモス、本名はダーム・フォイエルバッハ。心無い人達によって家族が殺された。人類滅亡はその復讐だ、と。
 私と同じだ。私も両親を、仲間を殺した機械を滅ぼそうとしてる。違うのは相手が機械か人間かというのと、守りたいものにまた出会えたのと見つからなかったのと。それだけのようにも思える。
 それからあの人はしゃべり過ぎたと言うように黙りこくって、私は完全に無視された。しばらくして私は薬をかがされて、そして意識を失った。

 

 

 気がつくとエルクさん達に助けられて、ヒエンの中でアレクさんに介抱されていた。エルクさんの横でヒエンを操縦するシュウさんを目にした時はびっくりした。本当に無事でよかった。
 大きな飛行船が墜落していくのをヒエンから見た。あの人も命を落とした。500年後まで続く人間と機械との戦いの発端が、人間同士の憎しみだったなんて。

 ダークノアの爆発の影響を受けないところまで飛ぶと、シュウさんが今までの行動について話してくれた。ダークノア内部に潜入したところ敵の手に落ち、洗脳されてしまっていたそうだ。やっぱりシュウさんの意思なんかではなかった。
 それを聞いたエルクさんは、頼りねぇとか情けねぇとか憎まれ口を叩いてたけど、顔はお日さまのように明るかった。失われたとしか思えなかったのに、こうして再会出来て安堵感で満たされていたのだろう。私も同様だったから。
 ただ一人、アレクさんはちょっと違っていた。

「洗脳って、本当に洗脳されてたんですか?芝居じゃなかったんですか?」

 ポカンとする私達に、アレクさんは確認するように言った。

「洗脳されたと見せかけてたんですよね?それであの装置を手に入れて、うまく僕らに託してくれて、自分は死んだと思わせてフィニアさんを助ける機会を伺ってたんですよね?」

 まさかと思いシュウさんに顔を向けると、シュウさんが「いや…」とやっと搾り出したような声で答えた。アレクさんはあんぐりと口を開け、ひきつったように手を滑稽に振りながら言葉を続ける。

「だってシュウさん、前にアカデミーの一件で、やっぱり敵になりすましてたじゃないですか。」

 よくはわからないけど、シュウさんは以前潜入捜査をしたことがあるみたいで、今回もそうだとアレクさんは思い込んでたらしい!
 あの時気味悪いくらい冷静だったのは、そんなわけだったからなんだ。「すまん、今回は違うんだ…」とシュウさんが複雑そうな顔で言うと、アレクさんは一気に怒り出した。

「じゃあ二人とも本気で戦ってたんですかっ?何考えてんですか、あなた方が本気でやり合ったら、ただで済むはずないでしょう!僕本気だなんて思わなかったから、殺気も感じたけど敵を欺くなら味方からって言うし。やり過ぎなんじゃないかとかちょっとは心配したけど、きっと僕のリザレクションをあてにしてるんだと思ってっ…。」

 普段の彼からは想像つかないくらい目がつり上がってた。シュウさんは困った様子で、でも反論も出来ずに「すまん」と小さく呟いた。マジギレというものを初めて目撃した。

 

 アレクさんの勢いがすごくてどうなることかと思ってたら、呆気にとられてたエルクさんが突如爆笑し始めた。
 エルクさん遠慮の欠片も見せずに笑ってるから火に油を注ぐんじゃないかと心配だったけど、「それだけシュウを信頼してんだよな」という言葉に、アレクさんは大人しくなりこくんと頷いた。アレクさんの中にはきっと、シュウさんが私達と敵対するなんて選択肢がもとよりなかったんだ。
 シュウさんは私達にもう一度謝った。アレクさんも早とちりをしたことについて頭を下げた。洗脳に打ち勝ったシュウさん、人をどこまでも信じられるアレクさん。こんなに強い人達が、私とともに戦ってくれる。
 私は自分の為だけでなく、彼らの為にも戦いたい。彼らの生きていく未来を、私の生きてた世界とつなげたくないから。

 

 歴史を変えてみせる。こちらへ来る前からわかってたことだけど、私がもといた世界は消える。それでもいい。500年後を生きる人達が、太陽に照らされて当たり前のように顔を上げていられるのなら。
 明日、再び神の塔へ乗り込む。どうか、誰も欠けることなく、皆が新しい未来を歩めますように。

 

<言い訳です>

ゲーム中のもともとのセリフと勝手に作ったのとが入り混じってます、お気をつけ下さい…。
シュウが崖から転落する流れだともう一人仲間が出てくるはずですが、見逃して下さい…。
ドンゲル岬のシーンは親子好きとしては納得できなかったので捏造してみました。
それにしてもシュウったら…いつからこんなうっかり者に…。

 

 

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