ギャップ




結局いつも、俺は従兄にまるめこまれてしまうワケで。


彼のペースには一生乗れない。







「英士ぁ〜テレビつけて!!!今すぐ!6ch!」

新聞紙をほっぽり出していきなり叫び出す潤慶に促されて、チャンネルをまわすと。

「うっわーヒロちゃーん!!!vvvv」

画面に映る少女を見て、潤慶が叫ぶ。

相変わらずのミーハーぶりに、少しだけのため息が漏れる。

潤慶は、とにかく日本の女のコが好きみたいで、特にこの歌手は好きらしくて。

以前、親善試合のときにCDを買わされたこともあった。

潤慶が『v』付きで人を呼ぶのは、俺だけだと思っていたけど、そういえば此処にもう一人居た。

「英士!!ビデオビデオ!!vヒロちゃんが歌うー!!」

ビデオデッキの下にたくさんある、ビデオの山をあさりだした潤慶に、俺は言う。

「今空いてるテープ無いから無理だよ」

そう口に出したけれど、視線は手の中の本。

しかし、潤慶が動かないことに気づいて、俺は目を上げた。

潤慶は、ビデオに触れたまま、こっちを見ている。

きょとん、と目を見開いて。

画面では、もうその歌手が歌い始めている。

「…ゆ、潤慶?」



「英士、怒ってる?」



内心、ものすごい驚く。

「…何で俺が怒るわけ?怒ってないけど」

「ううん、絶対怒ってたね。今のは」

何でわかるの?と聞いたらそれは肯定になるから聞けない。でも、何でだ?


そう考えていたら、潤慶が大きな声をあげた。

「ああっ!!!!」

「な、なに?」

てっきり、『もう始まってる!』とか言うかと思ったのに。



「やきもちだね!!!ヒロちゃんに!!!」



「は、はぁ?」

「うわぁ〜ん、もう英士ったらくゎーあいい!!!」

「ちょっ、潤慶っ!」

勢いよく抱きつかれて、ソファーに倒れこむ。

見上げる俺と、見下ろす潤慶。

「大丈夫だよー、心配しなくても僕は英士ひとすじだからねvv」

「そんなこと言ってない!」

「恥ずかしがるなよー英士の照れ屋さんvv」

「痛っ!」

デコピンをかまされて、額を押さえる。

「おしおきー」

「…潤慶…重い…」





仮にも従兄、1つ年上だ。

子供っぽさが抜けないような彼は、まったくそんな感じはしないけれど。


それでも


彼の子供っぽい笑顔とペースには、付け込む隙もなく。





「そうだ!!おしおきついでにここでするのってどう?英士」

「ば、バカッ、何言って…」

潤慶が、いつもの、企みの微笑みでニコニコと笑いかけてくる。

それと同時に腕を押さえつけられる。


「嫌だ、って言ってんでしょ!」

腕をふりほどこうとすると。




「…ほんとに?」




いつもとは全く違う、年上の顔の潤慶が、俺を見下ろす。


「…っ!」


唇を重ねられると、抵抗も出来ない。

  

このギャップが、俺の最大の敵。




「英士いただき〜vv」



潤慶の明るい声が、耳元で聞こえた。



「…ずるい。」

「何か言った?英士」

「別に…」