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ダブルクロス 2002.01.09

 やっと根気を込められるルールが発売されました。これをアップしているのが発売からかなり経過しているというのは、それだけ読み込んで解析に時間をかける価値があったからです。

 つーわけで徹底的に解析してみました。


§行為判定

 基本ルールの記述だと、クリティカルの処理がイマイチわかりにくいので、以下のように手順をまとめてみた。

 (1) 使用する<技能>とエフェクトを決める。
※エフェクトによってクリティカル値が決まる。通常は10。
※エフェクトの使用を決定したらこのタイミングで侵蝕率を上昇させる。
※計算上の数値として「クリティカル数」を設定する。この時点では0とする。
 (2) <技能>に対応する【能力値】と同じだけのd10を振る。
 (3) クリティカル値以上の出目のダイスがあったら、クリティカル数を+1して、クリティカル値以上の出目のダイスだけ振り直す。
 (4) クリティカル値以上の出目のダイスが出なくなるまで(3)を繰り返す。
 (5) 達成値=クリティカル数×10+最後に振ったダイスの中で一番大きい出目+技能レベル


※行為判定と難易度

 欄外に難易度が表記されているが、実際には難易度などあってないようなものである。このルールブックに表記されている難易度は、能力値=1の時点で一番適正に機能するようだ。2以上の能力値では、その難易度は素直に信用できない。ちなみに能力値=1〜5、技能0レベル、クリティカル値10の時の各難易度と成功率(の概算値)は以下のとおりである。

難易度 目標値 能力値1
の成功率
能力値2
の成功率
能力値3
の成功率
能力値4
の成功率
能力値5
の成功率
80% 96% 99.2% 99.8% 99.9%
60% 84% 94% 97% 98.9%
30% 51% 66% 76% 83%
困難 11 10% 19% 27% 34% 41%

 ちなみに全てのダイスの出目が1だとファンブル(=達成値0)になるので、達成値=1はありえない。10で割り切れる達成値は、クリティカル値による振り足しがあるため、技能による達成値修正、エフェクトによるクリティカル値=11、ペナルティーによる振るダイス数が0以下の場合にしか発生しない。


※能力値とその高さについて

 ルール上では説明されていないが、能力値の高さとその評価は以下のような感じになるだろう。そこそこの達成値を保持したければ最低3は必要である。4以上あればコンスタントに高い達成値が望める。しかし、5以上の能力値は達成値そのものの上昇する確率は上がっていくものの、期待値としては横這いなイメージがある。

能力値評価
素人
未熟
熟練
玄人
5〜6達人
7〜超人

※参考までに、作成時の能力値は1〜8。HPは4〜20。イニシアティブは3〜18。


§ダメージの算出

 これもルールブックではイマイチわかりにくいので式で記述してみる。

 ダメージ=[達成値の10の位+1]d10+攻撃力

つまり

達成値ダメージ
2〜91d10
10〜192d10
20〜293d10
30〜394d10
40〜495d10

ということになる。


※ダメージとHP

 キャラクターのHPはダメージにくらべて低い。作成時のHPは4〜20。平均で12ぐらいである。このルールではエフェクトのおかげで高い達成値は頻発しやすく、同時に高いダメージも出やすい。1回の判定でクリティカルが2回発生すれば、達成値は20を越える。そうなると3d10、期待値=16.5ダメージとなる。判定に使用する能力値が3以上のキャラクターは、低い達成値ではダメージを受けることが少ない。そうなると必然的に高い達成値の時だけダメージを受けることになり、自動的に即死ダメージを受けることになる。侵蝕率が低い場合はダメージを受ける毎にリザレクトが発動することになるだろう。
 武器はエフェクトを使用すれば格段に強力になる。武器生成系エフェクトは通常武器よりもはるかに強力である。武器を使わなくても適切なエフェクトでダイスが回れば、素手であっても武器並みのダメージを出すことが可能である。
 防具は武器にくらべて貧弱である。通常の防具は強力なものほど入手・維持が困難である。しかも、エフェクトで強化されたオーヴァードの攻撃は、へたをすると戦車の装甲ですら引き裂くことが可能である。エフェクトによる攻撃を無効化できるような防具はまず入手不可能といってよい。エフェクトで圧倒的な防御力を得ることも可能だが、防具やエフェクトの防御力を無効にできるエフェクトが多数存在するため、やはり攻撃有利は揺るがない。
 結論として、このルールでは攻撃が圧倒的有利であり、(一部のシンドロームを除いて)ダメージを受けないですませることはほぼ不可能である。クリティカルによる達成値の激変があるため、多少の能力値差もクリティカルで逆転可能である。このルールにはダメージを軽減するヒーローポイントのようなルールは無いため、戦闘中のキャラクターは常に即死の危険性にさらされている。


§侵蝕率が上昇するタイミング

 侵蝕率は以下の状況の時に決められた値だけ上昇する。これは判定の成否やシーンへの登場順にかかわらず必ず適用される。

 ・シーンに登場した(1d10上昇)
 ・衝動判定(<RC>で目標値7)を行った(2d10上昇)
 ・エフェクトを使用した(所定の数値分上昇)
 ・リザレクトの発動時(回復したHPと同じだけ上昇)


※侵蝕率上昇の注意点

 侵蝕率が上昇するということは、とりもなおさずレネゲイドウィルスが活性化していることを意味する。ということはPCとしては何か起きているというように考えるべきだろう(セッションとしてもPCが登場するシーンは何か起きるシーンのはずだ)。レネゲイドウィルスの活性化は、オーヴァードにはある程度感知できるらしいので、状況を積極的に分析し、事件の解決に乗り出す必要がある。
 GMが注意しなければならないのは、無意味なシーンを繰り返していてはあっという間に侵蝕率が上昇してしまうということである。シナリオも小さなシーンを刻むのではなく、できるだけ大きなシーンをつないでいくことでシナリオを展開する必要がある。
 侵蝕率は簡単に上昇する。特に戦闘を行えば20〜40ぐらいはすぐに上昇してしまう。これを考えると、シナリオはシーンの区切りをはっきりと、しかも確実なシナリオ展開が要求されているということであろう。
 実際のシナリオ上では、登場による侵蝕率の上昇にはなんらかの演出があった方が説得力があるだろう。例えば「心臓がドクンと鳴って不気味な波動を感じた。1d10侵蝕率を増やして」というようにである。これによってプレイヤーは何かが起きつつあることをはっきりと認識するため、シナリオへ引き込む良いきっかけになる。
 PCからすると、正気を保ったまま生き残りたければ、常に侵蝕率の上昇に注意しなければならない。何か事件を感知したなら、ダブルクロスのコンセプトどおり、”自分の日常を守るため”に積極的に行動する必要がある。いくらロイスがあったとしても、シナリオの展開でロイスは簡単にタイタス化するし、侵蝕率が行き過ぎると強力になるかわりに確実にNPC化を迎えることになる。また、侵蝕率が100%を越えるとリザレクトが発動しなくなるので、注意が必要である。侵蝕率が100%を越えている状態では、あらゆる能力が強力になるが、HPは変化しない。強力になっても一撃で粉砕されることはよくある。最初は再生して生き残れたとしても、侵蝕率が100%を越えた時点で確実な死が約束されているといっても過言ではない。


※エフェクトと侵蝕率

 エフェクトを使用すると、その成否にかかわらず所定の数値だけ侵蝕率が上昇する。エフェクトのコンボによってとてつもなく強力な攻撃を繰り出すことが可能だが、侵蝕率が激増するというペナルティーがあり、下限値が10を越えてしまうとクリティカルしないと発動失敗という結果に終わってしまう。これはトーキョーN◎VA系列のルール(トーキョーN◎VAシリーズ、ブレイド・オブ・アルカナ、テラ・ザ・ガンスリンガー)にありがちな必殺系コンボの横行をやんわりと防ぐ効果を持っている。一言で表すなら”ハイリスク・ハイリターン”ということか。
 壊滅的な破壊力を発生させてもあまり意味が無い点としてはHPの低さの割にダメージが桁違いになるということが上げられる。PCと同じ計算で作成されているキャラクターは、HPが多くても20しかない(NPCだと20を越えていることもある)。しかし、それでも達成値が20もあれば、2回命中すれば倒せてしまう。振るダイスが4個を越えると、達成値20以上は意外に出る。エフェクトでクリティカル値を下げ、ダイスを増やしたとすると、戦車も一撃というダメージを出すことが可能だ。ところがオーヴァードには通用しなかったりする。ルール上、HPは必ず0までしか低下しない。しかも侵蝕率が100%未満ならリザレクトが発動するため、エフェクトを多数組み合わせたコンボによる絶大ダメージで倒したとしても、相手は死亡にはならない。しかも、リザレクトが発動するかぎり、オーヴァードはダメージで気絶しないのである。
 結果として、超強力なエフェクトのコンボは、侵蝕率の激増、成功率の低さ、相手のリザレクト能力を加味すると、”ハイリスク・ローリターン”と言わざるをえない。

 ここまで解析すると見出せるのが、行動不能系のエフェクトである。相手を瞬時に無力化できるエフェクトは、リザレクト能力を発動させずに相手を倒すことができるため、肉弾戦ではなく単発の行動不能系エフェクトで戦うタイプのキャラの方が若干有利であろう。とは言え、肉弾戦メインのキャラクターの方が圧倒的に強いこともあり、そのバランスは微妙である。


※侵蝕率とロイス

 シナリオ終了時、侵蝕率が100%以上になっていたらキャラはジャーム化する。これを防ぐためにロイスあるのだが、ロイスの数は7個が上限であり、一部はセッション中にタイタス化することもある。
 通常はロイスの数d10分減らせるが、侵蝕率による経験点を破棄する場合は、ロイスの数×2d10減らすことができる。期待値は以下のとおり。

ロイスの数 期待値 経験点破棄の時
5.5 11
11 22
16.5 33
22 44
27.5 55
33 66
38.5 77

 上記の表から、ロイスの数と侵蝕率の限界が見えるはずである。確実に維持するための上限は(ロイスの数−1)×5+100%あたりになるだろう。


§シンドローム

 ここでは各シンドロームの性能を分析する。

(1)エンジェルハイロゥ(光操作と知覚強化/エネルギー操作系)

 エフェクトは主に光操作と視覚強化に2分される。レーザー攻撃、幻惑防御、光剣生成、透明化など、端的かつ有用なエフェクトが多い。エフェクトそのものは様々な用途に対応できるものを一通り持っているので便利である。光を溜めてエフェクトの判定のダイスを増やすことも可能。

 エネルギー操作系3種の1つであるが、自分のエフェクトを自分で効率良く打ち消せるエフェクトがあるので、相手が同一シンドロームだった場合は、かなり辛いものがある。このような場合、雑種ならもう1つのシンドロームでカバーしていく必要がある。

 射撃がメインであるこのシンドロームは、純血種にすると【肉体】が低くなる傾向にある。回避を行うためにも、そこそこ【肉体】のあるワークスにする必要があるだろう。


(2)ブラックドッグ(電気操作と電子機器操作/エネルギー操作系)

 電撃と電気と電子機器を操作する。唯一、義肢を取得できるシンドロームでもある。義肢の利点はなんといっても素手の攻撃力が高いことであろう。その他にも武器内蔵系エフェクトを取得する場合には必須である。エフェクトは攻防一体、作業も可能という幅広さを持っている。しかし、メインとなる電撃攻撃は、相手の回避にボーナスが付くなど、命中率に疑問が残る(MAXボルテージの組み合わせでクリティカル値を下げていく必要がある。強力な電撃ほど避けられやすいのだ)。

 エネルギー操作系3種の1つであるが、自分のエフェクトを自分で効率良く打ち消せるエフェクトがあるので、相手が同一シンドロームだった場合は、かなり辛いものがある。このような場合、雑種ならもう1つのシンドロームでカバーしていく必要がある。

 このシンドロームは、純血種にすると【肉体】が低くなる傾向にある。回避を行うためにも、そこそこ【肉体】のあるワークスにする必要があるだろう。しかし、エンジェルハイロゥとは違い、回避用のエフェクトには強力なものが存在するため、【肉体】が多少低くても大丈夫である。


(3)ブラム=ストーカー(血液操作と疑似生命作成/物質操作系)

 このシンドロームのエフェクトは血の操作による攻撃/防御/武具生成と、従者の作成とその能力強化の2種類に分類される。中にはゆっくりとダメージを回復する能力も含まれる。武具生成系のエフェクトはHPを減らす必要があるため、実用性の判断は難しい。従者の作成は便利だが、欲張って数を作ったり、能力を付加しすぎたりすると、侵蝕率の上昇が激しくなってしまうことに注意する必要がある。

 従者との分離行動が可能なため、純血種にしてもかなり使いものになる。純血種にすると、【感覚】が低くなってしまう。従者を上手く使うにはイニシアティブが重要なので、ここをカバーしていくようなワークスにするのがいいだろう。


(4)キュマイラ(肉体構造の変更による身体強化/身体強化系)

 全シンドローム中、白兵戦ではトップクラスの戦闘能力を誇る。様々な事態に対処するためのエフェクトが備わっており、肉体的には最強のシンドロームであろう。特筆すべきは身体変形系エフェクトで、1シーンの間持続するものが複数存在することである。そのどれもが強力で、使い勝手が良い。ただ、射撃戦には弱く、足を止められてしまうと劣勢に陥りやすい。

 このシンドロームの純血種は、【精神】がどうしても低くなってしまいがちである。以外に<意志>や<RC>で判定するエフェクトがあり、ワークスで【精神】をカバーしていく必要があるだろう。


(5)エグザイル(肉体の軟体化/身体強化系)

 キュマイラが戦闘能力に特化しているのに対し、こちらは便利系の能力が多い。主に潜入や精密作業などで威力を発揮する。戦闘においても優秀で、腕を伸ばして遠距離攻撃も可能である。エフェクト自体は身体変形を主としているが、用途が幅広いので特定の局面で的確に活躍できるだろう。欠点としてはその変形によって生理的嫌悪感をもたれるかもしれないということだ。

 このシンドロームの純血種は、【感覚】がどうしても低くなってしまいがちである。【感覚】が低いのは、イニシアティブが極端に遅いということでもある。また不意打ちにも弱くなるので、そのあたりの考慮が必要だろう。


(6)ハヌマーン(高速運動と振動操作/身体強化&エネルギー操作系)

 身体強化とエネルギー操作を併せ持つ、強力なシンドロームである。特に振動操作系は、範囲攻撃と装甲無視の効果があなどれない。このシンドロームが1枚だけでも、装甲対策には十分である。欠点としては命中率を強化するエフェクトがハイリスクなものしか無いことだろう。

 このシンドロームの純血種は、キュマイラと同じく【精神】がどうしても低くなってしまいがちである。高速移動などを使いこなすにはやはりイニシアティブが重要なので、ワークスで【精神】をカバーしていく必要があるだろう。


(7)ノイマン(脳力強化/万能系)

 2つのエフェクトですべての判定のクリティカル値を下げられるという驚異のシンドローム。そのかわり地味なエフェクトばかりで、他のシンドロームのように超人的な効果を期待できない。エフェクトの約半数が戦闘用にもかかわらず、【肉体】が低くなるので、雑種にする場合は【肉体】が高いシンドロームとの組み合わせが良い。

 このシンドロームは、純血種にすると【肉体】が低くなる傾向にある。戦闘はどうしても【肉体】で判定する比重が高いため、ワークスでカバーする必要があるだろう。あとは効果の地味さゆえに活躍のしがいがないかもしれない。


(8)サラマンダー(熱操作/エネルギー操作系)

 基本的に熱を操作するシンドロームである。それゆえに高温も低温も操作できる。氷炎あわせて攻撃系のエフェクトが多才である。全体的な攻撃力は高い。

 エネルギー操作系3種の1つであるが、自分のエフェクトを自分で効率良く打ち消せるエフェクトがあるので、相手が同一シンドロームだった場合は、かなり辛いものがある。このような場合、雑種ならもう1つのシンドロームでカバーしていく必要がある。

 このシンドロームは、純血種にするとバランスよく【能力値】が延びるので、ワークスとの組み合わせとエフェクトの取り方によって様々なキャラクターが作れるだろう。熱血系キャラが多くなりそうだが、氷系エフェクトでまとめてクールにいくのもいいかもしれない。


(9)ソラリス(化学物質合成/物質操作系)

 物質操作系ではあるものの、物理的な戦闘能力は低い。どちらかというと戦闘以外でテクニカルな活躍をするのがメインといえるだろう。他のシンドロームが物理的な効果であるのに対し、このシンドロームは精神をターゲットにしたものが多い。また治癒/蘇生のシンドロームが(安いコストで)あるのも見逃せない。

 このシンドロームの純血種はどちらかというとNPC向けである。他のシンドロームと同じように考えていると、何もできないキャラになりかねない。PCとして使うなら雑種にした方がバランスがとれていいだろう。


§ダブルクロスにおけるセッション進行

 このゲームにおけるセッション進行は、基本的に以下のシーンに分割すると処理しやすいだろう。

 A.オープニング:PCに一人ずつ導入シーンを設定
 B.クロス&リサーチ:PC/NPCとの出会いと情報収集
 C.インターミッション:サブイベントと休憩時間(アイキャッチとも言う)
 D.クライマックス:事件の真相へむけての急展開
 E.エンディング:PC毎に後日談を演出

 この内、A〜Dをそれぞれ1シーンと考えて、1セッション=4シーンぐらいの計算でシナリオを進めていくのがいいだろう。そうするとシーン登場における侵蝕率の上昇は、4×5.5=22%ぐらいだと仮定できる。PCの基本侵蝕率は平均して30%ほどなので、基本侵蝕率+シーン登場分で50%を越える計算である。
 シナリオの構成によっては、BかCを複数回にする必要があるかもしれないが、そうなった場合、それだけ侵蝕率が上昇することになるので、あまり何度も何度もシーンを変えるのはやめておこう。シーン登場による侵蝕率の上昇は個人差があるが、シーンを伸ばすということは侵蝕率が100%を簡単に越えることになる。B〜Cは多くても4シーンぐらいにしておくべきである。

以下、個別に各シーンのポイントを解説する。


A.オープニング

 PCに一人ずつ導入シーンを演出する。ここでの侵蝕率上昇は、何かが起き始めているという事をプレイヤーに強く印象付けるといいだろう。このシーンでのポイントは2つある。

 a.シーンに登場していないプレイヤーにも見ておくように言う。
 b.導入の内容を微妙に重複させ、PC同士で連絡を取り合うきっかけを作る。

 aは何が起きているのか、客観的にプレイヤーに見させることで、無駄な情報再提示の時間を省き、暇なプレイヤーを無くさせるという目的がある。
 aを言い含めておくことでbの内容が生きてくる。特に出番が後のプレイヤーは、他のPCがどんな状況なのかを知ることで何が起きているのかをやんわりと知ることができる。先に導入を終わったPCは、可能なら他のPCの導入に登場することもでき、PC同士の合流とシナリオ展開の促進を促すことができる。
 bで発生する展開は、他のPCとの接触を促す内容を含めておいた方がいいだろう。エージェントのキャラクターなら「今回の件についてはPC2から参考意見が聞けるかもしれないので、よかったら接触してみたまえ」というように、露骨に促してもよい。
 オープニングでは、次にPCがどう行動すればいいのか、その指針を示すことが重要である。その展開は少々強引なものの方がいいかもしれない。


B.クロス&リサーチ

 このシーンはPC同士の合流、NPCとの出会い、そして事件の解決へむけての情報収集をさせることにある。ロイスを結ぶことができるような今回の主要NPCは、このシーンまでに登場させておく方がよい。
 オープニング・シーンでPCへの行動指針が提示できていれば、各プレイヤーは他のプレイヤーの導入が終わった時点で、どう行動するかを考えているはずである。オープニング・シーンが終了するまでPCの行動を控えさせておけば、動けるようになった時点で即座に行動してくれるだろう。
 このシーンのポイントは『PC全員を一度出会わせて』というものである。一同に会することができないのなら、PC同士のつながりを作るために、部分的に交流を作るようにしておかなければならない。

 例えばプレイヤーがA、B、C、Dの4人いるとする。クロス&リサーチ・シーンでAとB、CとDが出会うような展開になったとすると、PCの行動による情報収集で、この2グループが接触を持つようにしていくのである。もしPCがバラバラになったとしても、AとC(もしくはD)、BとD(もしくはC)が出会うように誘導できれば、PC全員のシナリオ上でのつながりを作ることができたことになる。

 PC同士のつながりが作れたら、今度はPCが行動指針を見失わないように情報を与えていく。オープニングとクロス&リサーチの両シーンは、シナリオ上で最も時間を食うので、必要なら露骨な情報提供や偶発的必然も必要である。とはいえ、PC主導で事件が解明されていく方がいいので、時間が無い場合だけに限った方がいいだろう。


C.インターミッション

 このシーンではサブイベントと休憩時間を処理する。

 サブイベントとは、シナリオの本筋とは関係のない脇道への展開や、PCの選択肢のうちはずれにたどり着く演出の部分のことである。例えば2ヶ所のうちどちらかを調べないといけないのだが、先に選んだほうがはずれで、徒労に終わるということがあるような場合である。また荷物を取りに家に帰ったとき、家族に「早く帰ってきなさいよ」と言われるといったシーンを演出しておく。ギャグをかましたり、ちょっと雑談に入ってもいいだろう(セッション時間に余裕があればの話だが)。

 休憩時間は、30分番組でいうところの中間に入るCMのようなものだ。クライマックスに向けてトイレに行っておくことをオススメする。お菓子や飲み物で燃料補給をしておくのもいいだろう。あまり長いと暇になってテンションが下がってしまうので、休憩時間は5分ぐらいにしておくといいだろう。


D.クライマックス

 このシーンでは事件の真相へむけての急展開を行う。事件の真相や核に相当する情報を入手させ、PC達の行動が本格化するように誘導していく。多くの場合、このシーンでは戦闘が発生する。このシーンに突入した時点で、PCの侵蝕率が70〜80%になっていれば、展開としては上出来だろう。侵蝕率が低いと感じるようなら、衝動判定を引き起こすイベントを1つ起こせばよい。
 オーヴァード同士の戦闘は熾烈を極める。特に侵蝕率が100%を越えていなければリザレクトが発動するため、PCもNPCも死ぬことはない。逆に侵蝕率が100%を越えた時点が、その戦闘のラストターンだと言えるだろう。PCは侵蝕率が100%を越えても即座にジャーム化しないが、死亡はする。死亡したPCは、ソラリスの発症者が適切なエフェクトを取得していない限り蘇生できないので注意が必要である。


E.エンディング

 このシーンではPC毎にその後どうなったかを演出する。演出はPC/NPC一まとめでもよい。オープニング・シーンをPC毎に別々にやったのなら、エンディング・シーンも別々にやるといいだろう。その際、事件の後始末と今後どうなるかの描写を簡潔にしておくにとどめるだけでいいだろう。
 もし時間が無い場合、このシーンはまくってしまうという手もある。その場合は後日談を一まとめにしてしまおう。


§ダブルクロスにおけるシナリオ作成

 そのセッションに参加するキャラが事前に分かっていれば、シナリオを組むのは簡単だろう。ここでは参加するキャラが不特定な場合のシナリオの組み方を考察していく。

 まず、キャラがわかっている/わかっていないにかかわらず、シナリオとしては、ロイスを軸に組み立てていくのがいいだろう。そのシナリオに始めて登場するNPCよりも、PCに関わりのあるロイスを使った導入・展開の方が、PCの動機づけとしては使いやすい。
 そしてシナリオの基本プロットを考えた後、そのプロットと一致するロイスがあるかどうか探す。一致するロイスがあればそれを利用すればいいが、一致しない場合は、そのロイスのロイスをプロットに一致するNPCとして設定すればいい。そのNPCによってPCを上手くシナリオに導入できれば、あとは基本プロットにしたがってセッションをすすめていけばいい。

 このようなやり方はNPCを使った誘導シナリオなのだが、メインとなるNPCを1人か2人にして、NPCの操作にウェイトを置くようにプレイすれば、シナリオを進めやすくなるだろう。
 PCのロイスは全て使う必要はなく、シナリオと直接関係あるものだけにする。もしPCのロイスをほとんど使いたい場合は、ロイスのキャラの登場は1シーンのみで比較的短い登場にするべきである。NPCが多すぎると、メインとなるNPCの焦点がぼやけてシナリオのプロットを見失う可能性が高い。あまりGM経験が無いなら、メインとなるNPC(例えばヒロイン)を1人だけ設定し、戦闘する相手となる雑魚やボスなどはラスト以外ではほとんど登場しないようにすれば、NPCの操作とプロットの維持に集中できるので、やってみることをおすすめする。


§採点(減点式)

 ・セッション運営がちょっと息切れしやすい(−3点):

 総合評価:97点

 どこが息切れしやすいのかというと、侵蝕率のおかげでPCだけではなく、プレイヤーもGMも追い込まれていくというのがあるからである。侵蝕率自体が経験点、PCの強さ、PCの限界、シナリオ崩壊の予兆といった様々な要素を内包するため、ダブルクロスのセッションでは手際良くシナリオをすすめていく必要性を再認識させられる。
 他のTRPGではのんびりとできるセッションでも、ダブルクロスのコンセプトはのんびりすることを許さない。しかし、セッションを手際良くすすめていくのは元々GMの仕事なので、実はGMとして鍛えられるにはいいルールなのかもしれない。ダブルクロスのGMを(数値管理も含めて)しっかりできるようなら、他のどんなTRPGでも上手くGMできるだろう。


●感想など

 採点で最高点が出てしまいました。これはどういうことかと言うと、”ほとんど欠点らしい欠点の無いルール”だということです。ルールと世界観のマッチング、そしてGMをプレイヤーとシナリオをルールでコントロールできてしまうこの構成は、はっきりいって脱帽です。私が評価する市販TRPGの中で、間違いなく頂点に立っています。

 まず特筆すべきは行為判定でしょう。近年、1回の判定に大量のダイスを振るルールというのが出てきていますが、そのどれもが極めて処理速度の遅いものでした。しかし、ダブルクロスは「出目の中で一番大きいものを採用する」という手段によって、速度低下を免れています。これにクリティカルの振り足しルールを入れることで達成値が激変するため、ダイスを振るのが楽しく思え、しかも数値の硬直が無いために多少強い相手でもクリティカルで逆転ができるのです。例え能力値が低かったとしても、一定以上侵蝕率が上昇すれば振るダイスが増えるため、数値格差が思った以上に緩和されているのです。

 もう一つは侵蝕率です。これが世界観、キャラクターの暴走を食い止める、経験点につながる、弱いキャラクターでも引けを取らなくなる、セッション進行の目安になる、マンチキンを防ぐ、といった様々な効果を生んでいます。概念1つでここまで意味を持つものは他には無いでしょう。

 トーキョーN◎VAを始めとする、PCが超人的な特殊能力を持つルールっていうのは沢山ありますが、ここまでルールが統制能力を持っているTRPGは他にはありません。逆に他のルールはダブルクロスほど統制能力を持っていないので、マンチキンが横行したり、バランス崩壊を起こしやすかったりします。かくいう私もそれでやらなくなったルールがいくつもありました。


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