この作品の内容の主軸となっているのは、しばしば他のファンタジー作品がそうであるように、主人公の成長、それもどちらかと言えば精神的な成長過程である。
『ロードス島戦記』における主人公は少年(青年?)戦士パーンと、エルフの少女ディードリット(以下ディード)の二人です。パーンは剣を使うしディードは魔法を使えますが、彼らはまだまだ未熟で、ずっと普通の人に近い感じになっています(ディードは多少強いですが)。ここら辺が低レベルのPCという存在を表わしており、ゲーム小説の要素の一つといっているのでしょうね。ですが彼らの他にも登場人物達が生身の存在であることに変わりなく、個人々々が現実の人間のように悩んだり成長したりを繰り返すわけです。
しかしパーンは、初期は直情傾向が強かったのに、回増すごとに悩むようになったと思う。悩んで成長するのはよくあることだが、単純なのと踏ん切りがつかないのが極端のようだ。さっぱりした好青年から、必要以上の思いやりの人になったような気がする。まあ、それも成長のあかしなのかも知れません。アメリカの最近の小説の主人公もよく自問自答を繰り返してるしね。それでも自分の意志をちゃんとパーンは持ってるから立派だね。ついに王位を拒み続けたのは、王になりたがるあまたの強者達とは違い、新鮮な結末で良かったと思う。ただ、悩む様子をひきずりすぎたとは思う。途中に一、二度、思考の転換がほしかった。
こうした何事にも真剣になるパーンを、時には補助し、時には引っ張るのがディードです。長寿で美しく人間を見下してるはずの妖精エルフだけど、ディードは感情をむきだしにするパーンに魅かれるわけです。まあ、大概エルフが人間に魅かれるのはこのような理由のようだけどね。彼女は初期はちょっとすました感じだったけど、だんだん少女っぽくなってきましたね。やっぱり人間社会にいるうちに感情的になるのかも。でも、可愛くなったとも言えますね。ただ、エルフ的な思考というのが解説されてはいるのだが、行動からは実感しにくかった。
このカップルはどう考えてもパーンが先に死んでしまうので、それまでせいぜい仲良くしてくれって感じだね。
前記二人以外の登場キャラの中で、この二人の協力者で重要なキャラを何人か挙げときましょう。
まずは第一巻の主人公パーティーで、パーンとディード以外の四人を。
○エト
至高神ファリスの神官。温厚で真面目。パーンの親友。親友という割にはあまりそういうシーンが無かったと思うのは気のせいだろうか。ヴァリス王国のフィアンナ姫と結婚して、ヴァリス国王になる。そこら辺の過程はよく分からないが、多分姫のほうが先に好意を持ったのだと思われる。一介の村の坊さんが王になるなんて、すごいサクセスストーリーだと思うけど。性格は良い奴だが政争で中々支持を得られない、可哀想な人。
○スレイン
パーンの故郷ザクソン村に居た魔術師。のんびりしたマイペース型だが、読みは鋭い。ただ、深読みしすぎることはあるようだ。加えて、性格とは逆に結構積極的な行動もしている。フレイムの宮廷魔術師になったり、ザクソンの独立運動を起こしたり、レイリアと結婚したりと。ボケ役かと思いきや、実は格好いいキャラ。
○ギム
スレインの知り合いのドワーフ。行方不明になったレイリアを連れ戻すと、レイリアの母ニースと約束して旅に出た。スレインを訪ねたことからパーン達と旅をすることになり、カーラに乗っ取られたレイリアに会う。そしてレイリアをカーラから解放するのに命をかけて死亡。頑固オヤジさん。やっぱり若者ばかりの話には、ちゃんとした大人がいないと締まらないね。
○ウッド・チャック
中年盗賊。二十年も牢獄にいてスネちゃった人。人生に悲観的になった彼は、強い力を求めてカーラの本体に魅かれる。そしてカーラの本体であるサークレットをレイリアから外し、自分に着けてしまい、カーラに支配される。本当に盗賊っぽくてもっと格好良い中年のシーンが見たかったが、こんなものかな、という気もする。
以上が最初の主人公パーティーのメンバーです。続いてそれ以外の、主人公の味方の登場人物を挙げましょう。
○レイリア
大地母神マーファの高司祭。カーラに乗っ取られていた人。スレインと結婚し、トラウマを克服し、最終的にカーラを倒す強い女。普段は優しさを出していたが、要は大人の女ということかもね。
○カシュー
フレイム王国の王。元大陸の剣闘士で、ロードスに渡ってきて大活躍し王になる、ヒロイックファンタジーな人。気さくで強くて人間味のある、かっこいいオヤジ。後半他の君主からロードス征服の野心ありと疑われて警戒されるが、僕はむしろその方が面白いと思っていた。実際それを匂わせる感じもあったが、そこまでは踏み切らなかったらしい。他のキャラが薄味なせいもあるけど、とにかく印象の強いキャラ。
○シーリス
美人で男勝りの女剣士。男勝りといっても男性に免疫が無いのではなく、積極的に自分の外見を利用する手段を知っているところも良い。一時期ディードとパーンを取り合った(というか、シーリスの空回りのような気もするが…)が、最後はモスのハイランド公国の公妃になるところが、バイタリティーがあるなぁという気がする。ただ、あの男言葉は、ありがちであんまり好きではなかった。
○スパーク
フレイム王国の騎士。パーンに憧れているが、炎の部族の族長の血を引く、実は呑気ではいられない立場の若者。成長のためか、カシュー王には冷たくあしらわれるが、精神面とか、結構身近に感じられて好感の持てる奴。邪神戦争の鍵になるレイリアの娘ニースと、太守の秘宝を追って旅することになり武勲を挙げる。パーンとは違う騎士らしさもいい。
主な味方キャラは以上ですが、各国の君主や、高位聖職者なんかも味方になるので、注目しとくといいでしょう。