約束と絆 〜After〜





ぼんっ ぼんっ ぼんっ ・・・・・・・・

転がるボール。
初めて、ゴールネットを揺らしたボール。
あいつは見てくれていたんだろうか。
俺の最後の叫びを聞いていてくれただろうか。
今となっては、確認のしようがなかった。
歪んだ景色しか見えなかったから・・・・・・

その日から俺は早起きをするようになった。
バスケ部が朝練を始める前に体育館を使うためだけに、だ。
「あの」俺がだぜ?
なあ、広瀬。笑うだろ?
笑えよな。今、ここに来て、さ。

いつものところにいる幻の前で、いつもの練習をする。

五月ーーー初夏の陽射しが体育館の窓から照らしている時、10回やって1回は確実に入るようになった。

六月ーーー梅雨の静かな雨音をBGMに目だけはネットを追う。
初めて2回連続で決まる。

七月ーーー試験はそっちのけでネットを追う。
気持ちとは裏腹に、決まらずにじれる。

八月ーーー汗が流れ落ちるのも構わずに打ち続ける。
顔を流れているのが、汗なのか、涙なのかはわからなかった。

九月ーーー台風の中を突っ走って学校に。
風がやけにうるさい。

十月ーーー虫の音がとぎれとぎれに聞こえた。
ゴールネットを揺らすのも、とぎれとぎれ。

十一月ーー迫りくる進路に背を向けたまま。
ネットが三回連続で、揺れた。

十二月ーークリスマスイブ。
置いておいたケーキにボールが当たり、力が抜けた。

一月ーーー焦る気持ちの中で、5回連続を達成。まだ半分。

二月ーーーただ一人進路が決まらない男がここにいる。
しょうがないだろ?お前を置いたまま先には行けないからな。

そして、一年が過ぎたことになる。

三月ーーーーーーーー

「・・・くそ・・・」
今日は卒業式だ。
この日が来る前に決めておきたかった。
脇には卒業証書。
そう、さっき俺達の高校生生活に別れを告げたところだ。
その前にどうしても決めたかった。
確実に帰ってくる保証なんてない、それぐらいはわかっている。
でも、信じていたかった。
それを信じて貫くことこそが、俺とあいつとの絆のように思えたから。
そして俺は、一年それをやり続けた。
でも、間に合わなかった。
結局7回が精一杯だった。
そして、今日が最後だ。
俺と広瀬との思い出の場所。
明日からはここに来ることはできない。
せめて、最後の日だけでも、決めたい。
そのためにも、あいつに、会いたい。
声だけでも、聞きたい。
幻聴でもいいんだ。
頼む・・・・

「・・・何やってんのよ、あんた」
・・・「瀬」違いだ。
来たのも声を聞かせたのも七瀬だった。
「・・・見ればわかるだろ。シュート打ってるんだよ」
生返事を返す自分がやけに落ち着いているのを感じていた。
今八回連続。記録更新だ。
すごく集中している。
「暇ねえ・・・別に実業団に入るわけでもないのに?」
・・・極端だよ、お前は。
「十回連続で決めたらなにか「いいこと」があると思ってな」
気持ちは集中しているのに、七瀬の相手をしている。
これって、リラックスしているからなのか?
なら、やれるかもしれない!

しゅっ!

広瀬の教えをひたすら忠実にやっていた。
今回も。

ばさっ

・・・これで、九回。
「へえ、やるもんね。これで何回目?」
「・・・あと一回だ」
転がっているボールを拾いあげ、ゾーンに。
・・・大丈夫だ、やれる!
「うっそお!」
「マジだって」
ボールを弾ませてリズムを取る。
「いくら私が今来たからって、そんな嘘つくことないのに」
・・・失礼な奴だ。
なら、こっからでも十回連続で決めてやるよ!
「だって・・・・・」
膝をやわらかくして・・・
「そんなことあんたには出来そうにないもの」
かたっぽの手は添えるだけ、そして軽くスナップを・・
「広瀬じゃあるまいし」

え?

その時、わずかに離すタイミングがずれた!

「やべ・・!」
届かないっ!
ゴール前に落ちる!

目を閉じる!

ぼむっ!

ばささっ!

ぼんんっ ぼんんっ ぼんっ・・・・

「・・・たく、ツメが甘いんだから・・・」

・・・・・・え?

「集中することが大事だって教えたでしょ?」

声がする。後ろから。
それはずっと待ち続けてきたもの。
一年間待ちこがれたもの。

「どこ行ってたのよ、広瀬!」

振り返る。
そこにいたのは・・・

END

・・・・・AND

「駄目だな、やっぱり」
「本当駄目」
「教えて、くれるか?」
「・・・もち・・ろん・・・よ・・・」

折原の温もりを、
そばに折原がいる喜びを感じながら、
言いたかったことを告げた。

「一生かけてねっ!」

切れない「絆」という名前の鎖に「約束」という名の鍵をかけ、
私たちは再会した。

TRUE END




EXIT



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