早すぎる「さよなら」 〜その狭間〜







 
「――俺の名はガイ! ダイゴウジ=ガイだぁぁぁぁぁっ!」
 ヤマダさんが叫んでました。
 訳の分からない事を叫びながら、ヤマダさんがエステバリスで遊んでいます。
「……バカ?」
 誰にも聞こえないように呟いてみます。
 相変わらずヤマダさんはエステバリスで遊んでいます。
「ガイッ、スーパーナッパァァァァァッ!!!」
 あんなバカなこと、私はしたくないです。
 でも、楽しそうです。
 バカでも、心から何かを楽しめるヤマダさん。
 ……少し、羨ましいです。――真似したくはないですけど。
 あ、こけました。
 タンカーで運ばれていってます。
 また、足でも折ったんでしょうね、きっと。
 やれやれです。


「ヤマダさん」
 薄暗い、ヤマダさんの部屋。
 辺りには“げきがんがー”とか云うアニメの人形やらがいっぱいです。
 奥のほうから何やら叫び声のようなものが聞こえてきます。
 ――少し、五月蝿いです。
「俺はガイだ!」
 大きなスクリーンに映された“げきがんがー”から目を離す事なく、ヤマダさんが言いました。
 いろんなものに囲まれた中心に、ヤマダさんの布団があります。
 同じ部屋のテンカワさんはいません。――留守のようです。
 てくてくと歩いて、ヤマダさんの布団の隣にちょこんと腰を下ろしました。
 スクリーンに流れる、何やら盛り上がっている“げきがんがー”のシーン。
 きっと、この辺りがラストなんでしょう。
 エンディングを見終わって、泣きながら山田さんがスクリーンを消します。
 ごしごしと涙を拭いて、ヤマダさんがこっちを向きました。
「――で。ホシノ、オレに何か用か?」
 私をホシノと呼ぶのは、ヤマダさんぐらいでしょうか。まあ、どうでもいいけど。
 用、と言うようなものはありません。
 強いて言うなら――
「…………まい」
「は?」
 声が小さすぎました。
 今度は少し大きく言います。
「……お見舞い。――ヤマダさん、足、折ってましたから」
 何も持たずにお見舞いって言うのも、どうかと思ったけど。
 何を持っていったらいいか分からなかったから、結局何も持たないまま。
 まあ、私、少女ですから。
「そうか」
 ヤマダさん、笑ってました。すごく嬉しそうでした。
 いつもみたいに“俺はガイだ”とは言いませんでした。
 少し、照れます。
「ありがとう」
 私、お礼を言われるような事してません。
 ただ、来ただけですから。
「――ゲキガンガー、見るか?」
 こくんと頷きました。
 スクリーンに映し出される“げきがんがー”。
 ヤマダさんがスクリーンに釘付けになっています。
 とても楽しそうな、いきいきとしたヤマダさんの横顔。
 少しだけ、ヤマダさんに近づきます。
 ヤマダさんは気づきません。
 もう少し近づきます。
 まだ気づきません。
 もう少し。
 でも、気づきません。
 ――やっぱり、バカ。
 でも、羨ましいです。
 なんだかんだで楽しんでる私も、バカかもね。
 もう少し、バカになってもいいかも。


 ヤマダさんにお礼を貰いました。
 大きなぬいぐるみ。
 渡す時、照れくさそうにしてました。
 渡す時、名残惜しそうにもしてました。
 そんなに手放したくないんなら、私にあげなきゃいいのに。
 でも、貰います。
 その時、私、ちゃんと笑ってましたか?
 笑えたと思ったのは、私の気のせいではなかったと思いたいです。
「ありがとうございます」


 ヤマダさんが死にました。
 裏切り者さんに拳銃で撃たれて死んじゃったそうです。
 御愁傷様です。
 寂しい寂しい、ナデシコでのお葬式。
 無表情なまま、私は部屋に帰ります。
 殺風景な私の部屋。
 ベッドの上に、ぬいぐるみが一つだけ。
 “げきがんがー”のぬいぐるみ。
 私の半分よりもまだ大きい、大きな大きなぬいぐるみ。
 抱きしめて、顔を埋めます。
 私、泣いてました。
 泣いた記憶は一度もなかった。
 泣いた所で、解決するものは何もないから。
 涙で何かを誤魔化すなんて、嫌だから。
 でも、なぜか止まらない涙。
 ぬいぐるみの手を上下に動かしながら、ぽつり。
「――げきがぁ〜ん、ぱぁ〜んち……」
 ふと思い出す、ヤマダさん。
 涙が止まりました。
 笑えました。
 やっぱり、私もバカです。
 この船、ほんと……
「バカばっか」

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〜後書き兼裏話〜
 スーパーロボット大戦IMPACT発売記念・突発的ナデシコ小説(笑)
 過去に一度だけ見た覚えのある、もの凄ぇマイナーなガイ×ルリ……つーか、ルリ→ガイ。
 なんか久々にナデシコ見てたら、個人的にこれが一番ありかな、と。
 しかしながらスパロボは、第十三話(泣) 熟練度上げに時間掛かり過ぎ(;´Д`)
 ナデシコはまだ遠ひ……。

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