――この話は、童謡《森のくまさん》を地中海より深く考えた論文もどきでございます。
もし、「私、《森のくまさん》大好き(はぁと)」と言う方や、「《森のくまさん》は俺の魂(ソウル)の歌だぜ!」と言う方にはショックが強すぎるかと思いますので、あまりお勧めできません。
ならびに、《森のくまさん》作詞作曲関係者の方に「ちくる」などもご遠慮願います。
あと、JASRACに言いつけるのも…ひいっ(恐れの声)
と、とにかく、心の準備の出来た方から、納豆飯でも食しつつご笑覧ください。
《森のくまさん》論
1 ある日 森の中 くまさんに出会った
花咲く森の道 くまさんに出会った
何故、出会った娘(二番に「お嬢さん」とあることから、十中八九は女の子であることが分かる)は驚かないのだろう。
もし、普通の人ならお約束である"死んだふり"をしなければならない。これはまるですり込みのように我々の心に深く刻まれている対熊用の防御策だ。
しかし、彼女は気丈にも「くまさんに出会った(はぁと)」などと言っている。
それは彼女の肝が地球のように大きいのか、はたまた素手で熊を倒せる自信があるのか…。
いや、これでまだ驚いてはいけない。まだこれは恐怖の童謡《森のくまさん》の序章にすぎないのだから…。
それにしても、出会ったところは一体何処なのだろう?
2 くまさんの言うことにゃ お嬢さんお逃げなさい
すたこらさっさっさのさ すたこらさっさっさのさ
まず、「熊が喋った!(ガビーン)」と思うと思う。
しかし、この二番にはそれ以上の《森のくまさん》最大の謎が隠されているのである。
取り合えず、"くまさん喋る"と言うことを取り上げてみよう。
くまさんが喋るのはそれほど敵視してはいけない。世の中にはリリカルもリリカルなイソップ童話やグリム童話(怖い)などの名作もあるのだ。
しかも、くまさんは妙に色男(熊)である。
「お嬢さん、お逃げなさい」と言った時のくまさんは、きっと薔薇の花を手に、口元から出る牙をキラリ☆と光らせていることだろう。
そして、最大の謎とは、《何から逃げるか》である。
想像してみて欲しい。
花が咲いている道をルッタルッタ歩いていたら、いきなり熊が出てきたかと思うと突然「逃げろ」という。
これはくまさんの出没にも動じない彼女でも流石に恐怖したに違いない。
我先にとすたこらさっさ逃げている。
「お嬢さん、お逃げなさい」
一体何から…。
これは分析しようにも、後ではさっっぱり語られない、通りすぎちゃうようなささやかで大きな謎である。
3 ところが くまさんが 後からついて来る
とことことことこと とことことことこと
とことこと軽快についてくるくまさん!
後ろから追いかけてくるくまさんの恐怖に、あなたは耐えられるだろうか!?
「お逃げ」という対象は自分だったのか!
どうなんだ、くまさん(色男)!
ストーカーか!?
4 お嬢さん お待ちなさい ちょっと 落し物
白い貝殻の 小さなイヤリング
追いかけてきた理由は、彼女の落としたイヤリングを渡すためであった。
恐らくくまさんのでっかい手では拾うのに苦労しただろう。涙、涙だ。
それで密かに浮上していた"くまさんストーカー説"は、はいっ消えたー(なるほどザワールドの愛川欽也風)。
では、くまさんはナンパ師なのだろうか?
それだと色男にも納得がいく。
5 あらくまさん ありがとう お礼に歌いましょ
ララララララララ ララララララララ
よりにもよってお礼に歌を歌うとは…。
"苦労"イヤリングが歌と引き換えになるなんて…。
…彼女に、もう何も言うことはない。
どつかれても文句は言えないのである。
相手はくまさんだ。ちよっと「なんでやねん」とどつかれただけで彼女の命は危ういのだ。
《森のくまさん》はここで終わっている。もしかしたら、彼女はくまさんのつっこみの餌食になってしまったのかもしれない。
いや、腕に自信のある彼女だ。恐らく返り討ちにして、声高らかに笑っているのかもしれない。
以上の結果、やはり思ったとおり《森のくまさん》は恐ろしい童謡となった。
見えない恐怖から逃れろと言うくまさん!
お礼にと歌を歌い出す少女!
怪奇!トンネルに出る幽霊の正体は!?
地獄!篠塚(仮名)家の嫁姑問題!
吉田くん!お茶!
しかし、本当に恐ろしいのはこんなことを考えている私なのかもしれない…。
《了》
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