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春の月明かりに見守られてお前は生まれれてきたんだよ お前を愛おしそうに抱く母さんは、本当に幸せな顔をしてた
あれは、日曜日まだ三才にもなってない お前が夜中に知恵熱を出した時だった。 育児マニュアルを引っ張り出して、読んではみるものの おろおろしてしまって、とにかく、お前を病院 連れて行こうと月明かりの下、自転車を走らせて 病院に駆け込んだがそこは、皮膚科だった。
小学五年生の夏休み、それまで全く泳げなかった おまえが毎日学校のプールに通って8月31日になって やっと25mプールを泳ぎ切ったその時の屈託の無い 真っ黒に焼けた笑顔は今もわすれられない
あれは、お前が中学2年の時かなぁ 俺が仕事から帰って来たら、母さんが機嫌悪そうに 「あの子に言ってやって」と俺に話し掛けた 聞いてみると、母さんがお前の部屋を掃除していた 時にベッドの下からスケべな本を見つけたと、、、 俺は、お前の頭をこずいた後こう呟いたっけ 「母さんに解らない様に見ろよな」と
そうそう、お前が高校3年になって医者に成りたい と言った時はびっくりしたぞ 俺の息子だから医大に入れる訳ないと思ったのが なんと合格しているではないか。 医大は入学金や授業料が高いんだぞと苦い顔をお前に見せたな でも本当は喜んで金策に走ったんだぞ
そしてお前の夢が叶ってお前が医者になり 民族紛争の激化する中 医療ボランティアとして最前線で 沢山の人の命を救う仕事に就いて そして お前は現地から手紙を書いたな 「今度、春に帰ってくる、旨い酒でも飲みに行こうよ」 と でもお前は帰って来なかったな。 外務省から夜中電話が掛かって来て「貴方の息子さんが 医療作業中、流れ弾に当たってお亡くなりになりました」と
砂を噛む様な、サラリーマン人生、何年も 送っていたら季節感さえ薄らいでしまう。 会社が終わり春の月明かりの下を家路へと 向かう。 空には、真ん丸お月様、 俺は独りこう呟いた 「今夜はお前と男同志の話しがしたいなぁ」 俺は、涙が溢れるのを拒むように顔をお月様に向けた そして、俺は、お前の好きな特上の大吟壌をかって家路へと 就いた (了)
※(この話は、フィクションです。実際の名称等とは一切関係ありません) |