大黒天の宝物

打出の小槌
 大黒天が右手に持っているアレ。これを持って振ると望みの物が出てきたり願いが叶ったりするという、日本昔話最強のマジックアイテム。ほとんどドラエもんをマインドコントロール(←ロボットじゃないのか?)した上に場所を取らないようコンパクトに圧縮したというトンデモない代物。「一寸法師」の昔話からもわかるように、これさえあればナイナイの岡村がジャイアント馬場二世になることも可能なのである。(意味はないかもしれないが。) 一応神様なので扱いには苦労しそうな七福神より、打出の小槌があった方が遙かに役立つことは間違いない。
 ただし、これだけ有名なマジックアイテムなのにそのルーツがいまいちよくわからない。第一、大黒天は最初から打出の小槌を持っていたわけではない。大黒天が日本に入ってきた時には袋こそ持っていたが、その片方の手には何も持っていなかった。
 「大日経」に説かれる戦闘形態大黒天の姿が甲冑を着込んで「宝棒」を持っているため、一応「宝棒」が打出の小槌のルーツと考えられる。しかし、なんで棒が小槌に変化したのかはよくわかっていない。おそらく労働の象徴として「槌」が選ばれたのではないだろうか。(大黒天は農業神でもあるので、「土」=「槌」だという説もある。)
 それから日本の昔話を見る限りでは、たいてい鬼が持っていたりするので、この世の物ではなく異界に存在するものらしい。大黒天が「暗黒の破壊神」であることを考えると、元来はこの世界の人間が使ってはいけない物なのかもしれない。
 ちなみに一寸法師に使ったという打出の小槌だが、京都・宝積寺の小槌の宮のご神体がそれだとされている。(日本テレビでやっていた「何でも鑑定団」のパクリ番組にも登場していた。) 祈祷料を払うとこの打出の小槌でどついてくれるらしいので、幸せになりたい人は訪ねてみてはどうだろう?
 しかし、打出の小槌が本来異界の物であることを考えると、意外と「幸せになるための呪い」がかかったりして。金持ちになるために働き通すようになり、少しでも休もうとすると闇の中から大黒天が現れて「働けィ!」と叱咤する。そーだ、休載がちの漫画家や遅筆の作家の所に打出の小槌を持っていけば、かなりの人間が幸せになれるのではないだろうか。へたすると本人がどうかなるかもしれないが。


 打出の小槌と共に大黒天を象徴するのが「大きな袋」である。あの中に何が入っているのか気になるところだが、三つの説がある。
★「黄金」
 インドの南海諸国の寺院で崇拝された大黒天像は「金嚢」を持っていると書物には書かれている。つまりあの中には「黄金」(たぶん砂金)が詰まっているのだ。確かに人間にとってはかなり嬉しいもの。しかし、あれだけの金が一度に放出されたら、金相場がだいぶ痛手を負うだろうなあ。
★「米」
 大黒天は食料神であり、農業神でもある。すると当然、米(たぶん稲籾)が入っていると考えるのが当然。稲が豊かに実ることが日本における富の基本だったことを考えれば、これが一番正しい説だろう。ただ、米のブランドが気になる。大黒天だけに全部「黒米」だったりしたら自然食品の店にしか売れなさそうだ。
★「神様の身の回りの物」
大黒天には大国主命の神格も少なからず入っている。大国主命といえば兄神たちの荷物を入れた大きな袋を持たされた姿が印象的だ。つまり、大黒天の大きな袋も大国主命の袋のイメージから来たという説もある。だとすると、大黒天の袋の中にも神様の身の回りの物が入っているということになる。まあ、強力な呪力を放つマジックアイテムが入っている可能性もあるが、あるいは「はっ!? これは神のフンドシ!」なんてことがあるかもしれない。(何かイヤ)

闇の中に消える