福禄寿の宝物
☆杖
福禄寿の絵を見ると、木の枝そのままを利用したような杖を持っている。ただし、魔法使いが持つ杖のように、何かの呪力を発揮するという話は聞かない。老人の持つ単なる杖のようだ。
ただ、福禄寿が杖を持っているのはそれなりの意味があると思われる。それはズバリ「老賢者」のシンボルであろう。
ユングの説だったか、人間の無意識下には「人々を教え導く老いたる賢者」のイメージが刷り込まれているという。その賢者は老人で長い髭を生やし、白か黒の衣をまとっていて手には杖を持っている。よく日本昔話で「神様」が出てくるとこんな姿をしているのも、老賢者の意識の投影かもしれない。福禄寿が杖を持っているのも、老賢者のイメージが影響しているのだと思われる。でも、西洋人のイメージの中にいきなりこんな頭の長い老賢者が出てきたら「怪シサ大爆発デース!」とパニック起こすだろうけど。
ふと思ったのだが、日本で「人々を教え導く老いたる賢者」の一番の理想はやっぱり水戸黄門だろうなあ。黄門様も杖持ってますし。
ところで私はTVで黄門様が襲いかかってきた悪人を杖でド突く姿を見たことがある。ちなみに水戸黄門こと徳川光圀は若い頃は傾き者で相当暴れ回っていたという。すると黄門様の杖は、印籠が通用しない悪人が出現すると黄門様の目つきが妖しくなり「傾き者時代に何人もの相手を血の海に沈めてきた、この光圀の杖、見事受けてみるか!?」と叫んで悪人を叩きのめす最終兵器なのかもしれない。
ひょっとすると福禄寿もキレると「この福禄寿の杖、受けてみせるか!?」と叫び、恵比須あたりが慌てて止めに入ったりして……
☆巻物
福禄寿の杖には巻物が結びつけられている。また福禄寿が直接巻物を手に持っている像を見たこともある。おそらく福禄寿にとって一番のマジックアイテムはこの巻物だろう。
で、一体、福禄寿の持つ巻物には何が書かれているのだろう? 見せてもらったことがないのでよくわからないが、福禄寿が「南極老人星の精」だということを考えればある程度の予測はできる。おそらく福禄寿の巻物に書かれているものは「人々の寿命」だ。
古来より中国では「北斗星が死を司り、南斗星が生を司る」とされてきた。占い師から「あなたの寿命は十九年」と判断された男が、北斗星と南斗星の精が碁を打っている所に行って食べ物を供え、南斗星の取りなしにより自分の寿命を記した書を「九十年」と書き換えてもらったという伝説がある。
おそらく「南極老人星の精」である福禄寿が持つ巻物もそれに似たものだと思われる。
実際、都七福神の一つである京都の赤山禅院では「泰山府君と福禄寿は表裏一体」だとしているが、泰山府君という神は元々は人々の死を司る神なのだ。悪人は早死にさせるが、逆に善人には長寿を与える。こうして泰山府君は人々に長寿と幸せを与える神になった。その神と福禄寿が表裏一体だというのは、なかなか興味深い。
福禄寿も人々の寿命を延ばす神のようでいて、影では悪人の寿命を縮めようと努力しているのかもしれない。もしかすると福禄寿って地味な必殺仕事人?