「桜餅の葉っぱ」
桜餅はなぜ桜餅かというと、桜の葉っぱが巻いてあるからである。桜色をしているから桜餅というわけではない。実際、元祖「山本や」の桜餅は白かったりする。つまり桜餅のアイデンティティーは桜餅の外側にあるのだ。そんな桜餅の葉の知られざる真実について書いてみたい。
☆桜の葉の種類は?
桜餅は、桜で有名な隅田川の辺にある長命寺の寺男によって作り出されたと前のページで述べた。隅田川は今でもソメイヨシノの名所として知られるが、このソメイヨシノは江戸時代には存在しなかった桜である。江戸時代に「花見」といえばヤマザクラの花を見ることであった。当然、江戸時代の隅田川の辺にはヤマザクラが植えられていて、その葉が桜餅が利用されていた。
しかし、今はヤマザクラではなくオオシマザクラの葉を利用している。オオシマザクラの葉が大きいこと、「クマリン」という芳香物質がヤマザクラの葉よりも多く放出されるために香りがよいことなどがその理由である。
ちなみにソメイヨシノの葉が桜餅に使われたという例を私は知らない。
☆なぜ桜の葉を使ったのか?
桜餅の作られた経緯を見ると、桜の葉の利用ということになる。発想としては柏餅を参考にしたのだろう。しかし、江戸時代には「桜の樹木は水を綺麗にする」と考えられていた。(隅田川など、川の堤防に桜が盛んに植えられたのはこれが原因の一つとされる。) もしかすると笹餅のように「桜の葉で包む」ことによって菓子の腐敗が押さえられると思われていたのかもしれない。
☆桜の葉の故郷
現在、桜餅に使われている桜の葉のほとんどは、ある一つの町で作られている。伊豆半島の西側にある「松崎町」という所だ。貴方が手にした桜餅の塩漬けの葉っぱは間違いなく、松崎町で作られた物だと思って間違いない。
松崎町の農家では「桜畑」というものを持っていて、ここには人の背丈よりも低いオオシマザクラがズラリと植えられている。葉っぱが出てくる五月に葉のつみ取りが始まり、つみ取られた桜の葉は巨大な樽の中で塩漬けにされる。この樽、写真でしか見たことはないが、私の部屋より広いんじゃないだろうか。この樽の中で半年ほど漬けられた後、真空パック詰めにされて各地に送られていく。私はこの桜の葉の真空パックを見たことがあるが、最低でも百枚単位で詰められており、まず一般家庭で買うことはないだろう。和菓子店では葉を一枚ずつ剥がして手で桜餅本体に巻いて「桜餅」の完成となる。
☆桜の葉は食べるべきなのか?
「桜餅は葉っぱごと食べるのが通」だと一般には言われている。「塩漬け」にしている以上、食い物なのだろうし、「餡の甘さを葉っぱの塩気と共に楽しむ」のが本当の桜餅の味わいともされる。
ところで元祖「山本や」の桜餅は一つの桜餅に三枚以上の葉を巻いている。私も通を気取って桜餅と一緒に葉っぱを全部食べようとしたら、気持ち悪くなってしまった。やはり自分が旨いと思う方法で食べるのがベストであろう。