挑戦したいお年頃


 未来から来たという、いかにも胡散臭い連中が突然地上軍の基地に現れた。歴史改変をしようとしているふてぶてしい自称神とやらに喧嘩を売る連中なんだけど、この連中の中に一人、この天才の予想を遥かに超える馬鹿が居たのよね〜。この私に掛かれば馬鹿なんて周りにはゴマンと居るけど、あそこまでの馬鹿は見た事無いわ。
 多分事の始まりは、珍しくその馬鹿が活字相手に苦戦していた事だったでしょうね。あんな本、何処で手に入れたんだか。この時代で手に入れたらしいってロニが言ってたから、きっと入手先はイクティノスでしょうね。あいつ変な本集めるの好きだから。そういう事本人に言うと変な顔されるんだけど。それでも今の今まで何も言わなかったって事は、読むのにそれだけ時間が掛かったって事よね。私なら本の一冊くらいすぐに読み終えちゃうんだけど、所詮馬鹿は馬鹿よね。
 まあ、何はともあれ私達は今、馬鹿が馬鹿なりに考えた作戦を実行中よん。成功する確率は0.1%未満だろうけど。(byハロルド)




 その馬鹿代表のカイルは、自ら先頭に立って本を片手に、目の前の敵に向かって似合わない演説をする。
「バルバドス!!お前はこんな事をして何が目的なんだ!!お前だって英雄に憧れる時期ってあるだろ!?」
「・・・・・・・・・」
 漸く現れたと思ったら、突然得体の知れない演説。敵のバルバドスにしても反応に困るだろう。背後の神の目がバチバチ光り続け、照らされるバルバドスの顔は、困惑に満ちていた。
「男なら誰だって一度は英雄に憧れる!!改変された世界ではお前は英雄と呼ばれていた。本当はお前も英雄になりたかったんじゃないのか!?」
 何が言いたいのか良く分からないカイルの演説に、バルバドスは未だ反応が出来ずにいる。


 カイルの提案とは、「敵と交渉して解決できないか?」だった。
 カイルがずっと読んでいた本に書いてあったようだが、出所が胡散臭い本を集めるのが趣味なイクティノスでは中身も胡散臭い。あの男は優秀だが何処か変な思考回路を持っている、とあのハロルドに言われるくらいだから相当なのだろう。まともに見える人間ほどわけが分からないものだ。
 しかしそんな胡散臭い内容をカイルが鵜呑みにしてしまったのが大問題だった。
「・・・珍しくまともに本読んでると思ったら・・・」
「馴れない事をするから変なことになるんじゃないのかい?」
 一歩下がった場所からロニとナナリーがひそひそ話をしている。ただし格好だけで、声そのものはカイルに丸聞こえ。
「何だよー!試してみる価値はあるだろ!!」
 ムキになって反論するカイルに、ジューダスが冷静に言い放つ。
「・・・まあ、やってみれば分かるだろう。自分のやろうとしている事がいかに無意味かをな。」
「むっかー!じゃあ見てろよジューダス!!絶対成功させてみせる!!!」


 ・・・という話があったのだが。
 問題は、カイルがそれを言い出した場所が18年前のダイクロフトであり、言葉の通じる敵がその先一人しか居なかった事。
 その先に居る人間の敵、それは神の眼の前で待ち構えているバルバドスだった。
「さあ、大人しくしろバルバドス!!」
「訳分からねぇ事言ってるんじゃねえ!!!!」
 下手な演説をするカイルに痺れを切らせたバルバドスは炎の晶術を放つ。
「うわっ!!」
 間一髪で避けるカイルだが、ぐっと悔しそうに歯噛みする。
「くそっ、これじゃ駄目か。それじゃこれでどうだ!!」

 カイル交渉コマンド→英雄を語る

「英雄とは過去の功績に対して与えられる称号であり、なりたいと思ってなるものじゃないし、ましてやなろうとするものでもない!!つまりバルバドス、英雄になるならそれだけの事をしなければならないんだ!!!!」
「微妙にずれてないか?あいつの言ってる事。」
「僕の言った事の受け売りな上、ちゃんと覚えていないという事だな。所詮馬鹿は馬鹿か。」
 熱の篭った目で演説するカイルとは対照的に、冷めた目で見ているロニとジューダス。
 そしてバルバドスも、そんなアホな話を聞くわけがない。
「ふざけるな!!真面目に戦え!!!!」
 バルバドスが放った術をまたも避け、今度は腕組みして考える。それに近寄るのはリアラ。
「ねえカイル、話し合いなんて今更しても・・・」
 リアラは一応止めようとしているのだが、あまり拘束力は無い。それどころかカイルはリアラをじっと見つめ、彼女の手を取る。
「リアラ・・・次は君だ!!」
「え・・・?」
 期待に満ちた目で語るカイルだが、リアラは硬直している。何で自分までそんな事しなきゃならないのだと顔に書いてある。しかし悲しいかな、彼女は基本的にカイルに逆らう事はしない。愛は盲目。
「う、うん・・・頑張る!」
 何かを決意したリアラは前に進み出て、バルバドスと対峙する。

 リアラ交渉コマンド→愛を語る

「ねえバルバドス。あなたの愛は何?私はカイルを愛しているし、カイルも私を愛してくれている。けれどあなたにはそんな人は居ないの?愛する人が居るだけで、人は幸せになれるのよ。」
「あ、リアラ・・・」
 ナナリーが止めようとするが、時既に遅し。バルバドスはリアラののろけ(にしか聞こえない)にわなわなと肩を震わせる。
「黙れ小娘が!!!!貴様にそんな事言われたくないわ!!」
「そ、そんな!私の愛が理解できないなんて!!!」
「いや、それトドメ刺してるから。」
 ナナリーの忠告(?)も聞かず、リアラは後ろに控えるカイルに手を差し伸べ助けを乞う。
「カイル助けて!私の英雄!!一緒に愛を語りましょう!!!」
「分かったよリアラ!」

 カイル&リアラ交渉コマンド→のろける

「私は愛するあなたについていくわ、カイル!」
「リアラ・・・オレ、リアラに相応しい英雄になるよ!」
「まあ・・・カイルったら。カイルはもう十分素敵な英雄よ。」
「ありがとう・・・リアラ。」
 即座に作られる甘い空間。はっきり言って見てて鬱陶しい。二人だけの世界に入っているカイルとリアラ以外の全員が砂吐きつつ奥義を二人に食らわせたい気分になっていた。そろそろ止めないとジューダスの仮面が壊れるかもしれない。
 しかしそれはバルバドスも同じだった。それどころか自分に対して見せ付けていると判る分ダメージは更に大きい。
「・・・断罪のエクセキューション!!!!」
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
 バルバドスの攻撃で命からがら逃げ出す二人。この時だけロニ達はバルバドスにこっそり拍手を送った。
「はあっ、はあっ・・・・・・ううっ、アトワイト〜」
「あ、落ち込んでる。」
「精神的ダメージはかなり与えられているようね。」
「いや、冷静に分析するなよハロルド。」
「惨めだな。」
 カイル達に背を向け、神の眼に向かってしゃがみ影を背負って俯くバルバドス。事情を知っているだけに少し痛々しい。特にロニは何故か励ましたくなってきた。

 ロニ交渉コマンド→人生を語る

「ま、まあそう気を落とすなって。人生悪い事ばかりじゃないぜ。一回フラレたくらいで落ち込むなよ。」
 バルバドスの肩にぽん、と手を置き励ますロニだが、後ろから仲間たちのツッコミが入る。
「流石フラレマン。フラレ者同士分かり合えるって事でしょうね。」
「情けないね。傷の舐め合いなんてしても仕方ないと思うけどねぇ。」
「同類か。」
「いちいちうるせーぞお前ら!!!」
 酷い仲間の言いようにロニが絶叫する。そしてバルバドスはますます暗い影を落とす。
「ロニも失敗かぁー」
「そういう問題じゃねえ!!」
 復帰したカイルも呑気に呟く。しかし今のロニの行動は交渉になってしまっている。諦めよ。
「だあーっ!!交渉なんて馬鹿馬鹿しい事しねぇよ!!!」
 見苦しく地団太踏むロニ。結局ロニも勝手に落ち込んでいる。哀愁漂う背中が「好きにしろ」と言っている。
 それきり薄情にも誰もロニに気を向ける事無く、相変わらず交渉に拘るカイルの説得に入る。
「あのさカイル。あいつ相手に交渉なんて無駄だと思うよ。第一それが出来るなら、とっくにしてるんじゃないのかい?」
「でも精神的ダメージは受けてるみたいね。これなら実力で押さえつければ良いんじゃないの?」
 人でなしな事を呟きながら、ハロルドが前に出る。トドメを刺す気か。

 ハロルド交渉コマンド→勧誘する

「ねえバルバドス。惨めな人生なんてもうゴメンだと思わない?」
 ハロルドの声にバルバドスが振り返る。涙でぐしゃぐしゃになり鼻水をだらしなく流すその顔に、ハロルドは思わず一歩引いた。が、流石にマッドサイエンティストはその程度では逃げ出さない。構わずハロルドは手にした自作の薬を試験管に入れたままバルバドスに差し出す。中の液体は毒々しい緑色で、そんなもの絶対飲みたくない。
「・・・それは何だ。俺を毒殺する気か。」
「やーねぇ。違うわよ。これは、アンタの人生を変えるかもしれない薬よん。」
 そりゃある意味人生変わるだろう。むしろそれで人生終わりそうだ。
 しかしバルバドスさえ倒せればいいナナリーやジューダスは止めようともしない。
「ほれほれ〜この薬を飲めばあんたもモテモテ人生に早変わり!!!・・・かも。」
 最後の呟きは誰にも聞き取れないくらいの囁きで、バルバドスもそれは聞こえていない。暫く毒々しい色の薬を見つめていたが、やがて覚悟を決めてそれを飲み干した。
 しかし、あのハロルドの薬である。当然ながらまともでいられる筈が無い。
「ぐ・・・ぐおおおおおおっ!!!!」
 バタン
「・・・・・・死んだ?」
「死んだな。」
 ナナリーは青褪め、ジューダスは冷静ながらも顔を顰めている。
「ん?くたばった?う〜ん、失敗失敗。」
 てへっ、と本人は可愛らしくしているつもりらしいが、危険物質片手でやっても意味が無い。
「あーっ!!!殺しちゃ駄目じゃないかハロルド!!!!」
「まだ言っているのかカイル。バルバドス相手に話が通じるとでも思っているのか?」
 文句をつけてくるカイルに、ジューダスが冷ややかに問う。
「言葉が通じるならできるかもしれないじゃないか!!!!」
「ほう、ならばお前は、スタンを殺しフィリアやウッドロウを襲ったバルバドスを、交渉次第で見逃せるとでも言うのか?」
「そ、それは・・・」
 ジューダスの言う事は尤もで、カイルも反論できない。口ごもるカイルに、リアラが励ましの声を掛ける。
「大丈夫よカイル。この先まだ人間型の敵が出てくるかもしれないわ。だからそれまで、我慢して。」
「リアラ・・・」
 また二人の世界を作り出したバカップルを放っておいて、残ったジューダスたちは神の眼の暴走を止める。
 この先に待ち構える人間型の敵、というのはエルレインや、もしかしたらフォルトゥナも含まれているのだろうかとも思う。だとしたらまたこんな事をしなきゃならないんだろうかと頭を抱える仲間たちであった。
 

勢いだけで書いた阿呆な話第2弾。こんなのしか書けないのかお前と言われれば頷くしかない状態。
デスティニー2はカイルが馬鹿でリアラとバカップルなのでギャグがとにかく書きやすいです。
ちなみにこの交渉の元ネタはペルソナ。分かる人は分かると思います。実はジューダスの「自分に酔う」とかナナリーの「叱る」とかも予定ではあったはずなのですが、いつの間にか消滅してました。謎。


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