命懸けの交渉



 ペルソナ・ヴィシュヌを手に入れるためには全ての交渉可能な悪魔からスペルカードを貰わなければならない。
 しかし、中には気難しい(?)悪魔も居るわけで、とりわけくちさけは難解である。ペルソナ使いズは最後の一枚、くちさけのカードを今日も狙っている。これまで幾度となくくちさけに挑んだが、その全てが玉砕、危うく全滅しかけた事数知れず。本当に全滅した事も非常に多い。
 よって、祐貴達はまず、くちさけとの交渉が決裂したときのために(この辺から既にかなり弱気)ダーク系のペルソナで挑んだ。
 そして、いつものように御影遺跡。もはやすっかりお馴染みである。
「いたぞ、くちさけだ!!」
 各々が交渉準備にかかる。心なしか、神取と対峙した時よりも緊張感にあふれている。
「よし、まずは園村、やれ!!」
「ねえねえ、あなたってとっても凄いわね、憧れちゃうなぁ。」
「なにをしらじらしい事を、この小娘!!」
「え、え〜っと、そ、そんな事ないよ。だってとっても綺麗なんだもん!!」
「あら、そう?ちょっと嬉しいかも・・・」
「おっ、なんかいい調子だぜ、さっすが園村!!」
「次は稲葉、貴様だ、やれ!」
「お・・・おお、我が愛しい子よ、ジュテーム!!」
「ふざけんじゃないよ!!」
「げ。やば・・・」
「ええいっ、なにをしてるサル!!もういい、俺に任せろ!」
「南条君、がんばってー!!」
「ふ・・・馬鹿め!!」 
「こ、殺すわよ!!!」
「む、なぜだ・・・この俺がミスを犯すなど・・・」
「南条――――!!!お前前にもそれと同じことして怒らせたろうが!!!いい加減学習しろ!!!」
「ぐ・・・なら今度は貴様がやれ、速水!!大体貴様と城戸が真面目にやらないからいつも三人でやっているんだろうが!」
「とりあえず、殺るぜ・・・?」
 襲い掛かってきたくちさけを、玲司が一蹴する。レベルが高いからもはや楽勝なのだ。それでも過去くちさけに散々全滅させられたことから、未だその恐怖心が残っていて、わざわざマハムドの効かないペルソナで来ているのである。
 おおむね、祐貴と玲司の役割である・・・というより、ただ単に全然交渉しないからなのだが。この二人は始めから戦闘体勢に入っているのだ。おかげで経験値はほとんどこの二人が総取りである。
「とにかく、次こそ貴様らにもやってもらうぞ。いい加減まともに交渉しろ!!」
「・・・・・・。」



 30分後。再びくちさけ発見。
「よし、速水、城戸・・・っておい、あの馬鹿共はどうした!」
「え、速水なら随分前にトイレに行くって・・・」
「このサルめ!!貴様は脳まで退化してるのか!?こんな所にトイレなど有るわけ無かろうが!!!」
「あ〜〜〜〜〜っ、そういやそうだったっけ・・・ちくしょう〜速水のヤロウ!!」
「まあ、それならあとで出てくるだろうが・・・城戸はどうしたんだ?」
「それがねーさっきからずーっと見ないんだよ。もしかしたらピットに落ちちゃったんじゃないかと思ってたんだけど。」
「貴様もサルと同じか!?御影遺跡にピットなぞ無い!!」
「あ、南条てめぇ!園村の悪口言うな!!!!」
「やかましい!!サルは黙ってろ!!!!」
 そして、すっかり忘れられてるくちさけ。



 その頃、祐貴と玲司は並んでさらに奥まで足を運んでいた。
「こんな所に居るって事は、どうやらお前も同じ事考えてるらしいな。」
「・・・あんなちんたらしたやり方じゃ、到底カードなんか手に入れらんねぇだろ・・・」
「ま、そういう事。相手は悪魔なんだからさ、もっと他にやり方はあるだろ。」



 一方、三人は―――
「あ、くちさけだよ!!」
「よーっし、この俺のダンスを見て惚れるなよ!」
「やめいっ!!!貴様のダンスなど見るに耐えん!」
「・・・じゃあ、俺の熱い視線で・・・」
「ふざけるな!!」
「〜〜〜っ、あれもダメ、これもダメ、じゃあ俺は一体どうすりゃあいいんだよ!!?」
「大人しく引っ込んでろ!」
「稲葉君ってあんまり交渉上手じゃないね。」
 ガ―――――――――――ン・・・
「そ、園村まで・・・」
「(無視)ねえ、くちさけさん?ちょっとだけ私達に協力してくれないかな?あ、もちろん御礼はするよ。」
「ほ、本当?」
「お、おい園村・・・いったいどういうつもりだ?くちさけが喜ぶ物など・・・」
「ねえ、なにが欲しいか言ってみてよ。私達なら宝石でもお金でも何でも用意してあげられるよ?」
 くちさけは気を良くしたらしい。
「じゃあ、いい男が欲しいわ。あなた達の中の・・・」
「誰が気に入ったかなぁ?眼鏡の人?それとも帽子の人?それと、今は居ないけどワイルドな半裸の人もいるよ。」
 ここで祐貴が出ない辺り・・・
「ふ、ふざけるな園村!!俺は絶対に・・・」
「(小声で)南条君、大丈夫だよ。今の私達ならくちさけなんて楽勝なんだから。とりあえずカードだけ貰っといてあとであいつら殺して帰ってくれば良いんじゃない。」
「・・・それって詐欺じゃないか?」
「いいじゃないの、どーせ悪魔に法なんか適用しないんだから。」
 俺の眼前に悪魔がいる・・・と南条は直感した。
「じゃあ、さっきいたピアスの子が・・・」
「ペルソナ――!!」
 どがががががががががが・・・・・・・
「・・・ふう、やっぱり悪魔相手に取引しようって方が間違ってたのね。さあ南条君、さっさと次のくちさけ探しましょ!」
「いや、というより、とりあえずカードだけ貰っておいてあとで逃げればって言ったのは・・・」
 途中まで言って南条ははっと口をつぐんだ。麻希の独り言を聞いたからである。
「うふふふふ・・・悪魔の分際で祐貴君に手ぇ出そうってのが間違ってるのよ。うふ、うふふふふふ・・・・・・」
 南条も稲葉も、その後暫く麻希に話し掛けられなかった。



 そして、別行動の祐貴と玲司は・・・
「うん、これくらいでいいだろ。さっさと戻らないと、また南条に怒鳴られるぜ。」
「・・・まあ、そうだな・・・」
 そう言って二人は引き返した。なぜか二人の背後からはぞろぞろと大きな影がついてきていた。



「・・・ええいっ、速水と城戸は一体どこにいる!?特に速水!!ヴィシュヌはあいつのペルソナだというのに、ほとんど他人事のようにしてるではないか!!!」
「・・・さすがに、ちょっと心配だね。どこに行ったのかなあ、祐貴君。・・・あ、それとついでに城戸君も。」
「・・・俺はついでか?まあいいけどよ・・・」
「あ、城戸!それに速水も!!なんだ、てめえら一緒だったのか。ったく、こんな所で勝手に別行動するなよな。」
「ああ、ちょっと用事があってな。」
「・・・それはともかく、速水。お前達の後ろにいるのは、なんなのだ?」
 後ろからついてきていたのは、クロウ・クルーワッハ、ソロネ、グリーミーズest…どれも高レベルの悪魔ばかりだ。
「ん?ああ、ちょっとこの人達(?)に協力してもらおうと思って。城戸と一緒に下の階まで行ったんだよ。」
「協力・・・?まさか・・・」
「・・・こいつらと一緒に、くちさけと交渉する。」
「いや、つーか・・・なんでこんな連中・・・グリーミーズなんか何言ってるかわかんねえじゃねーか。」
「001199017888882288888!!!!!!!」
「おい、稲葉!グリーミーズに謝れ!!馬鹿にされたって、怒ってるぞ!?」
「あ、そうか?悪い・・・って、なんでてめぇはこいつの言ってる事が判るんだよ――――――――――!!!??!」
「なんだ、わかんないのか?これだからサルは・・・南条は?」
「済まん・・・俺にもそいつの言ってる事が判らん・・・あのサルと同レベル扱いされるのは気に入らんが。」
「全く、どうしようもねぇ奴らだな・・・ちゃんと聞いてれば、こいつの言ってる事だって判るようになるんだぜ?」
「城戸・・・貴様は一体何者だ・・・?」
「あの〜それで、私達は一体どうすれば・・・?」
「ああ、ソロネ。今からくちさけ探してくるから説得してくれないかな。アンタなら同じ大人の女(?)同士、うまくいくんじゃないかな。」
「判りました。やってみます。」
「・・・あ、悪魔とものすごくフレンドリー!?ど、どーなってんの?」
「判らん。が、間違い無くこれは現実だ。・・・口惜しいが、認めるしかないだろう。」
「・・・おい、くちさけをおびき寄せてきたぜ。」
「???どうやってだ?まさか、残り少ない魔石を使ったんじゃねぇだろな!?」
「安心しろ。俺はただこう言っただけだ。『こっちに踊って喋るサルが居る』ってな。」
「・・・をい、それってまさか、俺のことじゃあ・・・」
「意外と鋭いな、稲葉。俺お前の事誤解してたよ。園村の事しか頭に無い、下手な踊りだけが能の色ボケ役立たずなんてさ。」
「んだと速水てめぇ――――!!泣かしちゃるコラァー!!!」
「ペルソナ。」
 ・・・ドルミナ―。
 あえなくマークは眠りの世界へ。
「・・・ふう。よし、これでうるさいのは押さえた。さあ皆、宜しく!!」
「0190211102210637」
「え、そうなのか?頼むよ。」
「????ね、ねえ祐貴君、今なんて言ったの?」
「ん?ああ、今?自分ではちょっと難しいけど、この階の知り合いに交渉上手なのが居るんだってさ。今から連れて来るってさ。・・・もしかして園村もアイツの言ってる事わかんないのか?」
「え・・・いやいや、そんなことないよ、ホントだよ!」
「園村・・・『知ったかぶり』って言葉を知ってるか?」
 ドスッ。
 眉間に至近距離から矢を射られ、南条あっさりダウン。
「・・・園村?」
「うふ、うふふふふふふふふふ・・・・・・人の上げ足取りなんてするから・・・うふふふふふ。」
 暴走しかけている麻希は無視して、くちさけの様子を見た。一番期待していたソロネは苦戦しているようだ。他にもいろいろと連れて来たのだが、あまり効果は無いらしい。くちさけもそろそろキレそうだ。
「44380991743110!!!」
「あ、連れて来たのか?って、お前一人じゃないか。知り合いってのは・・・は、二日酔いでぐでんぐでん!?ん?でもその代わりにくちさけからカードを貰う方法を聞いてきた?でかした!それで、その方法って・・・・・・・は!?」
「・・・どうした、速水。早くしねぇと、いい加減やばいぜ?」
「・・・・・・ふっふっふっふっふっ・・・・城戸、お前の得意技だ。俺も一緒にやる。協力しろ。」
「あ?だから一体どうやって・・・ん?ほぉ・・・なるほどな・・・」
「ん〜?いったいどうしたの〜?ねえ、私にも教えてよ〜」
「横で見てなよ。すぐ判るから。」



「永かったが、ついにこの時がきた!!さあくちさけ、大人しくカードをよこせ!!」
「ああ〜???なにいってんだい、この小僧が・・・・・っ!!?」
「小僧?」
 祐貴の雰囲気が変わった。挑発(?)モード。
「てめぇ、死ぬぜ?」
 玲司はいつもと大して変わらない。元々脅しに向いているから。
 やたら怖くも恐ろしい二人に付け加え、今回は高レベルの悪魔達までそろっている。はっきりいって凶悪である。グリ−ミーズの伝えた情報は、『くちさけでも、高レベルの悪魔には少しは恐怖心をもつ。人間相手だといくらレベルが高くてもあなどる傾向があるから、強い悪魔がいたほうが成功しやすい。』である。
 具体的には、徹底した脅しである。



「ホントにカード置いてっちゃった・・・いいの?こんなんで。」
 つい先ほど詐欺まがいの手口でカードを手に入れようとした麻希の言葉とも思えない。
「いいんだろ、これで。終わり良ければ全て良しって言うだろ?」
「・・・そうだね。それにしても、よく悪魔なんて連れてこれたね。どうやったの?」
「いや、どうってモンでもないんだけど…現実の学校にいたときにたまきちゃんにコツを教えてもらったんだけど・・・」
「ふーん。でもやっぱり、祐貴君カッコよかったー!」
 マークもそうだが、恋は盲目、というが・・・
 用事が終わって、悪魔達は元の階に戻って行った。そして床にぶっ倒れている南条とマークを引きずりながら、一行はベルベットルームへ向かった。



 イゴールが目にしたくちさけのカードは、この世の物とも言えぬ凄まじい形相をしていたそうだ。 

こんな話書いておいて、私はくちさけのスペルカード持ってません。
全然成功しないんです。
しかもセベク編は大抵エリーがいます。玲司じゃないんです。
でもキャラとしては結構好きなのでここで書いてみました。


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