悪魔は集う・雪山後編


 宴会場は更なる盛り上がりを見せていた。新たに入った祐貴は既にビール5本開けていて、それでもほとんど変化は無い。元々酔わない体質らしい。エリーは少しづつ飲んでほんのり赤くなっている。
「Yuki!もっと飲みましょう!!全然変わってないじゃないの。」
「桐島…もしかして、酔ってる?」
 祐貴は普段の悪魔のような勢いは何処へ行ったのやら、やけに周りに振りまわされている。流石に女には強く出られないのだろう。
「あ―――――っ、エリーってば、抜け駆けなんてずるいわよ!!祐貴君!私と一緒に飲もうよ!」
「…園村、お前確か酒には弱かったはずじゃあ…?」
「そーよぉ!弱いわよぉ!!だからもう、かーんぜんに酔っちゃったv」
「………」
 酔っ払いと真面目に会話するのは、狂人の悪魔と会話するぐらい辛いものがある。最初の頃、クイックシルバーと真面目に会話しようとして散々な目にあったなぁ…と、ふと昔を思い出してしまった。普段はそんな事は無いのに、やはり昔の仲間といるからか、と一人感慨に更ける。
 祐貴は仲間からの信頼は厚かった。常に的確な判断を下せ、結構仲間思いな所がある。南条ですら祐貴には一目置いている。気付かないうちに、リーダーとして皆を引っ張っていた。ブラウンやアヤセも、口では文句ばかり言っているが、結局祐貴を信頼している。しかしその事を祐貴本人は知らない。全く自覚が無いのだ。
 妙な所で抜けている祐貴に、麻希とエリーは思いを寄せていた。勿論、その事も本人は知らない。だから、麻希とエリーが自分に良く接触して来たり、二人が事あるごとに何気に張り合っている理由も知らない。祐貴以外の人間は全員知っているのに。
「そういえばYukiって、あまり乱れないのね。よっぽど強いのかしら。」
「そうだな…でも酔わないって、つまんないんだよなぁ。皆と一緒にあっちの世界に行けないし、そしてなにより…」
 祐貴は顔を曇らせた。その様子にエリーが気付くと、
「お、お前等!!いい加減にしろ!!」
 部屋に南条が押しかけてきた。部屋の惨状を見てついに切れたらしい。
「コラ、上杉!綾瀬!!こ、こいつら…そっちもか…」
 同じく泥酔して倒れている舞耶達を見たらしい。さっきまで騒いでいたうららも、ついに意識を失ったらしい。そしてさらに栄吉とリサが舞耶達と同じように寝ているのを見て脱力したようで、へなへなとその場に座り込んだ。
「未成年連中もか…全く、なんという事だ。…ん?速水に桐島。お前等は素面のようだな。丁度いい、こいつ等を適当な部屋に放り込んでくれないか?俺一人ではどうしようもない。」
「…ほらな、こうなるんだよ。」
 祐貴はあらかじめ分かっていたようだ。それも何度かあったのだろう。深深と溜息をついて、寝ている人々を2・3人抱えて行ってしまった。
「Oh…そういう事ですのね。」
 納得してはいても、どうしても釈然としないといった呟きを吐いて、エリーも祐貴に倣った。
「そう言えば、黛は?アイツ何処行ったんだ?」
「ああ、アイツにはちょっと招かれざる客人の相手をしてもらってる。」
「…ふーん?」
 さしたる興味も無いらしく、祐貴はそれ以上深く突っ込まなかった。



   「…?Tatsuya…どうしましたの?」
 まだ白くなっている達哉を発見し、エリーは怪訝な顔をした。
「…何でもない。馬鹿が馬鹿と言われてショックを受けているだけ。」
 黙々とご馳走の魚を食べていた杏奈が静かに言った。横には同じく、煮豆を食べている淳の姿もあった。エリーは淳の方にも視線を向けたが淳は何も言わない。ただ分からないといったジェスチャーをしてみせた。それでもある程度の話を舞耶から聞いているエリーは直感的に状 況を把握してしまった。まるで淳を自分の息子か弟かのように溺愛している達哉の話は舞耶から聞いていた。
「…まぁ、いいですわ。それよりも、Keiがそろそろお開きにして欲しいと仰っているので戻りませんこと?」
「…ああ、いいけど…でも何処の部屋なのかわかんないよ?」
「Oh!そう言えばまだ決めてませんでしたね。仕方ないですわ、何処でもいいですから適当に入ってしまいなさいな。」
「でも、そんなことして良いんですか?」
「No problem!心配ないですわ。今日はここはKeiの貸し切りですの。」
 それを聞くと杏奈と淳は納得して、席を立とうとした。
「あ、達哉は…」
「Junが連れてさしあげれば宜しいですわ。Tatsuyaも喜ぶのでは?」
「……そうなんですか?」
 淳は少し困った顔をして、でもしっかり達哉を引きずっていった。体格差があるので如何しても引きずらなくてはならない。面倒そうにしているものの、達哉の役に立てる事自体が嬉しいのか少し笑っていた。杏奈はそれを見てやれやれと首を振るとまた何処かに行ってしまった。
 既に皆引き払って(というか南条と祐貴が皆を持って行ってしまった。)しまった宴会場で、エリーは微笑ましそうに笑った。
「青春ですわね〜v」
 また微妙に違う事を呟きながら、エリーはかつて自分が高校生だった頃を思い出した。あのころからずっと、自分と麻希は対立していた。そして今でも。
「思えば、あの頃から私はあまり変わっていない気がしますわ。それは喜ぶべきなのか、嘆くべきなのか・・・」



「一泊二日って、思ったより短いのね〜」
 昨日の宴会のせいで二日酔いになってしまった舞耶が、痛む頭を抱え、名残惜しそうに雪山を眺めた。舞耶だけでなく、昨日酒をだいぶ飲んだ人たちは皆二日酔いに悩まされていた。
 無事なのは、酒に酔わない祐貴と、そもそもあまり飲まなかったエリー、全く飲まなかった達哉に淳、杏奈、そして宴会の席から外れていた南条とゆきのだった。
「好傷呀〜頭痛〜い…」
 だったら飲むなよ、と突っ込みたかったが自分だってあの事が無かったら飲んでいたと思うと、達哉はリサを責められない。第一、達哉はまだ昨日のショックから抜け出せてなかった。自分は意外と繊細だったのだな、と我ながら意外に思う。
「ところで、ゆきのはなんで昨日宴会に来なかったの?」
 ほとんど誰もが忘れていた疑問を杏奈が口に出し、そこで漸く南条とゆきのが居なかった事を思い出した。
「あ〜えっと…まぁ、周防達が冬休み明けたら分かるよ。」
「?」
 なんの事か誰も分からない。真実を知るのは南条とゆきののみ。
 分からないが答えを出してくれそうもないので、達哉は早々に諦めて淳に近づく。
「なぁ淳、今度の正月は一緒に過ごさないか?」
 何だか最近、淳には変なのばかり纏わりついている気がする。祐貴のみならず杏奈まで。これでは淳を一人放っておくわけにもいかない。
「正月…いいよ。僕の家、誰もいないし。でも迷惑じゃない?」
 そんな事は断じてない。
「迷惑なわけあるか。親友だろ、俺達。」
「あんたみたいなのに親友呼ばわりされたら、淳が可哀想だ。」
 杏奈がポツリと一言。いちいち余計な事ばかりを・・・
「そーいやー、お前、昨夜淳君に同情の眼差しで見られてたけど、一体何話してたんだ?人間不信だって?」
 祐貴が相変わらずの嫌味な口調で達哉をからかう。いつの間にそんな事聞いてたのか。まあコイツはある程度の自然法則を奇麗に無視してそうだし、たいしたことは無いだろう。が、達哉にはもう一つ気掛かりな事があった。というか、余裕一杯で言ってみたかった事。
「そういやアンタ、昨日一杯は俺に言う事聞かせるって言ってなかったか?」
 あくまで昨日、なので有功期限は切れている。だから達哉から切り出したのだ。あの賭けもう時効、と高をくくっていたが、次の瞬間、それはあっけなく崩された。
「ああ、あれなら昨日の内に言っといたんだけどな。お前白くなって固まってたから聞いて無かったんだ。」
「は…?」
 もちろん達哉には覚えがない。あんな状態で憶えているはずもないが。
「あの時俺、お前にこう言ったんだ。「これから一ヶ月の間、淳君に触れてはならない。」ってね。それだけ。」
 達哉は言葉を失った。淳に触れられない。しかも一ヶ月。
「冗談じゃない!!!そんなの卑怯だ!大体それって期限関係ないじゃんか!!詐欺だ!反則だ!撤回しろ!!!!」
「なんかガキみたいだな。でも撤回はしないよ。そんなコトしたらつまんないじゃないか。」
「…………!!!!」
 祐貴はなんでも面白いとか楽しそうとか、そんなんで生きてるのだ。人生なめてるとしか思えないが、そんな人間にも敵わない自分が悔しくなった達哉だった。
「まあ、たまには自粛しろって事だろ。あんまり過保護が過ぎると嫌われるよ。」
 杏奈の呟きを聞きながら、達哉はままならぬ人生の厳しさを肌で感じてしまった。が、納得いかない事があって挫けてなんかいられない。
「………ちょっと待て。吉栄、お前妙に事情に詳しくないか?」
「ずっとすぐ傍にいたじゃないか。それに、その命令提案したの私だしね。」
「☆!?%$#!♪★」
「情人、何言ってるの?」
 人間語を失った言葉に思わずリサが混乱する。
 達哉は一つ二つ深呼吸して言い直す。
「………マジか?」
「マジ。杏奈ちゃんって、淳君と結構仲が良いからね。淳君がタコバイクの所為で人としておかしな方向に行くかもしれないのを放って置けないんだろ。良い子だね〜ホント。」
 タコバイク。またしても妙な名を付けられてしまったが、それについてはもう修正する気力もない。
「…別に、そんなこと。ただ、淳のお陰でゆきのに会えて、立ち直れたからさ…」
 杏奈の顔は珍しく赤くなっていた。礼を言う事に慣れてなくて照れているのだろうかそれは分からないが、その姿は達哉には全く別物に映ってしまった。何故か、淳を狙う余計な虫の一つとして。
「そーか、吉栄…お前も淳狙いの敵か!!そうと分かれば話は早い、勝負だ!!!!!」
 颯爽とアポロを出す達哉を、杏奈は冷たい目で見て、ゆっくりとペルソナを出し…
「うるさい…」
 杏奈の放ったアクアダインに達哉は大ダメージを被り、さらに祐貴のブフダインで瀕死になってしまった。
「こうしておかないと、うるさくてしょうがないしね。」
 祐貴の何気ない一言に、一同は思いっきり頷いた。 


   
 達哉達が去った雪山で、一人ほくそ笑む人物が居た。
「ふっふっふっふっふ…特ダネゲットですぅ〜♪まさかあの周防先輩が…話題性バッチリですね。冬休み明けが、楽しみですぅ〜」
 

後半やけに短かったなぁとちょっと反省してみる。
・・・・・・・・・反省終わり(おい)
最後の人、誰かはすぐ分かると思いますが、一応秘密ということで(笑)
ちなみに私、淳杏好きです。杏淳でもOK。
女性が強いカップリング好きみたいです。


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